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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

復讐令嬢~家族を転移者に殺された貴族令嬢がチートスレイヤーと呼ばれるまでの話

作者: 山田 勝

 今日、私、フランカ・エリーゼは決闘をする。


「フランカ・エリーゼ、エリーゼ伯爵家が第2子にして、父、フランツ、兄、グフタフ、婚約者ニールの仇討ちを所望します。

 私の陣営はそよ風のフランカこと私、庭師ハンス、メイドのアンです。武器はこの魔法杖です」



「ええ、諦めなよ。君の兄上はクズだったのだよ」


 奴はすっかり、兄の元婚約者グッタの嘘を信じ切っている。

 怒りを抑えて返答する。


「いえ、これも武家の作法ならば」



「分かった。チャチャと終わらすよ。俺は、リョウマ・スズキ、日本出身、武器は銃だよ」



「確認をいたしました」



「リョウマ様、頑張って下さいませ!ランチボックスを用意しておりますわ」

「まあ、負けませんわ。シェフを用意しております。ディナーはお任せ下さい」


「ハハハ、それは楽しみだな。じゃあ、昼前に終わらす。一時間で十分だ」



 ・・・兄の元婚約者グッタが見物に来ている。シェフをつれているのは侯爵令嬢ね。



 不思議な異世界の物を召喚出来るスズキが隣領マテウ子爵家に現れた。


 散々、困った時に援助を要求してきたのに、手の平を返したようにそっけなくなった。

 異世界からの物にとりつかれたのだ。

 隣領はみるみるうちに栄えだし、エリーゼ領を凌駕するようになった。


 それまでは良い。

 あろうことか。お兄様との婚約を一方的に破棄し。お兄様がヒドイ虐待をグッタにくわえていたと主張し始めた。


 寄親のダスト侯爵家に裁定をお願いした。

 しかし、裁定はマテウ子爵家に有利な判定になり。


 こちらが賠償金を払えとなった。援助金の返還は無しだ。


 向こうからお兄様と婚約を結ぼうと提案してきたのに。

 お兄様とグッタは月に数回お茶会をするだけだ。

 虐待などする暇などない。


『貴族は名誉を食べる』との格言がある。

 悪評が立てば他家、商会にも軽んじられて領地経営が傾く。


 決闘を行い。

 お兄様は・・・亡くなった。

 スズキの銃だ。



 お父様も戦いを挑んだ。

 もちろん、重装備で挑んだが、鉄礫を防ぐ手段はなかった。


 王国に私戦届を出して、私の婚約者ニールが団長の騎士団も戦いを挑んだが

 負けに負け続け。

 今はお母様と私と使用人数人の寂しい家門だ。


 マテウ子爵家は、初めからスズキの武力を当てにして領地争いでも勝てると踏んでいたのだ。



 おかげで、我が家門は領地を削られ。窮乏し、騎士、使用人の大部分を解雇したわ。



 今度は、私がスズキに挑む。

 この地に王家の騎士団も来ている。

 観戦武官という名目だ。公平性が保たれる。


 スズキの要望を聞き。市街地でのサバゲ方式となった。サバゲの意味は分からない。異世界由来の言葉だろう。


「改めて、両家の争いの争点を言います。フランカ嬢が勝てば、兄上の名誉回復と、ダスト侯爵家とマテウ子爵家に処罰を下すこと。スズキ卿が勝てば、エリーゼ領の接収と爵位の受け渡し。でいいですね」


「は~い。これが終わったら王都に行くよ。子爵いいでしょう?」

「ハハハ、それもいいですが、グッタと婚姻をして下さい」


「これ!今は決闘の儀式の最中です。私語は慎みなさい」

「は~い」


「はい、エリーゼ伯爵の代行の名においてそれで結構です」


「では、この街をフィールドにします。人払いをしておりますから気にされないように、開始30分後から、決闘が開始されます。それまでに任意の場所に陣地を構築すること。ドラを鳴らすので合図に戦闘を開始されたし」


「分かった。人がフラッグだね。市街地戦は得意だよ。森だと虫が多くて、助かるよ」

「はい、分かりました」


「よお~し、弾は300発でいいか。結構重いな。200発でいいか」


 改めてスズキの装備を見る。あれはないわね。銃だけだ。まあ、あってもやることは変わりない。




 ガーーーン!!!ガーーーン!!!ガーーーン!!!






 ドラが鳴った戦闘開始だ。

 私の魔法はそよ風しか起こせない。

 しかし、とっても大事な魔法だ。


 力強く広範囲に起こせる。エリーゼの家名になった魔法だ。

 畑に風をあて、害虫を飛ばし。受粉を促す大事な魔法・・・


 ダダダン!ダダダン!ダダダン!


 開始の合図からすぐにスズキは撃って来たわ。




「あの音は、三連斉射、・・・強行偵察ね」



 狭い街の一角だ。すぐに見つかるだろう。



「アン、ハンス、大丈夫、石の家は弾丸を通さないわ。準備をお願い」


「「はい」」


「私が撃たれたら、すぐに降参して」


「とんでもございません」

「そのような悲しい事をいわないで下さいませ!」




 私は、魔法杖を手に持ち。詠唱する。


「偉大な風の精霊よ。我に力を貸したまえ。この街をそよ風で覆い。邪悪なる者を討ち滅ぼしたまえ」



 ヒュ~ヒュ~


 魔法杖の核が光り。

 優しい風が吹いた。




 ・・・・・・・・



 ☆☆☆決闘関係者待合場



「銃声がならなくなったわね」

「リョウマ殿、早かったな」

「そうだ。化学肥料というものを王都の社交界で広めようと思うのだが」

「はい、侯爵閣下、お願いします。取り分の方も上納させて頂きます」

「君は有能だな」




「決闘、終わりました。勝者はエリーゼ伯令嬢フランカ様!」


「そうか、やっぱりな。・・・え、見届け人殿!名を間違っています!」


「侯爵閣下、現物をご覧頂きますか?」

「現物?」



 私は天幕の仕切りをあけてもらい皆の前に立つ。


 ゴロン!


 袋からスズキの首を取り出し地面に転がした。



 数秒間だがとても長く感じた。無言が続く。



「そ、そんな。銃を持っているのだぞ!不正が行われたに違いない!」


「黙れ、この王国騎士団長代理マッケインが確認したのだ。勝者はエリーゼ伯令嬢殿だ」



「そ、そんな。もう、珍しい異世界の物品を納める契約を結びましたわ!」

「私は・・・私は、もう、リョウマ様の子をお腹に宿しておりますわ」

「どうしたらいいのだ?マッケイン殿!」


「それは、私の知ることではない」



 異世界人、こんなに簡単に殺せたのだ。


『ミリタリーチート能力者とは聖剣を持った子供だ』


 師匠の言葉が頭に浮かぶ。



 私の復讐は、逃げる事から始まった。







 ☆☆☆☆☆回想


 ニールが戦死した後、すぐに、侯爵家から調停の話が来た。


「異世界人スズキ殿は正当な決闘で勝った」

「それでだ。フランカ殿も婚約者が亡くなった事だし、いっその事、スズキ殿と婚約し、領地を合併されては如何かな?」


「そんなことさせません」



 お母様はそう言ってくれた。

 しかし、我が領はみるみるうちに貧窮していった。


「化学肥料はすごいぞ。もう、この高さまで育っている」

「フランカ様の風魔法無しでだよ」

「この領もマテウ領に併合されればいいのに」

「なら、行くか。農民を大募集している」

「農民戸籍の書き換えもしてくれるってさ」



 農民達が流失し始めた。お母様は必死に残るように働きかけたが止める事は出来ない。耕していない農地が目立つようになった。

 何でもゴーレムがあるとか。開拓が楽なのだそうだ。


 もう、私の風魔法を頼るのは残ったわずかな農民たちだった。


「いや、化学肥料というのは高いしな」

「そうだな」

「ワシは、どうもスズキは好かん」


「皆様・・・」


 しかし、日に日に、私とスズキと婚約を斡旋する声が強くなった。

 ダスト侯爵が直々に来て私を説得するまでになった。


「何故かな。君はスズキ殿の第3夫人になれるのだぞ」

「い、嫌です」


「戦国期には親を殺した家へ嫁入りなんてザラだ」

「今は戦乱ではありません!」




 ・・・・・・




「フランカ、逃げなさい。もう、エリーゼ家は私の代で終わらせます」

「お母様」


「どこかで貴方の優しい魔法を必要とする人達がいるわ」




 王都に向かい冒険者登録をした。


 しかし、すぐに王家から呼び出しを受けた。



「挨拶はいらない。探していた。私は公爵家子息マッケインだ。君、チートスレイヤーにならないか?」


「はい?私は非力な娘です」


「調べはついている。そよ風を起こせるそうだな」


「はい・・」


「正直に言おう。ダスト侯爵家が力をつけるのは王家にとっても芳しくない。だからスズキを君に殺してもらうのだ。それも、皆が見ている前で正当な方法でな」



 話を聞くと既に、スズキは侯爵家で囲われ警備が厳重。娼婦までチックされている。

 閨のケンカで処分する案は使えない。


「決闘の正当な権利がある君にしか出来ないのだ。筋道はつける。殺す方法はある。一月の訓練を受けてもらおう」


「・・・やります。ニール、お父様、お兄様の仇を討ちます!」



 本を渡された。

 この本の名は、


「対異世界武器戦闘術?」


「時々、ミリタリーチート能力者というものがこの女神様が統治する地に現れるが、大成した話を聞いた事があるか?」


「そう言えばないです。ニール、お父様とお兄様も銃を知らなかったです」


「徹底的に潰しているからだ。先生を紹介する。彼女は、異世界の騎士団の二世でもっぱら、父の技の再現を目指している。この本を書かれたサトシ・ニッタ殿の娘さんだ」


 奥から、少女が現れた。思わず体に力が入る。緊張した。12~14歳であろうか?小柄だ。

 しかし、スズキと同じ黒髪だ。長さは肩までだ。そして、同じマダラ模様の服だ。目は紺色・・・黒ではない。



「・・・アリサ・ニッタだ」

「はい、よろしくお願いします」



 次の日から訓練が始まった。



「伏せ!」


「はい!」

「はい!はいらない。弾丸を防ぐ基本の動作だ」


 文字通り地面にうつ伏せで寝る動作だ。これが、銃撃から防ぐ基本とある。本当なのだろうか?




『集まれ』『別れ』基本の動作を教わった。散兵戦術の基本だそうだ。



「斥候の仕方を教える。ゆっくり動くのだ」


「はい」

「復唱がない!」

「ゆっくり動く・・・了解です」


 ゆっくりと遮蔽物に隠れながら動く。


 敵の勢力下であるときはゆっくり動くのが良いそうだ。

 人の目は速く動くものに目が行きがちだ。


「目を出せ!」

「目を出します」


 遮蔽物に隠れて、ゆっくりと目を出すだけのイメージで敵を確認する。


「頭を引っ込めるときは、素早く!」


「頭を引っ込めるときは素早く!」



 そんな訓練を騎士の演練場で行う。


 二週間も経った頃。


 少女は銃を取り出した。彼女もまた異世界の物を召喚出来るようだ。


「これは、89式5.56ミリ小銃・・・単射と三連斉射と連射の機能がある」


 ダン!

 ダダダン!

 ダダダダダダダダ!


 引き金を引けば、一発だけ出るのが、単発、引き金を引いている間だけ弾が3発だけ発射されるのが、三連斉射、引き金を引いている間中、弾が出るのが連射・・・

 銃声を聞いて思わず腰が落ちた。


 今まで防御姿勢を習ってきたがとても防げる気がしない。逃げられる気がしない。


「グスン・・・グスン」

「大丈夫だ。全然平気だ。むしろ、怖いと思える感性が必要だ」

「はい」


 それから二週間は、私の風魔法と、繰り返しの訓練、座学や演習で過ごした。


「いいか、弾は土嚢で防げる。ウォーターボールでも有効だ」

「はい!土嚢で防げる。ウォーターボール有効」



 やがて、最終日が来た。



「陛下!」

「おお、挨拶は良い。最終の試練を始めるか・・・」


 場所は王都郊外の草原だ。陛下まで来られた。マッケイン様もいらっしゃる。


「ガルルルルーーー」


 草原には魔獣が立木に綱でつながれている。およそ私達から50メートルくらいの距離だ。

 私の近くには薪が積まれている。人もいる。王宮で見た顔だ。

 魔道師さんとあれは・・錬金術師さんだ。


 師匠が説明してくれた。


「いいか、戦いは銃で撃ち合うだけではない。異世界の現代戦は二割の兵力しか実際に前線で戦わないと云われている。それは、何故だ?」


「分かりません」


「武器は銃だけではないのだ。フランカの場合は風魔法しか使えない。いや、絶対無比の力だ。私に向かって毒ガスを放てば最強の兵器になる。その覚悟はあるか?」


「もとよりその覚悟はあります。でも、毒ガス・・・私、瘴気など出せません」


 座学で習った。異世界の騎士団は空、地上、海、海中、いかなる所でも戦うそうだ。

 その中でガス戦があった。

 やけに詳しく教えてもらったが。


「この世界でも人為的に毒ガスを発生することは可能だ。硫黄と歴青・・エトセトラを混ぜた物だ」


「・・・でも、スズキは知っているのではないですか?」





「ミリタリーチート能力者の本質は聖剣を持った子供だ。そこに付けいる隙がある。木の剣で遊んでいる子供は、やがて、騎士団に入り現実を知ることになる。ここでは毒ガス攻撃に対する防護戦がその現実だ。スズキは知らないだろう。知っていても大丈夫だ。それをこれから体験してもらう」


「分かりました。私は風魔法を発動させればいいのですね」


「そうだ。私に向かって風を放て」


 師匠は、魔獣の近くによる。やや、後方に立つ。

 私の距離から60メートル先だろうか。




「風よ。大地を風で覆いたまえ・・」


 ヒュ~ヒュ~


「着火!」


 魔道師さんが私の前で薪に火をつける。


「毒ガス発動!」


 錬金術師さんが袋から黒い物体をたき火の中に入れた。




 ボム!


【ギャアアアアーーーー】


 つながれていた魔獣が苦しみで咆哮をあげる。

 私を起点にして前でヒドイ惨状に陥っていることが分かる。



 魔獣の咆哮の直後、少女は、素早く伏せの姿勢をとり。何かの仮面で顔を覆った。

 速い。





「成功です!火を消します。フランカ様、風魔法はそのままで」


「はい」



 師匠は説明してくれた。仮面はまるで魔族の仮面に見える。あれは、瘴気の近くですむ部族の仮面だったと博物誌を見た記憶を探る。



「このマスクは防護マスクと言って毒ガスを防ぐ事が出来る。簡単なようでいて訓練が必要だ。〇秒以内で気密点検をして袖を伸すなどをしなければならない」


「でも、スズキが知っていたら・・」



「いいか、ガス戦は、最初の犠牲者が亡くなって分かることが多い。現場で判別する方法はないと言っても良いのだ。私もやられるだろう。この試練は私の実験でもある。フランカ、有難う」


 膝を折らないで腰を起点にして深々と頭を下げた。

 これは、珍しい礼法ね。異世界の礼法かしら。

 という事は、彼女は異世界人の集団の中で暮らしていた過去があったと推察した。


 後に聞いたが、彼女は異世界人とこの世界との混血で、お父様は人為的な召喚をされてこの世界に来た騎士団の一人だそうだ。





「はい、有難うございました」



 私はズボンだが思わずカーテシーをした。



 後は、王家が後押ししてくれて、決闘を取り付けてくれた。



 ・・・・・・・・



 スズキは魔獣と同じように苦しみながら死んだ。


 首を取り。見届け人のところまで戻ろう。


「アンとハンスは逃げて、これから戦闘が始まるかもしれないわ。ついて来てくれて有難う」


「「はい」」







 ☆☆☆☆



 決闘は終わった。スズキの首を転がし。相手の反応を見る。



「ヒィ、それでは私らが罰を受けるではないか?」

「フランカ様、私はお兄様の元婚約者よ。ヒドイ命令は出さないわよね」

「ダスト侯爵家は関係ない!」



「そうだわ。まだ、銃はあるわ。ここでフランカを殺せば!」

「銃を出せ!」



 愚か者は思いつきで動く。彼らはスズキが召喚をした銃を取り出した。


 私は伏せの体勢を取った。


 それを合図に銃声が響いた。


 ダン!ダン!ダン!


「グハ」

「ギャアアアーーー」


 遠くから師匠が狙っていた。


 一定のリズム、銃声が美しいと思えるくらい。

 数百メートルからの狙撃だ。単連射というものであろう。


「そんな。向こうも銃があるの?」

「ヒィ、もうダメだわ」


 何故、自分だけが特別と思い込むのだろう。

 結局、銃を手にした騎士数人が死亡し。向こうは完全に降伏した。

 王家の裁定に異を唱える行為、反逆罪で死刑か?


 だが、見届け人は言ってくれた。


「本来なら、反逆罪だが、決闘の取り決めを優先させよう。さあ、フランカ嬢、希望をいいなさい。どんな処罰が良い」



 私は決闘の権利を行使する。

「ダスト侯爵家は貶爵、マテウ子爵家に対して、王国を破門の処分にして下さい」


「「「えっ」」」

「そんな。ワシは・・・」


「そんな程度・・いえ、謹んで受けよう」

「今年から税金を払わなくてすむ?」

「やったわ。化学肥料と殺虫剤があるわ。少なくても今年は豊作だわ」


 マテス子爵家は、若干喜んでいる。


 この王国破門の処置はおよそ150年前に執行された領地刑である。

 彼らは知らなかった。王国全体から村八分される恐怖を。





 ☆数ヶ月後



「大変だわ!化学肥料で麦に実がつきすぎて、倒れてしまった!」

「殺虫剤も無くなった。頼む。フランカ殿、風魔法を頼む。それと・・・援助を要求する。いや、お願いしたい」



 マテウ子爵とグッタがやってきた。元侯爵、ダストも来ている。マテウ領で引き取られたと聞いた。

 

 化学肥料、異世界でも実がつきすぎて倒れる麦が続出し、それを見越して作付けをしなければならないほどだったそうだ。品種改良をされるまで、かなりの量、場合によっては二分の一が倒れたそうだ。

 王国でも時期尚早と判断をされた。

 

 私は。


「申し訳ございません。王国破門の処分により助けることは出来ません」


「そ、そんな」


 と言い放つ。


 この処分、領地内で全て完結しなければならないばならない。


「なら、私の息子と結婚してくれ。元侯爵令息だ。顔はいいぞ。身内になれば助けても問題はないだろう」


 頭がクラクラする申し出だ。



「あまり、しつこいと殺しますよ」


「「ヒィ」」



 スズキを殺した悪名は立った。しかし、私自身は変わらない。


 領民達はマテウ領を逃げ出したが、エリーゼ領からマテウ領に移住した家族は受け入れを拒否した。


 領民は財産だ。


 やがて、マテウ領は深刻な飢饉になったが、王国は助けない。


 エリーゼ家は元の雇い人を集め。

 行政府としての機能が戻り始めた。やがて、ダスト侯爵領は王家に、マテウ領地はエリーゼ領に合併になるであろうとの調整が来た。


 跡継ぎは。


「義姉上、行ってしまわれるのですか?」

「フランカ・・」


「フフフ、風魔法が必要な時は冒険者ギルドに連絡して下さい。駆けつけます」


 お母様の親戚から優秀な子を養子に迎えた。





 私は王都で冒険者になった。


 王国から依頼があったら、異世界人を抹殺する特殊部隊だ。

 チートスレイヤーのフランカと呼ばれているわ。


 今はリーダだ。


「フランカ様、銃を乱射している異世界人の抹殺依頼が来ました」

「そう、自分だけが特別だと思っているのね」


「異世界人なんてフランカ様がいれば楽勝よ!」



「ダメ!楽勝なんて化け物が出たらいけないわ!貴方を追放します」

「そんな!!」



 団員に恵まれない。毒ガスの成分は秘密だが。

 皆、この方法を知るとスズキの匂いがしてくる奴らばかりだ。


 傲慢な意に沿わない異世界人の抹殺以外に使われても困る。


 だから、私は。


「俺、見ての通りハーフリングだけど、落ち着きがありすぎる・・・斥候になるにしては慎重すぎると言われて・・」


「はい、採用」


「私は、名門魔道家の出身です。しかし、生活魔法しか使えません・・・」


「採用です」


 落ちこぼれと言われている人を採用している。

 彼ら彼女らは、言われたことしかやらない。自信がないからだ。

 だが、いかなる困難をも克服して任務を遂行しようとする。


 今はそれで十分だ。

 自信がつき。信頼関係が構築されたら、有能な戦士に早変わりをする。

 自分の弱さを知っている者は信頼できる。


 異世界人を何人か殺したら、チートスレイヤーと呼ばれるようになった。


 そよ風の魔法で異世界人を抹殺しても能力は消えない。

 女神様がそうしろと言っているのか?


 私はこうして、チートスレイヤーと言う身の丈に合わない称号で呼ばれるようになった。


 だから、パーティー名を『落ちこぼれの連帯』にした。


 これくらいが丁度いい。



最後までお読み頂き有難うございました。

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