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勇者様の荷物持ち  作者: 台輪山斗
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第6話 嵐の前

 教皇に謁見した次の日の食堂。

「そういえば、なんで教皇様は、本なんか渡していたんだ?」

俺はミーナと話している。

ミーナの他に、あのチラ見していた少女――名前をシェイミというらしい――もいるが、勇者はとことん俺に会いたくないらしい、ここには来ていなかった。

「それは昔、まだガイウス教が小さい宗派だった頃、世界にガイウス様の教えを広めるために教本を作り、教皇が各地へ赴く信者達に渡していたという逸話がありまして、その逸話に則り、代々教皇が信頼の証として本を送るようになったのです」

「つまり、本をあげるから仲良くして、裏切るなよ、もしできれば布教もしてこいってことか」

「もう、そんな悪い言い方はしないでください、あくまで信頼の証です」

「悪い、悪い、言い過ぎだった」

「もう、あまり変な事は言わないでください」

「それよりも明日のパレードなんだよなぁ」

「とても、盛大なものになると思いますよ!」

「そういうことじゃなくて、田舎者の俺には、気が重いんだよな」

「大丈夫ですよ! ほら、パレードですよ! 楽しそうじゃないですか!」

 どうやらミーナはだいぶ乗り気らしい。

 仲間がいないかとちらりと横を見るが、どうやら、先程から一切しゃべらない彼女、シェイミは相変わらず、まるでリスのようにハグハグと食べ物にありついている。

 彼女は、彼女で特に気にしてはいないらしい。

「ああ、皆様こちらにいらっしゃいましたか、そろそろお着替えを致しますので、こちらへお願いします。」

 とメイドが俺たちを探しに来た。

 どうやら、時間らしいので俺が周りを見渡すとまだシェイミが食べていたので、「まだ、彼女が食べていますので、もう少し待てませんか?」というと、「あら、申し訳ございません、まだお時間はございますから、ごゆっくりとも召し上がりください」と横に控えた。

「ありがとう」と、か細い声が聞こえたので、振り向くと、どうやらシェイミが声の主らしい、そういえば、俺が彼女の声を聞いたのはこれが初めてだ。どうやら、ミーナもそうだったらしく、彼女は驚いていた。

 なんだか、相変わらず口数が少なく、良く分からない奴だが、勇者と違って仲良く出来そうな気がしたのだった。




―――




 それから、パレードが始まった。それは、それは、壮大に行われた。人生で初めてあれだけの人に囲まれ、あんな馬車を改造した台車?みたいな乗物に乗って、某エレクトリカルパレードみたいなことをやらされ続けたのだ。おまけに服も重い。正直、緊張やら、疲労やら、恥ずかしいやらで、もう何がなんだか分からなくなり、ただひたすら、手と笑顔を振りまきながら、胃からせり上がるものと戦い続けなければならなかった。

 今はとりあえずそれが終わり、お城、つまりリオガル王国の王城の控え室として案内された部屋に来ていた、このあと国王様からの有難いお言葉と、リオガル王国に伝わる宝剣の授与があるらしいのだが俺は今、それどころではなかった。どうやら先のパレードでだいぶ俺の精神がやられたようで、パレードの最中幻覚が見えていたらしい。頭に比べ妙に図体がでかい人や、肌の色が緑色の人が見えた気がしたのだが、衛兵などに聞いてみてもそんな者は見なかったと笑われてしまったのだ。そんなこともあり、俺は部屋に備え付けられた椅子にもたれて、ぐったりしていた。

「大丈夫ですか?」

「――大丈夫?」

「――もう少し、休ませてくれ」

「ええ、まだ国王様への謁見までは時間がありますから、ごゆっくりしてください」

 どうやら、ミーナの他にシェイミまで、俺に気を使ってくれているらしい。

「――悪いな、こういう経験は初めてなものだから」

「随分仲良くなったのね、貴方達」

 どうやら勇者様の機嫌は悪いようだ。

「はい! テルリウス様は面白いお方ですから!是非、勇者様も一緒にお話――」

 いや、ミーナそんな楽しそうに言う事じゃないと思うぞ。

「ああ、そう!じゃあ、私は先に行っているから!」

 そう言って、勇者は部屋を出て行ってしまった。

 あちゃぁ、間違いなく怒っちゃったよな、あれ。

「?私、何か変な事言いましたか?みんなが仲良くなればいいと思って言ったのですが・・・」

「ああ、少し間違っていたかもしれないな・・・」

「そんなっ!では、謝りに行かなければ!」

「いや、今は行かない方がいいと思うぞ」

「ですが、――離してくださいシェイミ様!」

 シェイミが、ミーナの服の裾をつまんでいた。

「――落ち着いて」

「シェイミの言う通りだ、落ち着けって、大丈夫さ、あいつだってすぐ戻ってくる」

「そうでしょうか?」

「そうさ」

 シェイミも隣でコクコク頷いていた。

 まさか、この時はあんなことが起きるなんて、この時は思ってもみなかったんだ。


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