表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

第1話


 そこそこ続きます。

 さて どうぞ。




 熱帯夜が襲う今日この頃。

 ある日、僕は夢を見た。


 天国へ続きそうな、とてつもなく長い階段が雲の上から、さらに上空へ続いていた。

 なぜかそこに居た僕は、その階段の行き着く先を目で追う。しかし先は、かすんで見えない。どうしようか、上ってみようか? と考えていた矢先、後ろから僕の名前を呼ぶ声がした。


「原田たいら。原田たいら、よ。5千点あげるから、こっちに来なさい」



 ……は?



 僕は振り向いた。白い長いひげと、白いロン毛の、いかにも『神様』だか『仙人』のような格好をした老人が、ここは雲の上なのに湧き出ている泉の中央から姿を現していた。


 ……あ〜、夢だ夢だ。何でもアリだ。僕は、そう考えた。


 僕は泉の前まで進み、立って、その老人を見た。「何か用ですか?」


「肩を揉んでもらいたいのはヤマヤマだが。そんな事は秘書に任せて。それより」

 どこに秘書が居るのだ……? という僕の疑問をよそに、老人は泉の中から両手に1本ずつ、ビンを出してきた。中に、それぞれ透明の液体が入っている。

 冷えてますか? ……僕が、あさっての方向を考えていると、老人は説明し出した。



「こちらが『何でもきく薬』で、こちらが『何かにきく薬』である」



 薬……? 薬だと言った。

 しかし『何でもきく』薬と、『何かにきく』薬だと言う。何ですか、そのニュアンス。


「5千点くれるんでないんですか?」

 僕はまた、あさっての方向に話を逸らす……意味もなく。

 だが老人は、ひるむ事なく「嘘ぽん!」と、本人はフザけたポーズと顔だが、僕の飛んだ質問に真面目に返して来た後、「このどちらかを選ぶがよい」と言った。


 選ぶ……。どちらかの薬を……。


 ……。


 ……いらない……両方……。


「絶対選べ」


と、老人は強く言った。夢の中のキャラのくせに、何でそんな主導権を握っているのだ?


「じゃあ……んと……。『何でもきく薬』で、いいです……」

「なぜ、そちらを選んだ?」

「……だって万能じゃないですか。何のどんな病気にも効くんでしょ」

「いや。君は感動的な勘違いをしている。これは『何でもきく薬』だ」


 ……よくわからない。僕がまた「は?」といった顔をしていると、老人は、

「しょうがない。タネ明かしをしよう。ビンのフタを開けると、白クマのおばあさんが煙のように出てきて、君の愚痴を24時間体制で何でも『きいて』くれるという、スグレモノ」

と、鼻高々にえばる。


 ……僕の愚痴を24時間体制で何でも『きいて』くれる薬……。


「そんなモン、世の一般サラリーマンか主婦の皆さんにでもあげてください」

 僕は謙虚になった。しかし老人はあきらめない。


「それならば、もう片方のコレをあげよう。コレならば……」



 ……キューキュキュッキュ〜……。


 ……動物の鳴き声を真似した、機械交じりの音が聞こえた。よく知っている音である。

 僕の頭の横にある、目覚まし時計の音だ。ちなみに鳴いているのはアザラシの声。


 僕は音を止めてベッドから身を起こした。

 辺りを見渡す……さっきまでのは、本当に夢だったらしい。


 夢か……夢……。


 夢で……ない。


 ゴトン。


 よく割れずにいてくれたが、身を起こした僕の体の上からベッドの下へ、身に覚えのあるビンが1本、転がり落ちた。


『何かにきく薬』


 何でここに。夢だったんだから、存在するはずがない。

 え……まさかこの話、ホラーだったんですか?


 僕は誰かにそう聞いた。



《第2話へ続く》



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ