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記録者はまだ、夢を見ている。(The Recorder Is Still Dreaming.)  作者: 妙原奇天


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第8話 やさしく消す日の練習

 朝、港からの風は薄く、校舎の壁は新しい紙みたいに平らだった。昨日、先生が黒板の右下に書いた一文はそのまま残っている。いつか、この名前をやさしく消す。あの小さな約束は、黒板が消されても、目に焼きついて離れない種類の文字だった。

 十秒当番の表は、教室後ろの掲示に貼られている。初日の当番は倉田、二日目が僕、三日目が吹奏楽部の彼女。拭く係は木下と浜崎。黒板の文字の粉を落としすぎず、落とさなさすぎず、ちょうど良く整えるのが仕事だ。ダサいと笑っていた木下は、仕事になるとびっくりするほど丁寧だった。粉を集めて瓶に戻す手つきは、職人みたいに遅い。

 十秒の時間に入る。倉田は立たず、背中だけ伸ばした。空気を押しひろげるみたいに、静かに息を吸って、吐く。僕らの呼吸は勝手にそれに寄りそって、重なるところと重ならないところを行き来した。十秒が終わったあと、僕は名前を呼ばなかった。呼ばないと決めたのは、今日、資料館に行く約束があるからだ。返す場所の手がかりが、もうひとつ見つかった、と司書さんが言っていた。

 午前の授業は普通に過ぎた。普通のなかで、十七番の席は空の形を整え、机の奥の名札は名字だけのまま、透明な台座の角を光らせる。窓の外を鳥が横切る。鳴かない。鳴かない鳥の通り過ぎる速度は、呼ばない日とよく似ている。

 昼休み、新聞部のポストに折り畳まれた紙が入っていた。開くと、一枚のコピー用紙に、細い字で三行。

 旧教会には鐘を鳴らす前に、歌をひとつ置く習慣がありました

 歌は一度だけ歌って、忘れるようにして、鐘を鳴らす

 忘れた声の分だけ、音が遠くなる

 手書きの線は乱れず、しかしまっすぐでもない。誰かが昔、丁寧に何度も書いて、身体に覚えさせた字だ。カリンは言葉を一度全部口の中に入れてから、飲み込むみたいに頷いた。

「歌を置く、か」

「譜面はないってことだよね」

「うん。置いたら忘れる。忘れたぶん、遠くなる。遠くなった音は、たぶん、届く」

「忘れることが、返すことなんだろうか」

「忘れるって、全部なくなるって意味じゃないよ。輪郭を薄くするってこと。紙の白を増やすみたいに」

 午後、資料館へ向かう。校門を出た先の坂は、昨日より少し乾いて、靴底のゴムがかすかに鳴った。商店街の奥、古い木の扉を押す。司書さんは笑わないで目だけ柔らかくさせ、「見せたいものがあります」と奥へ案内した。

 長机の上に置かれていたのは、厚いノートだった。表紙は布張りで、角に真鍮の金具。開くと、五線譜が印刷された紙が並び、その上に音符がひとつもない。代わりに、日付と名前と短い言葉だけが丁寧に書かれていた。

 六月十九日 白鐘 息

 六月二十六日 白鐘 息

 七月三日 白鐘 息

 くり返されるのは、名字と、同じ一文字。「息」。歌を置く習慣の記録。歌詞も旋律もない。そこにあるのは、歌う前の呼吸のことばかりだ。ページをめくると、ところどころに短い注記がある。

 低く短く

 明るく短く

 鳴る前に止める

 カリンはページに顔を近づけ、鼻で紙の匂いを吸い込んだ。古い紙に触れても、匂いが新しい種類のものにだけときどき出会う。これはその匂いだ。印画紙を箱から出した瞬間の匂いと似ている。

「鐘の娘、という言い伝えは元々は歌い手の呼び名でした」と司書さんが言う。「女の子ばかりが選ばれたわけじゃない。子どもが歌って、最後は息だけになって、鐘を鳴らす。息、という記録だけを残して」

 最終ページの端に、墨の色が薄く残っていた。誰かが一度、名前を書こうとしてやめた跡。目を凝らすと、線の上で墨が乾いた形が、ユ、の左側に見えた。ナ、の右側かもしれない。あるいは、ただの紙のシワかもしれない。紙は、見ようとしたものを見せる。

 資料館を出ると、旧市街の女性が坂の上で手を振っていた。白い布袋を提げている。彼女は僕たちを見ると、微笑まずに言った。

「今日の海、穏やかですよ。……返す練習をしてみませんか」

 海は近いのに遠い音を立てていた。打ち寄せて、引いて、また打ち寄せる。港のへり、コンクリートの先に、細い白が一つ落ちていた。彼女が持ってきたのは、あの箱に入っていた白いリボンではない、新しい白い紐だった。長さは短く、片方は最初からほつれている。

「本物は、箱に置いたままにしましょう」と彼女は言った。「これは練習用。返すと言っても、捨てるのではない。置くのでもない。預かった時間を手のひらの温度で薄くしてから、手放す。その手放し方の練習です」

 僕らは頷いた。彼女は紐の両端を持ち、結び目の手前までそっと指で撫でた。ひと撫でごとに、紐は少しだけ重さをなくしていくように見えた。海風は弱く、空は浅い。僕は海に向かって息を吸い、吐いた。カリンも吸って、吐いた。三度繰り返し、彼女は紐をそっと指から離した。紐は海に落ちず、風の力で舟のロープに一瞬だけ触れて、そして、消えた。消える、というより、見えなくなった。海はすぐに何もなかった顔をする。

「いまのが、練習」と女性。「本番は、もっと近い場所で、もっと小さく、もっと静かに」

「教室で?」

「ええ。黒板の前で。あるいは、十七番の席の真上で」

 帰り道、カリンは珍しく何もメモしなかった。メモの代わりに、ゆっくり息を数えた。空は白く、校門のポプラは少し揺れて、体育館からドリブルの音がした。音は軽く、笑いも軽い。軽いものは、残らない。でも、残らないから、やさしい。

 夕方の話し合いは、短くする予定だった。教育委員会がもう来ない日で、外からの視線は薄い。先生は通路の椅子に座って、手を膝に置いたまま言った。

「今日は『練習』をしよう。消す練習ではない。返す練習だ。やり方は、お前たちで決めろ」

 教室の空気が一度だけ重くなった。誰も笑わなかった。笑いは、練習の邪魔になると分かったからだ。吹奏楽部の彼女が静かに手を挙げる。

「歌を置く、という話がありました。楽譜がない歌。息だけの歌。それを十秒のあとにやるのはどうですか。皆が見ている前で、誰かが『息』を置く。それを忘れる。忘れたぶん、名前に近づかない」

「それ、いい」と木下。「忘れる練習は、学校ではあんまり教えてくれないやつだから」

「忘れるのは勝手にできるけど、わざと忘れるのは難しい」と浜崎。「うちの兄貴、テストの前日にわざと忘れようとしてて、余計に覚えてた」

 笑いが薄く生まれて、すぐに消えた。倉田が頷く。

「息、俺がやっていい?」

 彼は立たず、席に座ったまま目を閉じた。十七番の席の斜め前。教室の空気がゆっくり彼のほうへ集まる。倉田は口を開かず、鼻から短く息を吸って、吐いた。吸って、吐いた。三度目の吐くの途中で、静かに止めた。止めたところで、おでこの筋肉がかすかに柔らかくなった。誰も拍手しない。誰も息を詰めない。忘れようとして、忘れた。

 練習は、一人ずつ回した。四人目で、廊下の向こうから手のひらの拍が聞こえた気がした。誰かが体育館で足を床に打っただけかもしれない。音のほうは、今は拾わない。拾うのは、息のほうだ。五人目のとき、窓の外を鳥の影がひとつ横切った。鳴かない。鳴かないまま、影だけ残して去る。影は、教室の床に短い時間だけ縞の線を描く。それも、すぐに消える。

 練習の最後、カリンが息を置いた。彼女は紙もペンも持たず、目を閉じて、胸の真ん中だけをゆっくり動かした。吸って、吐いて、止める。止めたところで、黒板の右下の白い糸が、風もないのにかすかに揺れた。揺れたと言い切れるほどではない。けれど、揺れた、と書けるだけの変化があった。

 練習を終えると、先生は立ち上がり、黒板の名前の右端にチョークを薄く重ねた。文字は変わらない。変わらないように見えるだけで、たぶん、ほんの少しだけ、優しくなった。

「明日は、暴風警報の可能性がある」と先生。「朝の点呼ができないかもしれない。できないなら、その日の十秒は、それぞれの家でやれ。場所は開けとく」

 暴風警報。予報は三時間ごとに変わる。風の数字は、紙の上では増えたり減ったりする。その数字が本当にここに届くかどうかは、風だけが知っている。

 夜、雲は低くなり、空は深くなった。家に帰って手帳を開く。今日の練習、息、忘れるという言葉、海のリボンの練習、資料館のノート。返す場所について書いていると、窓ガラスに細い線が走った。雨。最初の一滴は声に似ている。声は続き、雨は増え、音は厚くなる。厚くなった音の下で、僕は十秒を練習した。部屋の真ん中で立ち、目を閉じ、息を吸って、吐いて、止める。止めたところで、心臓の音が一瞬だけ遠くなる。遠くなった音は、忘れられない。

 眠りの途中、風が家を押した。窓の隙間が短く鳴る。時計の秒針は鳴らず、暗い部屋で、遠くのサイレンが一度だけ響いた。鳴って、止まる。止まって、また鳴る。何度目かの鳴りで、僕は浅く目を覚ました。携帯の画面に短いメッセージが浮かんでいる。

 あした、十秒のあと、呼ばないでください

 呼んだ日と呼ばない日が、同じになるように

 句読点のない二行。乱れのない文字。雨音が強くなって、画面の光はすぐに薄まった。僕は返事を打たず、手帳の最後に書いた。

 十秒の、あと

 朝。警報は出ていなかった。風は強く、雨は斜めだった。学校は開いていた。昇降口のガラスは外から叩かれ、内側に水滴の小さな星がいくつもできていた。教室の空気は湿り、黒板の文字はほんのわずか太って見えた。十七番の席は空のまま。名札の台座の角の欠け目に、雨の日の光が薄く集まる。

 十秒当番は僕だった。鐘の娘のノートの「息」を思い出しながら、背中を伸ばす。十五、十六。十秒。吸って、吐いて、止める。止めた先には声も音も置かず、空白だけを置く。置いた空白が、窓の向こうで雨に混じって、どこかへ運ばれる。十秒が終わる。呼ばない。今日は、呼ばない。教室は揺れず、時間は動く。普通は強い。

 一限と二限の間、突然、校内の電気が落ちた。蛍光灯の白が消えて、窓からの色だけが教室に入る。風が一度だけ強くなり、窓がきしむ。誰かが短く声を上げ、すぐに笑いに変えた。暗闇に近い明るさは、いつでも笑いを呼ぶ。笑いが生まれたところで、担任は動じなかった。

「停電だ。落ち着け。窓際は離れて、教室の真ん中に寄れ」

 窓のそばの生徒たちが椅子を持って移動する。通路の真ん中に円ができる。円の真ん中に、十七番の席がぽつんと残る。他の椅子が離れて、十七の椅子だけが一度だけ音を立てた気がした。気がしただけ。音は雨のほうだ。雨は教室の空気に大きな毛布をかけて、余白を一度に増やす。

 暗い教室の真ん中で、カリンが立ち上がった。彼女はペンを持たず、声も上げず、両手を胸の前で軽く合わせた。合図はしない。誰にも向けない。彼女自身に向ける。息を吸って、吐く。止める。練習でやったときよりも、止めた後の静けさが深かった。窓の外を雷の光が走り、その光の、ほんの後ろに、低い音が続く。鐘ではない。雷だ。雷の音は大きく、短く、忘れやすい。

 先生は懐中電灯を机から取り出して、天井に向けて照らした。光は直接は教室を照らさず、反射で部屋全体を薄く明るくする。円の中心、十七の椅子の背は、ほかの椅子より丸く光った。先生は声を低くして言う。

「このままやる。授業は無理でも、十秒はできる」

 十秒が二十秒に、二十秒が三十秒に流れた。誰も時計を見ない。見ないで、各自の中で時間を持った。時間を持つのは、呼ぶ練習より難しい。持ちすぎれば苦しくなる。持たなければ軽すぎる。ちょうどいいところで手放すのは、練習がいる。

 電気が戻る直前、斜め後ろの扉が少しだけ開いた気がした。風のせいだろう。見間違いだ、と言い切るほど、世界は単純ではない。扉の隙間から、廊下の光が細く入る。その線は床で切れて、僕の靴の先で途切れた。途切れたところに、小さな白い粉が一粒だけ落ちていた。チョークの粉は湿ると丸くなる。丸い粉は、踏まなければ残る。踏んだら、消える。

 明るさが戻ると、教室全体に軽い息がもどった。誰かが笑い、先生は頭をかいた。何事もなかったように三限へ移る。鼻の奥に、低い匂いが残る。濡れた木の匂いと、チョークの粉の匂い。粉は、雨のときわずかに甘く感じられる。

 放課後、職員室から呼ばれた。副校長と、教育委員会の二人が来ていた。机の上には、今日の朝刊。地域欄の隅に「写っていない展示が写したもの」という小さな記事。写真はない。文章だけ。記事の最後の段に、黒板の右下の一文の引用があった。いつか、この名前をやさしく消す。引用は短いのに、紙面が少し温かく見えた。

 背の低い委員が口を開いた。

「停電のとき、十秒を続けたと聞きました。……いいと思います。危なくない範囲で、続けてください。ただ、ひとつお願い。明日の朝、外から見える窓ガラスに貼ってある紙は、外したほうがいい」

 カリンが一歩出て、首を縦に振った。

「分かりました。外から見える紙はいったん外します。教室の内側に寄せます」

 話はそれで終わった。廊下に戻ると、旧市街の女性が、傘を持って立っていた。彼女は僕とカリンを見て、言った。

「今日の雨、少しやさしいです。明日は、もっと強くなるかもしれない。返す練習は、続けてください」

「箱のリボンは?」

「箱には手を入れません。箱は箱で、呼吸を続けています」

 彼女の言い方は、いつも具体と抽象の間に立っている。立って、揺れない。揺れないから、聞いているほうの心だけが揺れる。

 夕方、教室で紙を外し、内側に寄せた。外した跡の窓ガラスには、四隅の画鋲の痕が四つ残り、小さな正方形が薄く見えた。四角の中だけ、世界が少しだけ明るく見えた。そこに顔を近づけて外を見ると、校庭の端のベンチの脚に、細い白が一瞬だけ触れた。風ではない。目の錯覚でもいい。錯覚のまま、残ってくれれば。

 その夜、また風が鳴った。雨は強く、窓は低く唸った。机の上に置いた写真がずれて、倒れた。倒れたまま、拾わなかった。拾わないで、十秒を練習した。呼ばないほうの十秒。止めるほうの十秒。止めたところで、胸の中に冷たい川が一瞬だけ通った。通って、消えた。

 深夜、携帯がまた震えた。差出人なし。短い二行。

 消すときは、歌ってから

 忘れてください

 返事はしない。代わりに、手帳に書く。歌、息、忘れる。やさしく、消す。その四つを、黒板の右下の四角の中に重ねるように書いて、灯りを消した。

 翌朝。雨は弱く、風はまだ強かった。校舎の壁は濡れて、昇降口のガラスは曇っていた。教室に入ると、黒板の名前は、残っていた。粉は落ちない。線は痩せない。十七番の席は空。机の奥の名札は、昨日よりほんの少しだけ外に出ている。誰かが夜のあいだに触れたのか、それとも、ただの気のせいか。気のせいでも、今日は信じる。

 十秒当番は吹奏楽部の彼女だった。十五、十六。彼女は立たず、息を吸って、吐き、止めた。止めたあとで、歌わなかった。歌わない歌は、教室の四隅を静かに満たして、すぐに薄くなった。十秒が終わる。呼ぶべきか、呼ばないべきか。呼ばない、と昨日の紙は言っていた。呼ばない日と呼ぶ日が、同じになるように。僕は首を横に振り、呼ばなかった。

 その代わりに、息を置いた。吸って、吐いて、止める。止めたあと、ほんの小さな口の動きで、声にならない歌を手前で壊した。壊す練習。壊した歌は、誰の耳にも入らない。入らないものが、教室の空中に少しだけ残った気がした。感じただけ。紙には書ける。

 三限が終わるころ、風が一段落ちて、空が急に明るくなった。窓の四隅に残った画鋲の痕がはっきり見える。黒板の右下の白い糸は、なくなっていた。落ちたのか、誰かが持って行ったのか。糸は軽い。軽いものは、どこへでも行ける。その自由を、糸は最初から持っている。

 放課後、僕たちは音楽室に集まった。譜面台の列はそろっていた。誰かが直したのだろう。ピアノの蓋は半分開き、黒と白の帯が静かに並ぶ。窓からの光が弱く斜めに入り、鍵盤の端だけ少し光った。先生は来なかった。来ないほうがいい時間だと、分かっていたのかもしれない。

 僕は鍵盤に指を置いた。押さない。カリンは隣で目を閉じ、倉田はその隣で手のひらを上に向けた。三人で息を吸い、吐き、止める。止めたあと、僕は、息だけの歌を一度だけ置いた。音にならない線が、胸の内側を斜めに走って、すぐに消えた。消える前のその線の形だけを、記憶に押さえておく。押さえた形は、紙より薄く、けれど紙より長く持つ。

 扉のほうで、誰かの靴音が止まった。振り向くと、廊下の角に旧市街の女性が立っていた。彼女は中に入らず、目だけで頷いた。頷きは、呼びかけに似ている。呼ばない呼びかけ。彼女は去った。

 その夜、僕はやっと返事を打った。差出人なしのメッセージに向けて、短く。

 やさしく、消せますように

 送信の音は鳴らない。鳴らない音のあとで、部屋は静かだった。窓の外を、小さな風が通り過ぎた。風の音は、返響の反対側から聴こえた。心から外へ向かって、遠くなる。遠くなった音は、忘れられないまま、消える。

 翌朝へ向けて、僕は十秒の練習をもう一度だけした。吸って、吐いて、止める。止めたあと、胸の中でひとつだけ名前を持ち上げる。声にしない。持ち上げたまま、置き場を探して、置く。置いた場所が、返す場所になる。まだ、練習。練習のうちに、やさしさの形を手に馴染ませる。やさしさは、重さだ。重さは、持てる人の数だけ、軽くなる。明日、この教室で、僕らはその数になる。


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