デパートは遊び場らしいです:3
私がどうやって良樹を痩せさせるか頭を抱えていると、花はさらに追い打ちをかけてきた。もう、どいつもこいつも私の料理に文句ばっかり。少しプチっときたけど花には優しくしなきゃ。優しくされた子は優しく育つしね。
「あのね、男の子は牛乳を飲むと大きくなるんだけど、女の子が牛乳を飲むと余計な脂肪まで付いてしまうのよ」
「えー花も大きくなりたいよ。それにおにいちゃんだって前に、おねーちゃんみたいな小さいおっぱいになりたくなかったら牛乳を飲みなさいって言ってたよ?」
「花、あんた今度それ言ったらキレるわよ」
花は私の言葉を聞いて完全に固まってしまう。あまり私に怒られたことがないから免疫ができてないのだろう。目もどこか潤んできてる気がする。
おっと、危ないわ。年下相手に本気になってしまうところだった。怒るべきなのは花じゃないわね。
「そろそろ学校に行かなきゃな」
「お兄ちゃん今日はいつもより45分も早く登校する気なの?」
私はすでに全てを平らげてを立ち上がったお兄ちゃんの腕を掴む。
「いやー早く家を出ないと、また夏帆が迎えに来てしまうからな」
「あんたが二度寝して学校遅刻するから、わざわざ夏帆さんが起こしに来てくれるんでしょ」
私達の家の隣には長澤家があり、そこには天使が住んでいる。その天使というのが夏帆さんだ。私も頻繁に遊んでもらったり、話を聞いてもらったりしている。どうしてお兄ちゃんと同じ高校にいるか分からないぐらい頭が良くて、スポーツも万能。今はサッカー部のマネージャーをしてるらしいけど、すでに4人の選手から告白されているらしい。
外見は170センチ近くある身長に、小顔で八等身美人。腕も足も細くスラッと伸びているが美の曲線はしっかり描かれており、抜群のプロポーションは世の中の全ての男を魅了する。顔のパーツだってバランスの取れた大きな瞳に、無駄の無い鼻筋、小さく瑞々しい唇、そこに艶があり華麗なウェーブのある髪が……というどこか見覚えのある私の理想を、現実世界に持ち込んだような感じだ。
「あいつと登校したら周りがうるせーんだよ。女も男もギャーギャーワーワー」
実はこの男も学校ではめちゃくちゃ人気があるところに、私は疑問を感じずにはいられない。こんな捻くれ者のどこがいいんだか。まあ顔は……そこそこだと思うけどね。