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待つ先にあるもの


送信してから、

時間はゆっくり過ぎていった。


画面は暗いまま。

通知も来ない。


もう遅い時間だ。


分かっている。


それでも、

どこかで待っている。


期待ではない。


ただ、

静かな落ち着かなさ。


何度か画面を確かめ、

やがて携帯を伏せる。


部屋は暗い。


音もない。


それでも――

昼までとは少し違う静けさだった。


送った、という事実だけが

胸に残っている。




浅い眠りのあと、

早く目が覚めた。


体はまだ重い。

けれど昨日より、わずかに楽だ。


無意識に手が伸びる。


画面を開く。


通知がひとつ。


胸の奥が、

小さく鳴る。




表示された名前。


開くまでの一瞬が長い。


指先が、少し冷たい。




「おはようございます。

少しでも楽になっていたらよかったです。

無理しないでくださいね。」




それだけ。


短くて、

やさしくて、

余計な意味のない言葉。


けれど――


胸の奥に、

静かに温度が広がる。




特別なことは書かれていない。


踏み込まない。


距離も変えない。


ただ、

そこにある思いやり。


それが、いちばんやさしい。


力が抜ける。


浅くなっていた呼吸が、戻る。


昨夜から続いていた緊張が、

ゆっくりほどけていく。




同時に、

かすかな怖さもある。


この温度に慣れたら。


失ったとき、どうなる。


答えは出ない。


けれど――


それでも今は、


遠ざかるより、

感じていたいと思った。


ほんのわずか。


昨日までにはなかった感覚。




朝の光が、

部屋に満ちていく。


携帯を握ったまま、

彼はしばらく動かない。


胸の奥の、

やわらかい何かを確かめるように。




それはまだ、

名前を持たない。


けれど。


もう、

昨日と同じではなかった。


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