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「難攻不落の氷姫」と呼ばれる他校の美少女に傘を渡したらなぜか養ってもらうことになった  作者: 星宮 亜玖愛


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第38話 8年前の記憶

♦︎♦︎♦︎


 一足早い夏日に俺は扇風機の前でアイスを頬張りながらだらけていた。


「あ゙ぁ〜づぅ〜い゙ぃ〜!!」


 扇風機の風で声が揺れるのを少し楽しみながら変わらぬ現状に文句を垂れる。


「おい乃亜よぉ、文句言っても仕方ねぇんだからよぉ…熱いことを思い出させるようなことを言わないでくれや、頼むぜマイベイベー」


「親父真っ昼間から酔ってんなぁ」


「しゃあないだろ?こうでもしてないとやってけねぇよ」


「仕事をしろ仕事を〜」


「酷くない!?1ヶ月に一度のせっかくの休みを実の息子から取り上げられることがあるなんて!?」


「取り上げてないし一週間に一回の間違いでしょ」


「あぁ、my son(マイサン)はなんで辛辣なんだ…」


 パパだって頑張ってるのに…と膝に顔を埋めて嘆く親父は放っておいてとにかく俺は扇風機の生ぬるい風を顔に当てて少しでも暑さを回避しようと試みていた。


 が、その効果は一切現れなかった。


 暑いよぉ。


「そうだ息子よ!」


 先ほどまでのしょぼくれていた顔とは一転顔面には光が宿っていた。


 なんか嫌な予感がしてならない。


 俺の本能がこいつ(親父)から逃げろと警鐘を鳴らしている。


「今からちっと手を貸してくれよ!」


「げっ…」


 やっぱり……、面倒事に巻き込まれそうな予感がしたんだよな。


「忘れてたんだよなぁ、実家の引越しの荷解き手伝いに来いって言ってたこと」


 ってことはばあちゃんの家まで行くってことか…?


 確かばあちゃんの家って遠かったような…


「明日は日曜で休みだろ?泊まりがけで行けるな!」


 泊まり!?やだ!!絶対に!!


 だってばあちゃんの家あるとこ虫いっぱいで気持ち悪いんだもん!


「でも…」


「そうと決まればすぐしゅぱーつ!」


 くそ、この親父何も聞いてないじゃねぇかよ。


 こうなっちゃ止めらんな…。


 まぁしょうがない。


 大人しくついて行くか。


♢♢♢


「着いたぞー!!!」


 と、片田舎の大自然に向かって大声で叫ぶ33歳。


「親父…恥ずかしいって」


「なんだよ、子供ならこんなのいくらでもするだろ?」


「しないわ」


「なんだよ、子供らしくねぇなぁ?ほんとに小3か?」


「正真正銘の小学三年生だよ」


「の割にお前頭切れるよなぁ」


「親父がぼーっと生きすぎなだけだと思うけどな」


「やっぱり僕の息子ちゃん厳しいわ!」


 何だこの父親は……、何故母はこんなやつを旦那に選んだのか甚だ疑問だ。


 あ、ちなみに俺の頭が切れるってのは本当だよ。


 こう見えて頭いいからね。


 まぁいくら頭がいいとはいえ、どこぞの国民的小学生探偵にはかなわないけどね。


「そんなことどうでもいいから早くばあちゃんち行くぞー」


 騒ぐ親父を半ば引きずるように連れていった。


 にしても蝉の声がすごいな。


 心做しかどこからか風鈴の音も聞こえる。


 田舎ということもあり風に揺れる草木の音も耳を触りどことなく懐かしいようなくすぐったい気持ちになる。


 自然に身を任せながら少し歩きながら独りごつ。


「夏だなぁ」


 暑いような涼しい、そんな気持ちになる。


 やっぱり夏は好きだ。


「なぁ息子よ」


「なに?」


「ふと思ったんだがな、お前ってやつは時々…いや、常に小学3年生には見えないんだ」


「はぁ」


「言動とか学力ももちろんそうなんだけどやっぱり1番は表情。たまに大人びた表情を浮かべるんだよな、乃亜は」


「それを言ったら親父も33歳には見えないけどな」


「そういうことを言ってるんじゃないんだけどな」


 じゃあ何を言いたいんだ、俺にはわからん。


「まぁ人生長いんだからあまり根詰めすぎんなよ、頼りたい時は誰かに頼れ」


「よく分からんけど頷いとくわ」


「それと、自分の過去の記憶ってのも意外と使えるもんだから覚えておけよ」


「あいよ」


 結局何が言いたいのか分からなかったけど親父なりに伝えたいことでもあったのだろう。


 心の片隅にでもおいておこう。


「あ、ここがじいちゃんとばあちゃんの新居か」


「なかなか良い家住んでるな」


 やっとの思いでついたばあちゃんの家は古風な作りだった。


 縁側があり畳や障子で作られている部屋模様。


 庭には小さな池もあった。


 どことなく夏を感じさせる古民家は風情があった。


「ごめんくださーい!」


 玄関のドアを少し叩いて声を張り上げる。


 インターホンも無かったためこうするしか無かった。


「はーいよ、空いてるよー」


 奥からじいちゃんの声が聞こえた。


「んじゃ入るか」


 そう言って親父がドアを勢いよく開けた。


「来たぞー」


「いらっしゃい」


 ドアを開けるとじいちゃんが出迎えてくれた。


「久しぶりじいちゃん」


「おぉー、乃亜か!まーた大きくなってなぁ」


「こいつみるみるうちに成長するんだよな」


 親父が俺の頭をバシバシと叩きながら言う。


 ちなみに普通に痛い。


「小3のクセしてもう少しで145センチだとよ」


「本当かいな?」


「うん」


「こりゃ恭平きょうへいの中一の時よりもでかいんじゃないか?」


「ばっ、そんなわけあるか」


 そんな小さかねーわ、と怒る恭平くんこと33歳の親父。


 まぁ今は180くらいあるからどっちが本当のことを言ってるのかは分からないがな。


「それで、引越しの荷解きってのは何をすりゃいいんだ?」


「あぁ、それはあと少しで終わるから恭平だけ手伝ってね」


「え?」


 え?


「乃亜は遊んできていいぞー?」


 ちょいまてまてまて、………これってつまり来ただけ損?


 いやぁ、マジかよ。


 事前に行く前に電話で確認しとけばよかった…。


 てかなんで確認してないんだよ親父!


 と、親父を睨むと舌を出してテヘペロ!みたいなことをしていた。


「許すまじ……」


 はぁ、まぁ起こってしまったことを恨んでもしょうがない。


 気分転換に散歩でも行くか。


♢♢♢


「あぁ〜、気持ちいい〜」


 俺は今じいちゃんの家の近くの山の川沿いに寝転がっていた。


 川のおかげか少し涼しげな風が頬を撫でる。


 水の流れる音、草木が揺れる音、蝉や虫の音、俺の呼吸の音。


 その全てが合わさって、どこか幻想的な空間にいるような錯覚を覚える。


 静かに目を瞑り、音だけに集中し五感を冴え渡らせる。


 この世界で自分だけが切り取られたような感覚になる。


 色んな音が聞こえるなぁ。


 この一つ一つの音全てに物語があるのだと考えるとより感慨深いものがある。


 するとどこか遠くで、誰かの泣く声のような音がした。


 ………誰かの泣く声のような音!?


 誰かいるのか、と思いガバッと起き上がって辺りを見回す。


 すると遠くに小さな人影が見えた。


 泣き声が止む気配は無い。


 こんなところで…どうしたんだろう。


 気になって近づいてみることにした。


 1歩、2歩、3歩…ゆっくりと近づいていく。


 あれ…?俺と同じくらいの歳かな?


 見た目年齢は俺と同じ8歳位だった。


 声…かけてみるか。


 そう決意した俺は、近くまで行くとゆっくりと俺は口を開いた。


「ねぇ君、もしかして迷子?」

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