デパートは遊び場らしいです:2
「それじゃあ全部揃ったし、いただきますしよっか」
全て運び終えた私は飲み物も入れ、全員分しっかり準備した。そして椅子を引き、座って両掌を合わせる。私が準備し、最後にお兄ちゃんが号令をかけるのが木の実家の日常だ。
「ちょっと待て、どうして俺だけ焼き魚がない」
しかし今日はいつも通りには進まない。お兄ちゃんは良樹の前に置いてある焼き魚を指差しながら、訴えてきた。しっかり考えられた私の朝ごはんに文句付けるとはいい度胸だ。
「え? 大樹教って神に反することになるかなんかで魚食べれないじゃなかった?」
「そんな設定ねーよ!」
「ああ、食べちゃいけないのは豚肉か。ごっめーん」
「肉も魚もなんでも食うわ! 大好物の豚肉をチョイスした時点で、分かっててやってるの丸わかりだからな!」
分かっててやってる? はて、何のことやら。今度は絶対豚肉を抜いてやるんだから。
「姉ちゃん、僕のご飯いつもより量が少ないんだけど。野球の体力付けなくちゃいけないのに、こんなんじゃどんどん体弱っちゃうよ」
良樹はお腹が減ってるのか、眠たいのか、最近疲れてるのかどこか元気がない。実は良樹は先週から少年野球チームに入った。土日の練習に加えて平日は朝連もあるという強豪チームで、野球が好きだというのと、花より強い男になりたいという理由からだ。
私はお金のことと、保護者が試合の応援に行かなきゃいけないということで反対したんだけど、お兄ちゃんが俺が全て解決すると言ったので止めることはできなかった。
実際お兄ちゃんは良樹の野球で使う道具を全て用意し、練習も見にいってる。良樹もそれに応えるようにサボることなく努力し、日に日に上手くなっているらしい。けれどまさか良樹が野球好きだったなんて……家族でプロ野球を見ることはよくあるけど。
「あのね良樹、野球は速く走らなきゃいけないの。だからそんなに太ってちゃだめなんだよ。これからは痩せなくちゃ」
「僕ホームランバッターになりたいって兄ちゃんに言ったら、じゃあいっぱい食えって言ってたぞ」
また良樹に余計なことを言いやがったのね、あの馬鹿は。
「おねーちゃん、私の飲み物はなんで牛乳じゃないの? 良樹みたいに牛乳がいい」