001_第一章_龍の姫君と世捨て人_02
私はまず、キャラメイクをする前にリアルでの仕込みを色々と行った後、
ゲームへログインした。
ワールドクリエイターは所謂フルダイブ型のゲームで、
通常、ゲームにはまり過ぎないため途中で強制ログアウト等の処置がされるものだが、
このゲームにはそういった縛りは一切ない。
それどころか、栄養補給や排せつ補助、
一定期間同じ姿勢を取り続けた際の血流不全や圧迫による床ずれ対策など、
とにかく長時間ゲームにログイン出来るよう施策が施されている。
そのため、私は基本的にはログインし続けると決めた。
ログアウトするのは死ぬ時だ。
更に、挑戦するワールドクリエイターも予め決めている。
『龍の姫』
ワールドクリエイター内で姿を確認されている唯一の存在。
それが『龍の姫』だった。
過去、数百人のパーティーでとあるダンジョンを99階層分踏破し、
その先に『龍の姫』が居たという記録が残っている。
伝聞ではなく、記録、なのだ。
挑戦したパーティーは、ワールドクリエイターに挑戦した際、
その経緯と経験を次以降に引き継ぐため、
倒してしまった場合は不要になるが、生き残るための脱出チームを別途選抜しており、
その事前の打ち合わせ通り、そのチームは脱出した。
そして、ワールドクリエイターに挑戦するために残った側で、
生きて帰ったものは一人も居ない。
そのため、戦闘に関する記録は一切残っていない。
また、脱出したメンバーに関しても、ダンジョン前に控えていた予備メンバーの元にたどり着き、
直ぐに口頭筆記を始めた。
・ 我々は数百人のチームを編成し、攻略チームと帰還前提のチームに分けた。
・ 君ら予備チームにはこのことを伝えなかったが、意図をくみ取り、
良くダンジョン前に残っていてくれた。
・ 我々が最後まで到達した時には全体の半分が死に、
帰還前提チームも、帰還の際に残り人数が3人まで減った。
・ ダンジョンは99階+1階層。
・ 100階層目に女の子が居た。
・ 女の子は寝ていたが、目を開けた瞬間巨大な龍へと姿を変えた。
・ その瞬間、我々は引き返した。
・ 彼女はおそらく--------
そこまで話した瞬間、脱出チームのメンバーは急に言葉を話せなくなり、
そして絶命し、皆の記憶から消え去った。
記憶からは消え去ったが、口頭筆記の記録だけは残っていた。
不思議なことに、口頭筆記の最後の箇所には消された後、異なる筆跡で一文追記されていた。
・ ズルと殺生は良くない。
私は、唯一確認されているという、この『龍の姫』に挑む。
そのために、私はある覚悟を決めた。
私は、『38回』までなら、死んでもいい。