夏休みの初日は異世界で
まったり書いていきます
「はじめまして」
「...?はじめまして...あれ?ここはどこですか?」
なんだろうか。夢?目を開けたまま意識を失っててそのまま意識を取り戻したらなんか知らない場所にいて目の前に人がいた。みたいなこの感じ。
優しそうな髪の長い女の人。綺麗だな。背景は白で...なぜか見渡すこともできずにその女の人に焦点が合ってずらせない。
って...あれ?今日から高校が夏休みに入って...起きて...コンビニに昼ごはん買いに行って...それからおれ...あれ?
「そうですか。覚えていないのですね」
「え?」
「あなたはコンビニに突っ込んだ車に跳ねられて死亡しました」
「えっと...車に?...おれが?...コンビニに車が?」
そういえば...レジで会計してて...弁当の温め待ちでスマホいじってて...それから何気に入口に目をやって...!!!
「赤い車!...そうだ!赤い車が突っ込んできて...それで...それで...」
「.........おれは死んだのか」
「思い出されましたか?」
「轢かれたとかそゆのは...覚えてないんですけど...ただ確かに赤い車が突っ込んできたのは記憶にあります」
「そうですか」
「あの...そうしたらここは天国とかで...!?...あ、あなたはその...神様...ですか?」
「はい。私は神ですがここは天国ではありません。そしてあなたに選択肢を与える為に魂をここへ喚びました」
「選択肢ですか?」
「はい。あなたの体から魂が離魂した際に、こことは異なる世界からの召喚が重なったのです。ですがあなたの魂はまだこちらの世界の物です。本来であれば召喚を私が中断し、あなたの魂はこの地球で輪廻転生するはずでした」
「は、はぁ」
「ですが中断しようとした時に、こことは異なる世界の神もあなたの召喚を願ってきました。このようなケースは前例がありません。私が決めてもよかったのですが、人と話したことは未だなかったなと、ふと思いました。そこであなたに選択肢としてこちらかあちら、選んでもらうついでに少しだけ、話をしようと思ったのです」
「とりあえず...選択肢は置いておいて話というのは?」
「あなたは地球が好きですか?あなたの生きた世界はどうでしたか?」
「ち、地球が好きですかと言われてもその...他の星を知りませんし、おれが生きた世界と言われても当たり前に過ごすだけの日々だったので...そうですね...」
「忌憚のない思いを口にして大丈夫ですよ」
「...地球は...よくわかりませんが、おれの人生って意味では...その...理不尽でした」
「何を以て理不尽と思いましたか?」
「小学校の3年生ですかね。母子家庭で親戚も誰も頼る人がいない中で貧乏で...それでもいつも笑って一緒にいてくれたかーちゃんが事故に巻き込まれて他界して...施設に入ったのが記憶にある最初の理不尽です」
「ではあなたは地球での生に幸せや喜びは感じませんでしたか?」
「あまり...感じたことはありません」
「そうですか。それは残念です」
「でも神様には感謝をしています」
「なぜですか?」
「かーちゃんの子供として生まれてきたから。なんていうかその...かーちゃんは物凄い難産だったらしくて、おれが無事産まれて神様ありがとうって。とーちゃんはおれが産まれる前に死んじゃったけど、おれを授けてくれたからって。だからおれも神様にありがとうって」
「かーちゃんの子供にしてくれてありがとうって」
「...なんでしょうね。これが感情なのでしょうか。魂と触れ合って話を聞いたせいか、あなたの想いが私の中に入ってきました。...話は以上で結構です」
「は、はい...」
「では先の話に戻ります。あなたはどちらの世界を望みますか?」
「ちなみにどのような世界ですか?そのこことは違うという世界は」
「話していませんでしたね。そちらの世界は地球よりも若く...あなたの知識を借りて言えば時代は中世のヨーロッパ程度の文明で、いわゆる魔法があり、亜人と呼ばれる生物や地球では空想上のドラゴンや精霊などが棲む世界です」
「なるほど...そちらの世界に行くとしたら誰かの子供として、ですか?」
「いえ。先ほど言ったように召喚されているので誰かの子供としては行けません」
「よかった...では、そちらの世界を希望します」
「よいのですか?」
「はい...地球でまた誰かの子供として産まれて...おれはこれ以上...母親を失いたくはないです」
「わかりました。ではあちらの召喚にあなたの魂を応じるようにします。よいですね?」
「はい」
「これは異なる世界に旅立つあなたへ。この地球の母としての贈り物です。あなたには〖与える力〗を授けます。あなたが認識した対象にあなたが思い描く事象を付与できるようになっています。これしかできなくてごめんなさい。では実りある生を願って。...さらようなら」
さよならを告げる神様の顔はなんだか悲しそうだった。それでも地球は選べなかったんだ。神様ごめん。
だんだん意識が遠のいていく。
地球の母としての贈り物...羊水の中にいるような...記憶はないはずなのに。かーちゃんといた日々が走馬灯みたいに景色が流れていく。
あー...あったかいなー。
最後に...かーちゃんの作った唐揚げが食べたかったなぁ。
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