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勇者様の荷物持ち  作者: 台輪山斗
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第4話 旅立ち

 この村ではまず見ない、真っ白なローブを羽織った1団が、これまた真っ白な馬を引いてやってきたのは、今朝のことだった。

 俺は、突然村長に呼ばれて村長の家に両親と共にやってきていた。

「わざわざ来てもらってすまないねぇ」

村長の家の中には、村長の他に、豪華な装飾がされた真っ白なローブを羽織った老人が、お茶をすすっていた。

「いえ、そちらの方は?」

「ああ、この方は、ガイリウス教の総本山リントセラーナ教会からいらした、ノーべリア枢機卿じゃ」

「はい、ただいまご紹介に預かりました、ノーべリア・セントラルと申します。よろしくお願い致します。」

「はぁ、それでその枢機卿様がどうしてこんな辺境に?」

「それは、私の方から話をさせて頂きましょう」

ノーべリアと名乗った老人が、話を始めた。

「本日こちらに伺ったのは、皆様も噂や、おとぎ話ぐらいならば聞いたことがあるかと思いますが、なんと、かの魔王が復活するであろうという啓示が我らリントセラーナの大司教様にもたらされたのです!」

「はい?」

 魔王? 啓示? なんだそりゃ?

「ああ、申し訳ありません、少々話が飛びすぎましたね、――えー、まず、この度我らガイリウス教総本山、リントセラーナ教会の大司教様が偉大なる武神ガイリウス様から、1000年ぶりの啓示がもたらされたのです。大司教様曰く、伝承に伝えられる魔王が現れ、魔獣を率いて世界に災厄をもたらすであろう、だが恐るな、魔王の復活するとき、勇者もまた現れるだろう。勇者は四人、東西南北それぞれから現れ、世界に安寧をもたらすであろう。そして此度、西側の勇者として我がリントセラーナ教会のバグナ・レイファン司教の一人娘、リリーナ・レイファンが選ばれました。」

 ん? 話が読めないぞ?

「――えーっと、それで、何故俺が呼ばれたのでしょうか?」

「そうですね、この啓示には勇者の名前だけではなく、共に旅をする仲間も伝えられたのです。」

 ――まさか。

「もうお分かりかと思われますが、此度、テオリル村、ベルエット・バートンが息子テルリウス・バートン、貴方が選ばれたのです。」

 な、なんだってぇー!?

「ですから、あなたには是非リントセラーナ教会まで来て頂けますか?」

はい!行きます!

――とは思わなかった。というのもこの12年間狩りをしてきて、魔獣と戦うということがどれほど危険で命知らずなことかよく知っているから、いくら勇者の仲間になれたからといって、素直にやった! とはならない、死んでしまったらそこで終わりなのだ。

「とはいっても俺は唯の狩人でして、私如きを連れゆくよりも騎士様方を連れて行ったほうが役に立つのでは?」

「確かに貴方は、なかなか優秀な狩人だと、お聞きしました。どうやら魔法も嗜むだとか」

 そう言って村長の方をちらりと見た。どうやら抜け目のない性格らしい。

「そう自慢できるほどのものではありません、所詮田舎のガキが少々師に恵まれただけです。噂に聞く魔導学校の生徒様に比べるまでもないかと」

「ふむ、そう師匠を悪く言うのはやめたまえ、彼女はとても優秀だよ、あの若さで決して魔導学校の教師に引けを取らない知識、知恵の持ち主だ、もし彼女が望むなら、是非教師として呼びたいほどだ」

 マジかよ、師匠まで確認済みか、はぁ、どうやらなんとしても連れて行きたいらしい。

「いえ、悪く行ったつもりはないのです。なにせ、このような辺境の小さな村でして、魔法に興味があるようなものは自分くらいしかおらず、自分や師匠がどれほどのものか比較ができなかったのです」

「では、尚更驚くであろう、君の師匠はかなり進んだことを君に教えていたようだからね」

「ですが――」

「安心したまえ、君は決して勇者や他の仲間たちと引けは取らんよ、私が保証しよう」

「――分かりました。行きます」

 結局、折れたのは自分だった。

「ふむ、どうやら決まったようじゃの」

「ええ、では私は、これから彼を受け入れるための準備に取り掛かりますので、失礼します」

 そう言って枢機卿殿は部屋を出て行った。

 すると、肩に手が置かれたので、振り返ると、そこにはとてもいい笑顔をした父さんが、いい笑顔で「さすが俺の息子だ!」というものだから、なんとなく腹が立って、おでこにチョップをかましてやった。

「本当に良かったのかの?」

村長が、心配してくれているのだろう、声をかけてきた。

「ええ、まあ、勇者様の仲間って、なんかかっこいいじゃないですか、そういうのも良いかなって思いまして」

「お主のことだ、魔獣と戦うということがどういうことか、今更言うこともなかろう、行くと行ったのだから、儂らは応援するのみよ」

「ありがとうございます」

 そう言って部屋を出ようと振り返ると、母さんが「本当に行ってしまうのね」と言った。

「ごめん、行くことに決めたよ」

「そう――」

 かける言葉が見つからず、なんだか気まずい雰囲気になってしまった時。

「――ふむ、今夜テルリウスの送別会を行おうと思っているのだがのう、いかんせん儂にはどういった催しにするか皆目見当がつかん、そこで、バートン、アルミナ、其方たちが主催となり、会を開こうと思うのじゃが、どうかのう?」

「はい、是非やらせてください!」

「俺も、やらせていただきます」

「よかった、よかった。では、頼んだぞ」

「よーし、それじゃあ、ってテル!お前は出てけ、ほら、これから作戦会議やるんだから」

「へい、へい」

 全く父さんは相変わらず子供っぽいのだから。

 でも確かに、祝われる方が居るのも無粋だろうから、出ていくとしますか。

 そうして俺は、村長の家を後にしたのだった。


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