表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宙を翔ける者   作者: O
2/4

宙を翔ける者 第一章 手紙

僕の使ってる端末は、数年前のiPod touchで、小説投稿でもそれを使っています。数年前なだけに、もう古くなっており、すぐ落ちる(強制終了する)ようなポンコツです。

だから、小説本文を作っている途中でiPod touchが強制終了して、結果最初から本文を作らねばならないということも多々あります。そういう事情で、小説の投稿頻度はかなり遅めになりますがご了承ください。

また、別作「欺瞞を生きる」は諸般の事情により投稿終了とさせて頂きます。申し訳ございません。これからもお付き合いいただけると嬉しいです。

では、本編をお楽しみ下さい。

6月27日。JAXAで新たに製作されたリモートセンシング衛星「ときお」の打ち上げから一週間が経った。

東京都調布市、JAXA本部。

今年で三十路を迎える諸岡良隆 (もろおか よしたか) はスーパーコンピューター棟で「ときお」の軌道計算をしていた。無論軌道には何の問題もない。1/1000000000'ほどのズレは多少見られるものの、軽微なズレである。気にする必要は全くない。諸岡はふう、と溜息をついて、先程から酷使している右肩を軽く回した。コキコキと音が鳴った。所詮こんなものだよなあ、と諸岡は心の中で呟いた。というのは、地球外知的生命体との交信も目的の視野に入れておくとか言っておきながら、飛行しているのは普通のリモートセンシング衛星と何ら変わらない軌道上なのである。そもそも、日本はライセンス国産で人工衛星を製作したとしても、作ることが出来るのはよくて火星や木星辺りを飛行する衛星であろう。何せ日本の技術は毎年確実に廃れていっているのだ。そんな状況でエイリアンを見つけ出せ、だなんて笑止千万、というのがJAXAの約七割のスタッフ達の考えだった。そこに総務省が割り込んできて、この有様だ。この程度の軌道しか飛行しないような衛星でエイリアンの電波をキャッチ出来るならば、とっくの昔に他の国がやってのけている筈なのである。_______諸岡はそれをわかっているからこそ、こんなことより他の研究をしたいという欲望が湧き出るのだ。

宇宙第二実験棟では、別の主任研究員らが暗黒物質に近い物質をレプトンを利用して再現するという実験を行っている。諸岡としてはまだそっちの方に興味があったし、意欲もあった。暗黒物質とは、銀河内外に大量に存在する謎の物質のことで、天体に重力を及ぼしている。それをレプトンと呼ばる素粒子で、微細な固有角運動を利用してどれだけ小さくてもよいので、とにかく暗黒物質のような重力を発生させる、というのが実験の主旨である。また固有角運動とは、静止した粒子のもつ運動のことで、素粒子の固有角運動量のことをスピンと呼ぶ。そしてそのスピンがある一定の値 (具体的には、1/2) である素粒子をレプトン呼び、それにはニュートリノなどが含まれる。

午後十二時三十分。交代の時間だ。諸岡はスーパーコンピューターのキーボードから手を離し、椅子の背もたれにもたれた。が、すぐに立ち上がった。次のスタッフがやって来たのだ。どうやら彼は自分より研究員としての位置は下のようだ。胸につけているバッジの色でわかる。自分は緑だが、彼は青だ。黒、茶、赤、黄、緑、青、紫、白の順に位が高い。吉峯泰雄 (よしみね やすお) という名前の、長身・痩身の男性スタッフは

「お疲れ様です」

と一言言って椅子に座った。

「今日の緊急担当は藤尾だからな。何かあったら、脇のメモに書いてある番号に電話しろ」

「わかりました」

緊急担当とは、担当スタッフに何かがあった時のための臨時の代用だ。その藤尾というスタッフは、名を嵩慧 (たかとし) といい、諸岡と同年輩である。

「では、頼んだぞ」

「はい」

吉峯がそう言い終わると同時に、諸岡は踵を返してスーパーコンピューター棟の出口に向かった。

諸岡はスーパーコンピューター棟を出ると、北側に向かって歩き出した。その先には、厚生棟がある。厚生棟には、食事をとることが出来るスペースがあり、売店、自動販売機もある。とにかく諸岡はそこで昼食をとることにした。

一階の休憩スペースでハムエッグサンドを食べていた諸岡はこちらに全速力で走って来る人影を見た。その人影の正体はすぐわかった。吉永弘志 (よしなが ひろし) 。体格がいいからすぐわかる。諸岡と一緒に「ときお」の開発計画に携わった同僚だ。彼は誰かを探しているようだった。ぼーっと眺めていると、ガラス越しに吉永と目が合った。諸岡がいる休憩スペースから外は丸見えで、外からも休憩スペースは丸見えだった。吉永は諸岡の姿を確認すると、更に全速力で走って来た。吉永が自動ドアの前で立ち止まると、自動ドアが開き始めた。だがその僅かな時間すら吉永は焦ったそうにしており、遂には吉永はまだ半開きだった自動ドアを無理矢理こじ開けて中に入ってきた。どうしたんだと思っていると、吉永は入り口から一直線で全速力で諸岡の元へ走ってきた。吉永は諸岡の元へ着くと、走り過ぎて疲れたのか、何も言わず大きく肩で息をしている。「吉永、一体どうしーーー」

「諸岡ッ、今すぐ来い!」

吉永は諸岡の言葉が聞こえていないかのように唐突に切り出した。

「え?どこに?」

「いいからついて来い!」

吉永は諸岡から食べかけのハムエッグサンドを奪い取り、諸岡の口に押し込んだ。

「うぐっ⁉」

「飯食ってる場合じゃないんだ!

TDOも来てる!」

「⁉」

TDOとは、正式名称を「宇宙輸送機開発機構 (Transfer vehicle Development Organizatior) 」といい、最近出来上がったアメリカの組織だ。その名の通り、宇宙輸送機、つまりスペースシャトルなどを開発している。結成してからあまり経っていないにも関わらず、その組織は次々と業績を上げ、大規模な組織となっていた。そのTDOが何の用だというのだ。諸岡は何とかサンドイッチを飲み込み、TDOが来ている理由を尋ねてみたが、

「いいから来い、来ればわかる」

と吉永に軽く往なされてしまった。そうして吉永に引きずられるようにして向かったのは、厚生棟から更に北東に進んだ場所にある、宇宙輸送系技術開発室だった。


諸岡が通されたのは、宇宙輸送系技術開発室の奥の部屋だった。普段は会議などに使用される部屋だ。そこには、「ときお」の開発計画担当主任の長内聡 (おさない さとし)と、副主任の美沢善彦 (みさわ よしひこ) に、「ときお」開発計画に関わったスタッフ全員、更にはJAXA本部理事長の山﨑敏夫 (やまざき としお) や副理事長の宮園誠太 (みやぞの せいた) 、そして理事二人までもがいた。そしてあと五人、外国人の男性がいた。TDOの人間だろうか。皆、緊迫した空気を放っている。山﨑が諸岡の姿を見ると、

「これでスタッフ全員か?」

と長内に尋ねた。

「はい」

長内は頷いた。

すると、山﨑は一枚の紙を手に取り、それを諸岡へ差し出した。

「……え?」

「読んでみなさい。君もスタッフの一員なんだから、取り敢えず状況だけでも把握しておいてもらいたい」

山﨑が言った。

諸岡は言われるがままに紙に書いてある文字を読んだ。だが、読み進んでいくにつれて、諸岡の顔から血の気がさあっと引いていった。


TDOにおけるスペースシャトル「トーソン号」開発計画スタッフ及びJAXAにおける「ときお」開発計画スタッフに告ぐ。

既に打ち上げが成功したトーソン号とときおだが、両方とも内部に時限爆弾を仕込ませてもらった。時限爆弾は機体を粉々にするほどの威力はないが、内蔵機械を粉砕する程度の威力は十二分にある。時限爆弾はどちらも日本時間で30日の午前0時ちょうどに爆発するように仕掛けてある。

そこで諸君らにある条件を出す。トーソン号とときおに仕掛けてある時限爆弾だが、どちらか片方は解除が可能だ。解除してほしければ、日本時間で28日の午前0時ちょうど、または29日午前0時ちょうどにテレビでその旨を放送してくれれば、ただちに片方の時限爆弾は解除する。どちらの爆弾を解除させるかは諸君らの判断に任せる。ただ、どちらかの時限爆弾を解除すれば、その瞬間、もう片方の時限爆弾は爆発するようになっている。

どちらも多額の金をかけて開発、製作した物だ、こんなところで爆発の被害に遭っては大きな痛手を食らうのは火を見るよりも明らか。どちらの時限爆弾を解除させるかは慎重に決めてほしい。勿論、どちらも解除させなければ前述の通り、日本時間30日0時ちょうどにどちらの時限爆弾も爆発する。それは忘れないでほしい。

これを信じるか信じまいかは諸君らの判断に任せる。賢明で、かつ迅速な判断を期待する。


O.S.


TDOってのは、筆者が自分で考えた組織です。結構、アルファベット3文字の組織ってネーミングセンスとある程度の英語力がないとオリジナルに作れないものなんです。今回のTDOの正式名称も、英語の翻訳アプリを使って出来たものなんですよ。だから、正式名称に多少文法的な食い違いがあるかもしれませんが、そこは目をつぶって下さい(−_−;)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ