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カースアイテム

 明日ワタシはあの人のもとに嫁いで行く。

 今夜が父と母とワタシ三人の家族で過ごす最後の夜。

 優しく時には厳しい父の眼にうっすらと泪の跡。

 母はいつもの白いフリル付きのエプロンを着けて「寂しくなったら何時でも帰って来て良いのよ」と励ましてくれた。

 優しい家族に恵まれて幸せを感じた、今度はワタシが彼と父や母の様な愛のある家庭を作ろうと思う。


「ねぇお母さんはお父さんのどんなところに惹かれて結婚したの?」

「女の戦場の家事を支える戦闘服エプロンを意識させてくれた人だから……かな」

「そっか。だからいつもエプロン姿なんだね。じゃあお父さんはお母さんと結婚しようって何時思ったの?」


 父は困った顔をしてぽつりぽつり語る。


「あれはな、始めて母さんが部屋にやって来た時でな………」


 母は素肌に白のフリルのエプロンだけを身に付けて朝食の準備をしていた。

 情事の跡が残る解れた髪。

 白い肌には球の汗が浮かびエプロンに染みを作る。

 後ろから抱き締めると嫌々をするがその声は鼻に掛かり本気で嫌がってはいない形だけのものだと解る。

 しかしエプロンの結び目に手をかけた父に待ち受けたのは先程までの流されるだけの母では無かった。


 一匹の牝の獸。


 父の身体は90✖210の布団から伸びる蔦の様なものに四肢を絡め取られた。

 自由を奪われた父の上に母は乗り父の体力を奪う。

 しかし精根奪われ続ければやがては死が見えてくる物だが、蔦は父にホイミをかけ続け母は父の体力を奪い輝きを増す。

 父は死にかける度ホイミを掛けられ体力をうばわれる。そしてホイミ………エナジードレイン………ホイミ…………エナジードレイン永遠とも思われる時間繰り返された。


 父は何時間後には死を望んだ。


 しかし母と父の死闘とも云える儀式は37時間にも及び痩せ細った父の腕が蔦から抜けやっとの思いで母にエプロンを着ける事で難を逃れる事が出来た。


「………それで、責任を取ることで僕は解放されたんだよ」


 このときワタシは総てを知ってしまった。父は母に甘いのでは無くただ怯えていただけだっのだと。


「yes、no枕は家には無いけどお母さんのエプロンが白のフリル付きなら今夜は良いよって合図なのよ~」


 お母さん………毎日そのエプロンだよね?

 お父さんの頬が痩けてるのは………


「これから新しい家庭を作る貴女にコレを上げる」


 ワタシは母の着けたエプロンと同じものを手渡された。

 エプロンは母の手作りだった。

 受け取った瞬間背筋がゾクゾクした。


「血は受け継がれるか………」


 父は寂しく呟いた。


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