第参話
どうしたものか。
いや、悠長に考えてる暇はない。まず優先するべきは目の前の2体の化物。ここを乗り切らない限り、私に先はない。
まずは1体、先程首を落とした奴だが、どうやらこいつのコアは頭ではなかったようだ。見た目ではわからないとなると厄介だが、わからないなら探し出すしかない。探すと言っても観察している時間はないし、それらしい箇所を全て切り裂くしかない。
まずは両腕、それから両足。ほぼ同時に切り離したがどちらも違うようで、すぐに再生を始めている。
「手足で駄目なら残すは胴体か。」
攻める箇所は決まった。何故か知らないがもう1体の化物は攻めてくる訳でもなく、こちらをじっと見つめている。チャンスは今しかない。
「これで、決める!」
力一杯に地面を蹴り化物が反応できない程のスピードで一気に距離を詰めて、ありったけの力を込めて胴体を切り刻むと、化物の体が4つに分かれて地面に転がった。
「ハァ、ハァ、ハァ…」
息を切らしならが顔を上げるとそこには絶望的な光景が広がっていた。
「な、なんで…なんでだ!?」
切り刻んだはずの化物の体が1箇所に集まり元の姿に戻っていく。
「どうなってる、確かに全身切り刻んだはずなのに。」
「あんたの攻め方はそもそも間違ってたって事さ、残念ながら。」
先程の男が、いつの間に移動したのか、私のすぐ後ろから声を掛けた。
「これ以上あんたに任せてても終わりそうにないから、もういいよね?奴らの事もそうだけど、自分の事すら何にも分かってないようじゃこの先生きていけないよ?」
そう言って男は2本のナイフを取り出し化物に向かっていく。
私が目を向けた時にはもうすでに2体の化物の胸に男のナイフが突き刺さっていた。
「はい、おしまい。」
男がそう言うと同時に、2体の化物が膝から崩れ落ち、見る見る間に消滅していった。
「どういうこと?コアが胸にあったなら私がさっき殺った時に死んでるはずなのに。それに2体とも同時なんて…」
「2体じゃない、今の奴らはあれで1体なのさ。元々の化物が2体に分裂してるから、コアは2つ同時に潰さないとすぐに再生する。まぁ、特殊な例だから驚くのも仕方のない事だけど。」
そう言うと男は私に付いて来いと言ってビルを出た。私は引っ張られるように男の後を追った。
気が付けば辺りは暗く、空には欠けた月が浮かんでいる。何処に向かっているのか聞いても返事はなかった。街を出て数十分、辿り着いたのは1軒の建物だった。
「ここは?」
私の問いに男がようやく口を開いた。
「PAINSへようこそ。」