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ピンク髪の女

作者: L
掲載日:2026/04/15


スマートフォンの上で指をスケボーのように滑らしても、装着した白い有線のイヤホンから鳴る耳が悪くなりそうな程の爆音で気を紛らわそうとしても、ただベッドに腰掛け教材とゴミで散乱した机を見つめながら現実に起こるかどうか分からないような気色の悪い妄想をしても、虚無感は消えなかった

それは消えるはずの無いものであるのかもしれないが、どうにかそれから逃れ、忘れたいと思っている

見えないものは見えてるものの裏に隠れているだけで、人間みんな虚無を感じているはずだ

見えているものが急に無くなることなんて無い

寂しさなのか自分の感情がよく分からないが、とにかく夜風に当たることにしてみた


未成年なのに一丁前にあと半分ほど残っている赤マルのボックスにライターを忍ばせ、スマホとイヤホンで街に出た

駅を基準に栄えていない方側の、街灯はあるが明るいとも暗いとも言えない路地でしゃがみながら一服していると、セミロングでピンク髪の自分より1~2歳年上に見えるお姉さんが寄ってきた

絵の具で作れそうな単色の色白な肌、高いが主張は強くない鼻、メイクで作られた薄い涙袋、上と下で色の違う艶のある唇、全てが素敵に見えた

「ガキがタバコ吸ってんの〜?」

と話しかけてきた

この時間にただ歩いているだけの若めの女性に声をかけるのは怖がられるかもしれない、不快にさせてしまうかもしれない、と善人ぶった言い訳を脳が勝手に作り出し、喉を開くことのできない弱い俺に話しかけてくれたと言うべきか

「俺の勝手でしょ、こんな時間に何してんの、危ないから早く帰りなよ」

「ガキが偉そうに女の子の心配ですかぁ、本当は私に興味津々なくせに」

「興味はあるよ、可愛いし」

「えー照れちゃう」

なんだか気分がいい、ジグゾーパズルの最後のピースをはめたような、求めているものが手に入ったような心地がした

「ホテル行きたい、お姉さんを感じたい」

理性で物を考えるより先に、この言葉が出た

いや、理性で二度と関わることの無さそうな女に何を思われてもいい、と判断したのかもしれない

そこはどうだって良いが、とりあえず言った

「いいよ、遊ぼ」

もう既に黒いデニムから陰部が出そうなくらいパンパンに勃起している気がした

ベルトを締め直すふりをして性器のポジションを直しながら立ち、二人でホテルへ向かった

普段はナンパした時、色々聞くものだが、今回はホテルに向かう道中ほぼ言葉を交わさなかった


タッチパネルで部屋を選ぶ時と、ショート動画を見る時のスクロールは別物だ、名前を変えて区別した方がいいと思った

緊張した指先で安めの部屋を選び、部屋に入った

ひとりで暮らすにはちょっと広いくらいの空間にベッド、赤い布団と、丸い机、冷蔵庫などが見える

置いてある灰皿とライターに何か安心した自分がいる

濃い匂いを嗅ぎたいからという心底気持ちの悪い理由で女をベッドに残し、俺だけシャワーを浴びた

高そうなボディソープで股間を入念に洗い、長い陰毛を半分くらいカットした

優しさや安心感を感じる柔軟剤の香りが広がるバスタオルに身を包み、実際には背中が全く拭けてないのにも関わらず、準備万端であるとパンツを履いて気合を入れた


ベッドに戻ると女は下着だけになっていて、お互いを求め抱き合った

火照る体を絡め合い、自分の肌の黒さを知りながら、母のブラジャーで練習した片手外しを披露した

長い時間をかけ相手を思いやり愛撫することがセックスの上手さであるとの持論から、しっかり濡らしてやった

いつものルーティン通り、手に届く範囲に置いていたコンドームをキスしながら根元までつけていく

挿入したら10秒ほど動かさない

ゆっくり腰を前後させながら相手を見つめる

セックスは何よりも時間が過ぎるのが早い

いつの間にか2回射精していた

休憩で入ったからもう時間がない

1度脱いだ服を身にまとい、自動精算機で男を見せつけんばかりに全額を払ってホテルをあとにした

「女の子一人は危ないし、家まで送っていくよ」

「じゃあ出会った場所までお願い、そこから家すぐだから」


出会った場所にはよく見るとコカコーラの自販機があった

「なにか飲み物いる?」奢るつもりで聞いた

「ねぇ、私のこと見えてるの?」

急に何を言い出すのかと思った

「見えてるも何も抱いただろ」

「じゃあ私の名前知ってる?」

何も返せなかった

「私の出身地は?どんな人生だったとか、彼氏はいるのかとか」

「それ知っても何も無いじゃん、もう会わないんだろうし」

「じゃあ見えてるからってその全てを知っているわけではないってことだよね、見えないものを見えているもので隠しても、結局は表面以外は見えてない」

「何が言いたいの」

「感情だってこの世の事実だって全部表面しか見えない、それを隠したいなら薄い紙でも厚いダンボールでも透けなければいいの、だから実際、名前も知らない女抱いただけでさっきまでの虚無は忘れてたでしょ、それは長く付き合った彼女とセックスして忘れるのと違わない」

「、、、飲み物は?」

「コーラで」

自販機のボタンを押して振り返ると、そこには街灯しか無かった



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