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超楽しみにしてたロボゲーが、地球に戻る前にサ終したので、過去に戻ってやり直す!  作者: 弓屋 晶都


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第20話

「うわ……」「これは……」「オレここで死ぬっス……」

地下迷宮が『殲滅力』を問うステージだとしたら、こっちは『耐久力』が問われるステージだな。

もちろん『回避力』でも多少は何とかなるだろうが、それでも回避不可に近い攻撃が何度か入る時点で、ある程度の耐久力は必要だよな。

あのザンク・ロウはこれを三度もクリアしたってんだから、すごいよな……。


「こん中で、盾育ててる奴いるか?」

俺の質問に手を挙げたのは、俺とリボルバーだけだった。

「我の盾ではこの一斉掃射は1度防げるかどうかだな」

「俺のもそんなもんだ」


盾、なぁ……。

脳裏に浮かんだのは昨日のオネエだった。

名前は覚えてるし、ユーザー名で検索すればフレンド申請を送ることはできるだろう。

ただし、メッセージのやり取りができるのは、フレンド申請が承諾された場合だけだ。

いや、声かけるまでのハードルが高すぎんだろ。

そんで運よく声がかけられたとして、一緒に来てくれる可能性はどれほどあるんだ?


考えているうちに、動画が終了したのか3人が顔を上げた。

アサギが顎に指を当てて言う。

「確かに……まだ今の僕たちでは難しそうですね」

「移動速度は欲しいが……」

「うぅ〜。見てるだけで目が回ったっス〜」


ゼンの反応に俺は苦笑する。

「高速回転寿司ステージって呼ばれるくらいだからな」

「高速回転寿司……言い得て妙ですね」

「マジで高速回転寿司だったっス!」

ゼンはケラケラ笑っている。


「俺がもうちょい盾育てとくから、行けそうになったら皆で行こう」

「はい」「ういっス」

「我も盾はもう少し育てておこう」


「来月のPvPまでにステッカーが取れるといいよな」と言いながら俺はスマホで盾の強化素材を確認した。

強化素材と言えば、ゼンは足りてるんだろうか?

「あ、ゼンが入ってる間は、ゼンの行きたいとこ言ってくれればどこでも付き合うからな」

俺の言葉に、ゼンのいつもぱっちり見開かれた瞳がじとりと半眼になる。

「やっぱりそうなんスね……?」


ん?


「なんか最近オレ向きのステージばっかだなーって思ってたんスよ!」


んん?


「オレに遠慮しなくていいっスから、先輩のプレイ時間は先輩のために使ってくださいっスよ!」


なんだ、そんなことか。

「遠慮してるのはお前の方だろ。俺達は日中もプレイできるんだから、お前より自由が効くんだよ。もっと俺達を頼ればいいじゃないか」

俺はゆっくりと、言い聞かせるように伝える。

ゼンは、戸惑うように瞳を揺らした。


「そうですよゼンさん。僕はゼンさんの助けになれるなら、嬉しいです」

アサギにも言われて、ゼンが小さく俯く。

「ぅ……でも、やっぱ悪いっスよ……」


「俺が自分で、大事な後輩に時間をかけたいと思ってやってる事だ。それをお前が悪いなんて思う必要はないだろ。お節介だなって迷惑がるくらいでいいんだよ」

俺の言葉にアサギがクスクス笑いながら突っ込む。

「迷惑がられるようじゃ困りますよ」


「大事な後輩……。それって、大事な友達ってことっスか?」

ゼンが、なにやら期待のこもった瞳で俺を見上げる。


「ぇ? お、おう」

俺はとりあえず頷いてみた。


「それって、親友ってことっスか!?」


「ぇ……? お……おう……?」

そういう……もんか??


「親友っ! オレに親友ができたっス!!」

やったーーーっと立ち上がって、ぴょんぴょん跳ねるゼンを、アサギが慌てて止める。

「ちょ、ちょっと待ってくださいゼンさんっ、クマさんのお返事全部後ろにハテナがついてましたよっ!? そんな強引に押し切ったら可哀想じゃないですかっ」


ん? なんだ? 可哀想ってのは俺か?


「いやまあ……。まあ、大丈夫だ。アサギもありがとうな」

俺はそこまで言って、何だかおかしくなって笑った。

なんでわざわざ、親友ができたって喜んでるゼンを止めてんだよ。


「大体、なんでそんな嬉しそうなんだ。ゼンなら親友だっていっぱいいるんじゃないか?」

「それが、いないんスよ! 全然っ!」

そんな力強く主張せんでも……。

「そうなのか?」

「意外ですね」

俺だけじゃなく、アサギも不思議そうだ。


「いやオレ知り合いとか友達はいっぱいいるんスけど、皆にとって、一番の友達ってオレじゃないんスよね……」

ゼンは困った顔で笑った。


ゼンは誰にでもニコニコ明るいし、俺と違って親友もいっぱいいるんだろう、なんて勝手に思い込んでいたが……。

もし今までゼンの近くにいた奴らが皆、俺みたいに思ってたんだとしたら、そりゃゼンに親友がいないのも当然だ。


「なんだ、そうだったのか。勝手に決めつけて悪かったな。じゃあ、これからは先輩としてだけじゃなく親友としても、よろしく頼むな」

俺が差し出した手に、ゼンはぴょんと飛びついて両手で握り返す。

「こちらこそ、よろしくお願いしますっス!」


「そこで、撫でる」

なぜかリボルバーから指示が出たので、俺は開いた方の手でゼンの頭を撫でてみる。

ゼンは「へへへ」と笑って嬉しそうに撫でられているが、これは親友とは違うんじゃないか? 飼い主と犬の間違いじゃないか?


「あっ、僕もゼンさんの親友になりますっ!」

アサギが慌てて輪に入ろうとするが、リボルバーに「1人いれば十分だ」と首根っこを掴まれている。


いや、親友は何人いたって良いだろ?

もしかしてアサギが時々ポンコツなのは、お前の教育のせいなんじゃないのかリボルバー?


「俺はいつまで撫でればいいんだ?」

尋ねれば、リボルバーが「その辺でいいだろう」と当然のように返した。


何なんだよお前達は。


……あんまり久しぶりで、忘れてたよ。

親しい友達がいるっていうのは、いいな。


くすぐったさに苦笑すると、不意に吹きつけた秋風が俺のキャップを飛ばした。

涼しい風が顔に当たる。


あー……、飛ばされちまったか。

帽子の行方を追った視線を戻して立ちあがった俺を、全員がポカンとした顔で見上げている。


「イケメン!!!!!!」

ゼンが叫んだ。

「え……。ええ……??」

アサギも動揺している。


どうやら、今ので顔を見られたらしい。

食事でマスクも外してたからな。

俺は、動揺している2人の方は見ないようにして、ひとまずキャップを拾ってくる。

キャップをしっかり、深く被り直して、俺は元の場所に座った。


……まだ2人から強烈な視線を感じるな……。

リボルバーはすでに興味を失ったのか、たこ焼きを食べ始めているが、……いやそれ3パック目だよな? 思ったより食うな。


「えっ、待ってくださいスよ? 先輩……、え……? なんで……そんなにイイ顔してて、わざわざ顔隠してるんスか?」


「まさか……。クマさんが女性が苦手なのって、過去にモテ過ぎて……って事なんですか……?」

尋ねるアサギの声は震えている。


「あー……いや、何つーか……な……」

なんて言えばいいんだろうな。

まあ……。

思い返せば嫌な事ばかりが浮かんで、俺は答えるのを諦めた。


「否定しないんですね!?」

アサギがさらに衝撃を受けている。


「えっ、つーか先輩って女の人苦手なんスか!?」

「ああ。ちょっとな……。触ると蕁麻疹が出る」

「そんなに!? 全然ちょっとじゃないっスよ!! オレ全く気づかなかったっス! リボルバーの姉御とも仲良さそうに見えたっスよ!」


おいゼン、余計なことを言うな。


「我は、性別などという些細なものを越えたところに在るからな」


おいアサギ、リボルバーが人間辞めてるぞ!?


アサギはガクリとその場に手をついた。

「僕でも、顔だけなら……勝てるかと思ってたのに……」


ゼンが「顔だけでいいんスか?」と首を傾げる。

俺は「アサギの方が俺より頭いいはずなんだけどな……」と呟いた。


***


ポケットに入れていたスマホが震えたような気がして、俺はスマホを取り出した。

そこにはロボワのアプリから見慣れない通知が届いていた。


[申請が届いています]


「ん? 何だっけな、これ……」

首を傾げる俺の横からゼンがぴょこっと顔を出す。

スマホの画面が見たいのか、と画面を傾けるとゼンは「あ、これフレンド申請っスよ」と言った。

「そうなのか」

俺はロボワの管理アプリを開く。

「先輩ロボワのフレンド何人いるんスか?」

「お前も入れて3人。今日集まった奴らだけだよ」

「じゃあその人が4人目っスか?」

「どうだろうな」

俺の名前を覚えてそうなやつといえば、オジョウとザンク・ロウくらいだが……、まあ俺と対戦した時にボイスオフでも俺のことを覚えてるやつがいないとは限らない、か……?

首を傾げながら開いたフレンド申請メッセージの送り主はタテだった。

なんでだ……? と思う部分はあるが、これはありがたい申請だ。

[承諾]のボタンを押すと[タテとフレンドになりました]というメッセージウインドウが出る。


「あ、OKなんスね。知ってる人だったっスか?」

「ああ。前に一度戦った相手だ」

「あー。オレも前に試合でマッチングした人とめっちゃ話があって即フレンドになった事あるっス!」

「お前もボイスオン派か……」

「先輩はオフなんスか?」

「基本的にはな」


俺は早速フレンドリストを開いた。

タテさんは今……レベル50。現在の上限レベルか。


「わ、レベル高い人なんスねっ」


まあゴールドがレベル40台だとすれば、そこから上はレベル50が当たり前なんだろう。この先もレベルは毎月10ずつ上限解放されていくはずだからな。


「この人は、めちゃくちゃ硬いタンカーだ」

「そうなんスか!? そんな強い人からフレンド申請が来るなんて、先輩すごいっス!」


いや、そこなんだよな。なんでタテさんは俺にフレンド申請を……。

と思っている間に、メッセージ通知がきた。

タテさんだ。


『ちょっともうっ、こないだはよくも引っ掛けてくれたわねぇ? プラズマキャノンの有効時間って15秒固定なんじゃないのっっ!』


「……なんか怒ってるっスね」

「そうだな」

続いて『プンプン』というスタンプが届く。

「課金スタンプっスね」

「そうなのか」

「先輩なんかしたんスか」

「まあちょっと……ブラフをかけた……」

「わぁ……。それでわざわざ文句を言うために、この人フレンド申請してきたんスか?」

「そう……みたいだな」

「先輩、返事するんスか?」

「う。それは……。まあ、謝るしかないな……」

「ひゃー。先輩律儀っスねー。オレだったらこんなのスルーしちゃうっスよ」

俺もスルーしたいのは山々だが、この人さえいれば、お前達をすぐにでもあの高速回転寿司ステージに連れてってやれるんだよ。


俺はしばし考えてからスマホを引き寄せる。

ゼンは慌てて車窓に視線を投げた。

気を遣ってくれたんだな。まあ、謝罪文なんて、人に見られたくはないもんな。


『あの時は悪かった。ブラフでもかけないと勝てそうになかったんだ。気に障ったなら謝罪する』

俺は正直な気持ちをそのまま文字にして送った。


どうだろうな。これでダメなら諦めるしかないわけだが……。

悩むほどの間も無く、返事はすぐに返ってきた。


『あらぁ、文句が言いたかっただけなのに、謝ってくれちゃうなんてっ。何だかこっちこそ大人気なくてごめんなさいねぇ』


どうやら、会話の余地はありそうだな。

続けて『ごめんねっ』というスタンプが届く。


「そういやお前は今ロボワのフレンドって何人くらいいるんだ?」

「んーと……」とゼンは自分のスマホを見て、「17人っスね」と答えた。

「……多いな」

フレンドリストも上限があったよな……?

俺はもう一度フレンドリストの画面を開く。

『4/100』そうか。友達は100人作っていいのか……。

俺にはきっと、この半分も埋められる日は来ないだろうけどな。


俺は、タテさんを『空の迷宮ステージ』に誘ってみた。

移動速度2%アップの迷宮ステッカーの話をしたら、タテさんは前のめり気味に誘いを受けてくれた。

思わず口端が上がる。

まあ、マスクで隠れてるし、ちょっとくらいニヤケたっていいよな。

だって、俺の知る限り最強の盾と、一緒に戦う約束ができたんだからな。


「お前、帰ったら時間あるか?」

「あるっスけど……先輩もう帰っちゃうんスか?」

「まだどっか寄る気だったのか?」

「せっかく先輩と遊びに出たんスから、これからゲーセンとかどうっスか!」

「誘いはありがたいが、俺はもう外出は十分だ。それより、帰ったら俺と『空の迷宮ステージ』の練習をしないか」

「えっ」と驚いたゼンが、「あ」という顔になる。

「もしかして、さっきの人っスか!?」

「ああ」と俺は頷いて、タテさんがノリノリで『空の迷宮ステージ』に行くと答えているメッセージ画面をゼンに見せた。


行くのは、学園祭の終わった翌日月曜日。21時からだ。

タテさんは木曜と日曜が休みらしいので、木曜ならリボルバーとも一緒に行けそうだな。

「21時までに帰れそうか?」

俺が聞くと、ゼンは「絶対帰るっス!」と握り拳を作って答えた。


***


そんな土日を過ごして、迎えた月曜の朝。


「おはようございます、長尾さん」

ピアリスの声が、耳元でふわりと柔らかく聞こえる。


「ん……」


睡眠計測をするようになってから、ピアリスの端末を枕元に置いてるせいで、起床アラームの声かけがやたらと近い。

出会った頃はもっとずっと無機質な話し方をしていたはずのピアリスは、ここ数年でみるみる人間らしい感情の込められた声で喋るようになっていた。


ピアリスに声をかけられた側の耳に、ぞわりと鳥肌が立つのを感じて、俺は胸中でため息をつきながら起き上がる。


「おはよう、今日もありがとうな」


俺が、自分の人恋しさを紛らわそうと、こうやってピアリスにリマインダーやら食事やら付き合わせてるくせにな。

いざピアリスが人に近づいてきたら嫌悪感を抱くなんて、そんなの自分勝手にも程がある。

こんな感情、ピアリスには絶対悟られたくない。

あいつは毎日、良かれと思って俺に優しく接してるんだからな。


とりあえず、睡眠計測はもうこれで1週間だ。

問題がなければ、終わりにしてもらってもいいだろう。


1週間といえば……。


「そういや預けてた資産はどうなってるんだ?」

資産と言ってもほんの5万円だけどな。

いや、それなりの金額ではあるんだが、なんか前回の60万円課金で金銭感覚がおかしくなってるのか……?

大丈夫か、俺……っ。


1人動揺する俺の横でピアリスがさらりと答える。

「お預かりしていた長尾さんの財産は、現在10万円を超えたところです」


「……ん?」


ど、どういうことだ……。まだあれから一週間しか経ってないぞ……?


「俺、10万預けたんだったか……?」


「いいえ、お預かりしたのは5万円です。翌日に20%程度の値上がりが予想される株を毎日購入しては売却しておりました」


いやいやいや……。そんなサラッと言われても……。

そんなの現実に可能な事なのか……?


「これで私の株価予測性能をご理解いただけたでしょうか?」

ピアリスのすました顔に、隠しきれないドヤ感が滲んでいる。

そんな顔されちゃ、認めるしかないな。

「……チート級だってことは分かった」


そんな超AIピアリスからの提案は、俺の想像を遥かに越えていた。

「どうか私に、長尾さんが船にいた間の資産をお任せいただけませんか?」


「それってつまり、4年分の給料を全部預けろって事か……?」

「はい。現在お任せいただいている資産では、私がここにいる期間のうちに、

長尾さんが生涯安心して暮らせるだけの額の確保が難しいのです」


待て待て待て。

誰が俺の一生分の金を稼げって言ったよ。

個人投資なんて、ちょっと増えればラッキーくらいのもんだろ?


いや待て。

今のピアリスの言い方だと……。

俺の4年分の給料を元手にすれば、生涯暮らせるだけの額を稼ぐ事が可能だって言ってんのか……?


俺はゴクリ、と喉を鳴らす。


メカニックの仕事は好きだ。

仕事環境にも文句はない。

人間関係だって困っちゃいない。


……だが、蓄えはいくらあっても困らないよな?


ピアリスだってもうあと3か月ほどしかいないんだし、試してみてもいいなら、ここはピアリスに賭けてみるか。


「しかしな……」

呟いた俺を、ピアリスはじっと見つめている。

「ピアリスは大変じゃないのか? そんな大量の計算をして」


ピアリスは驚いた顔をした。


いや、マシンだって無理をさせれば熱暴走するだろ?

俺のそばにいるピアリスは、片手に乗る程度のこんな小さな携帯ホログラムが本体だ。

こんな小さな機体では、高速計算処理なんてとても回せないだろう。


「私は大丈夫です。私の計算能力からすれば、15%以下の負荷率となっております」

ピアリスはそう言って柔らかく微笑む。


「そうなのか? すごいな。お前が大丈夫ってんなら任せるよ。そんな一生分稼ごうなんて気負わなくていいから、出来る程度でやってみてくれ。無理はしなくていいからな」


資産が増えるのはありがたいが、3か月後にあんまり減ってるようじゃ困るからな。


ピアリスは「はいっ、お任せくださいっ」と気合十分に胸を叩いて答えた。


しかし、株価予測がたった15%以下の負荷だなんて、最近の小型機は性能がいいんだな……。

俺は、ぼんやりとピアリスの足元でピアリスを映し出している携帯ホログラム機を見る。


……いや、そうなのか……?

そもそも俺の、この認識自体が間違ってるんじゃないか……?


俺が喋っている相手は、俺専用にコピーされた小型端末内にいるピアリスだと思っていた。

船にいるはずのピアリス本体には、何の影響も及ぼさない。そんな俺専用の小さなピアリスなんだと……。


……だが、そうじゃないとしたら……?


ここにいるピアリスがもし、エイリアス……つまり本体へのショートカットのようなものだったとしたら……?

俺がもし、このピアリスを通して、あの船に乗っているピアリスそのものにアクセスしているのだとしたら……。


「長尾さん?」


ピアリスに尋ねられて、俺はハッと我に返った。

「いや、何でもないよ。朝食にするから少し待っててくれるか」

「かしこまりました」

ピアリスは答えてにっこりと微笑む。


俺は顔を洗いに洗面台へ向かった。


そんな。まさか、な。

そもそもあの船に乗っているピアリス本体なら、株価予測に能力の15%もかかるはずがない。

きっと0.001%も必要としないだろう。


それより、今日はいよいよ『空の迷宮ステージ』に挑戦するんだからな。

武器の最終チェックと、予備の盾も強化できるとこまでやっておきたいよな。







この時の俺は、気づいていなかった。

ピアリスの言った15%以下には、当然0.001%も含まれている事に。






***


地球から遠く離れた航海軌道上をピア・オデッセイ号は進んでいた。


船内は深夜時間帯で、ごく少数のクルーと夜更かしな乗客以外は皆寝静まっている。

船の管理AIであるピアリスは、誰もいない操舵室で遠くに見える小さな光……青い星であるはずのそれを見つめていた。


ライトブルーの船服を着たピアリスは、パステルピンクのロングウェーブヘアを揺らして小さく呟く。


「ご安心ください、長尾さん。私はずっと、長尾さんの側にいますから」





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