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超楽しみにしてたロボゲーが、地球に戻る前にサ終したので、過去に戻ってやり直す!  作者: 弓屋 晶都


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第10話

俺は奥の壁を指差す。

「屈んだ時に気づいたんだが、そこの壁、下に隙間があるぞ。動くんじゃないか?」


「え!?」

「何だと!?」

リボルバーは一瞬で俺の指した壁へと飛びついた。

反応が早すぎるだろ。

アサギ機なんて俺と同じ逆関節機だから、急旋回できずにまだ方向転換中だぞ。


俺とアサギがようやく近くまで寄ると、コンコンと壁を数箇所叩いていたリボルバーが「ふむ。こうか」と呟いて、壁をスライドさせた。

「は……?」

何で叩くだけでそんなことがわかるんだよ!?

「流石、夏……っ、リボルバー!」

アサギはもう名前を呼ぶのは諦めたらどうだ?


ズズズとスライドされた壁がゴトンッと音を立てて止まると、BGMが変わる。

これは……中ボス戦ってことだな。


今までは時折聞こえていた程度のキィキィと軋むようなネズミロボの鳴き音が、一斉に周囲から聞こえだす。


どうやら俺たちを目掛けて、この広大な迷宮中のネズミが集まってきているようだ。


「数が多い! 壁を背にするぞ!」

俺が叫んで背を壁に寄せると、アサギが俺の横に、リボルバーは俺達の斜め前に立った。

リボルバーは拳銃使いだからな。攻撃距離が短いのか。


「全部で何体いるんだ……?」

武器を構えるアサギの声には焦りが滲んでいる。

「かなりの数だな」

リボルバーは冷静に残弾数を数えつつ、両手に拳銃を構える。


俺は、背負っていた板状のパーツを3つ組み合わせて即席の盾を作る。

アサギとリボルバーの装備に比べると、俺の防御力は半分以下だ。

この物量で責められちゃ、真っ先にネズミに潰されるのは俺だろう。

少しでも生き延びるために、出来ることは何でもやっとかねーとな。

俺はカニバサミにポンポンを持たせて3機に手早くバフをかけると、ポンポンを外してオート攻撃を設定する。

この中で唯一の範囲レーザー砲持ちの俺が、真っ先にやられるわけにはいかない!


「ありがとうございますっ」

「ほう、これはいいな」

ポンポンの応援効果はリボルバーのお気に召したらしい。


あ。思い出したぞ。この迷宮の完全攻略法。

俺が諦めた、この迷宮の完全クリア条件は……。


「一匹残らず撃ち落とせ!」

俺達の前でリボルバーが力強く叫んだ。


まさにそれが、この迷宮の完全クリア条件だ!


声につられるように、地面を埋め尽くすほどのネズミが一斉に飛びかかってくる。


瞬時に重なる銃声。予備動作からの射撃が早すぎんだろ。

神技を目に焼き付けるのは最後のお楽しみにして、今はとにかくこいつらを……。


俺はレーザーの範囲を絞りつつ、強度を調節する。

広範囲で撃てば一気に20〜30匹にダメージが入るが、ダメージが少なくて3度は撃たなきゃ倒しきれない。

その間に一匹あたり10回アタックをくらってちゃ、こっちの盾が先に潰れる。


当たる範囲は10匹ありゃいい。

その代わり、一撃で倒せる出力に調節するんだ。


よし! ここだな!!

俺は範囲レーザー砲の出力調整を終えると、右手をスパナからショットガンに持ち替える。


その間もカニバサミは一定間隔で投石攻撃として弾を周辺に投げている。

スタン弾で麻痺したネズミは積み重なり、後ろから湧き続けるネズミを食い止める堤防にもなっていた。

おかげでまだ盾の損傷値は10%程だ。


防波堤となっているスタンネズミを避けながら、なるべくネズミの溜まったところへ次々とレーザーを撃ち込む。

カニバサミはマニュアル操作に変更。ポンポンに持ち替えて、奥に溜まったネズミめがけて毒武器の《刺胞弾》を投げ込む。


ネズミが多すぎる場所にはショットガンだ。

ショットガンには散弾じゃなくスタン効果のあるスラッグ弾を入れてある。


スタンで接敵数をコントロールしつつ、範囲狭めのレーザーで確実にネズミを焼く。

おまけに奥で混み合ってるネズミ達には毒を投げ込めば、前に出てくるまでに数を減らしておけそうだ。

いくらか突っ込んでくるネズミは盾で堪える。

よし、こっちは安定した! あいつらは……――。


味方機のステータスを見る。

リボルバーはあれだけの数を相手に無傷に近いが、アサギ機は損傷率が高い。

そろそろ戦闘開始から1分か。俺はポンポンで応援のバフをかけなおす。


「アサギ! 持ちそうか!?」

「修理キットあと2つです!」

終わりが見えてきたアサギ機に対して、ネズミの大群はまだその終わりが見えそうにない。


「俺の隣に来い!」

「っ、でもリボルバーが!」

「リボルバーならまだ堪えられる!」


「当然だ!」

リボルバーの力強い叫びに背を押されて、アサギが移動する。

俺がスタン弾でアサギの移動をサポートすると、リボルバーは銃撃を緩めることなく流れるような動きでアサギが抑えていた壁前に回った。


なんつー操作技術だよ。

腕が3本か4本生えてんじゃねーのか?


俺は近くに来たアサギ機をカバーするよう盾の角度を変えつつ、声をかける。

「散弾系持ってるか?」

「はい」

「なるべく被弾を避けて、中央だけ守ってくれ」

「でも……」


「まだこの後ボス戦がある」


ゴクリ、と息を呑むような緊張感は、リボルバー機からも感じた。


このネズミ達で終わりじゃない。

これはまだ前哨戦だ。

倒すべき強敵はこの先にいる。


「それまでにできる限り回復しとけよ。お前のライフル頼りにしてるからな」

「はい!」


俺たちがたっぷり5分間ネズミの相手をしていると、目の前にウィンドウが現れた。

「っ、前が見えな……」

ウィンドウを横に避ければ、ネズミ達は空中にいるものも含め全て停止している。

ああ、そういやボスステージに行くかどうかは選択式だったんだっけな。


[地下下水迷宮のネズミを大量に退治しました。ステージを出ますか?]

[はい][いいえ]

俺のディスプレイのボタンはどちらもディスエーブルで、押せる状態でないことを示している。

これはPTリーダーにだけ回答権限があるんだろう。


「え……? これで終わり……?」

アサギが戸惑っている。

「いや、続けるかやめるか選べるってだけだ」

俺の言葉にリボルバーが「そんなの決まっている!」と叫ぶ。

「わーーーっ、待て待て! 行くのは反対しないが、その前にトイレに行かせてくれ!」

俺の言葉にリボルバーは「仕方ないな。5分だけ待ってやろう」と不満げに答えた。




「はぁ……」

思わずこぼれた息と同時にゴーグルを外すと、窓の外は真っ暗だった。

カーテンを閉じて、トイレを済ませて、机に置いたままだったペットボトルから水を飲む。

っはー……。こっから先がまた大変だな……。

俺は首やら腕やらをゴキゴキ伸ばして肩を回す。

時刻は18時半に近づきつつある。

ああそうか、リボルバーは20時までしかロボワができないんだったな。

それで休憩を渋ってたのか。


休憩に入ってまだ2分。

俺の、書類上は24歳だが実質28歳の身体が、深刻な眼精疲労を訴えてはいるが、ボス戦中にタイムアウトじゃリボルバーに申し訳ないし、そろそろ行くか。



「戻ったぞー」と声をかけると、「おかえりなさい」とアサギの声が返ってきた。

ん? リボルバーがいないじゃないか。

「夏……リボルバーもちょっと休憩に行きました」

「お前はいいのか?」

「僕は大丈夫です」

「若いっていいよな」

「そんな変わらないじゃないですか」

書類上はそうなんだけどな。

実際は、お前が思ってる歳の差の倍は離れてるからな。


「待たせたな」

とリボルバーが戻って、俺達は操縦桿を握った。

さっきまでの良いリズムを崩さないようにしないとな。

そろそろパターン化されてきたスタンとレーザーと毒の攻撃サイクルをしっかり頭に浮かべながら俺は息を吸う。


「ネズミはあとどのくらいいるんでしょうか」と呟くアサギに、「まだここまでの倍以上はいるだろうな」と答える。


「行くぞお前達、ネズミを駆逐する!」

リボルバーの声に俺が「おう」と答え、アサギが「頑張るよ」と答える。

画面が動き出すと同時に、俺は半押ししていた発射ボタンを押し込んだ。



***




あれからもう10分は経ったか……。


ピコンピコン鳴っているのは俺の可愛いレーザー砲の残りエネルギーが少ないという警告音だ。


リボルバーが恐ろしいほどの素早さと正確さで、最後に飛びかかった三機のネズミロボを撃ち落とす。


ようやくリボルバーの神技をじっくり見られたが、そんなゆっくりしてる場合じゃねーな。

俺は、盾にしていた金属板を手早く解体して、レーザー砲のエネルギータンクを交換する。ちょい残ってたのが勿体なくはあったが、今は注ぎ足してるほどの時間がない。

BGMがじわじわとボス専用の重厚でドラマチックなリズムに変わる様に焦りを感じつつ、2人に声をかける。

「リボルバー、手首と肘締め直すからちょっと来い。アサギ、このパーツ脚につけるか? ちょい重くなるが損傷をカバーできる。2種あるからどっちか選べ」

アサギは俺と同じ逆関節機だったので、持参パーツが使えそうだ。

2人とも時間の無さを感じてか、素早く俺の側に集まった。

長時間銃撃を続けて緩んだリボルバーの関節部を締め直してる間に、迷宮中央の壁がガラガラと崩壊し、巨大な玉座と共に王様ネズミの影が砂煙の向こうに見え始める。


「よし、行け!」

手を離すと同時に、リボルバーが王様ネズミの前に飛び出す。

アサギがそれを心配そうに見送りながら、選んだパーツの『受け取り』ボタンを押して俺に差し出す。

「すみません、後でお代をお支払いします」

「おう。ボスが動き出すまでもうちょいある、すぐ済ますからな」

言いながら、俺はネズミに齧られてボロボロになったアサギの脚部パーツを外してアサギの選んだ軽量強化パーツを取り付ける。

「どうして、そんなことご存知なんですか……」

呟くようなアサギに「いつものパターンだろ」と返しつつ「できたぞ!」と手を離す。

「ありがとうございます!」

駆け出すアサギを見送りながら、俺は2人と自分にポンポンでバフをかけた。


巨大な王様ネズミがゆらりと玉座から立ち上がり、カッと開眼する。


このボスの攻撃パターン、覚えてねぇんだよな……。

初見で、俺はこの2人のようにうまく立ち回れるだろうか。


ドドドと地響きのような音と共に、王様ネズミの両脇から大量のネズミロボが姿を現す。


くそっ、ボス面でもまだ出て来んのかよネズミロボ!!

もうお腹いっぱいだっつーの!!


ボスが範囲攻撃をする可能性を考えて盾を畳んだが、これは早まったか……?


じわりと滲んだ汗が、静かにこめかみを流れた。


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