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001_第一章_龍の姫君と世捨て人_01

この世の全てがクソだということは誰もが知っていることだけど。

それを口に出すのは中学生の特権だ。

そう思って、そう行動して。

とうとう私は高校生になった。


クソだクソだと世界を嫌い続けたら、その通り、世界も私を嫌いになった。

居場所が無くなって引きこもった。

だから、新しい居場所が欲しくて、オンラインゲームを始めた。


『ワールドクリエイター』


この世界で唯一のゲームと言ってもいいほど、この世の人類ほぼ全てがプレイしているゲーム。

私は、世界を斜めに見ていたせいで未プレイだったこのゲームを始めてプレイしたのは必然だった。


 ・ ワールドクリエイターはもう一つの世界だ。

 ・ ワールドクリエイターは生活の一部だ。

 ・ ワールドクリエイターは人類が想像出来る全ての事柄が努力次第で全て叶う。

 ・ ワールドクリエイターは人類の希望だ。


レビューサイトに他のゲームが載ることは、もう十年近く無いらしい。

わざとプレイしていなかった私がそういう知識を知っているぐらい、

このゲームは世界の一部になっている。


どんなゲームなのか。

ゲーム自体はシンプル。

自分でキャラを作ったあと、第一世界と呼ばれる世界に飛ばされた後は全て自由。

家を建てようと、金を稼ごうと、異性を抱こうと、子供を作ろうと、魔王を倒そうと自由。

むしろ魔王になったり、村人Aになってみたり、銀行強盗をしてもいいし、他人に暴力を振るってもいい。

法律は無く、自分の身は自分で守るしかないディストピア。

そんな中、それぞれロールプレイにふける。

所謂NPCと呼ばれるAIやプログラムされた生き物は存在せず、

生き物は全て人間か動物か、実際の生き物の、生きている思考をトレースしている。


人間の本質なのか、それこそスラムみたいな所も存在しているが、

自警団や警察組織、法廷や裁判所等があったり、王国制、帝国制、共和制の国が乱立していたり、

そもそも、星丸々一つ個人の所有だったりする。


とにかく自分の発想と努力次第で全て叶うオールインゲーム、それがワールドクリエイターというゲームだった。


そんな全てが自由なワールドクリエイターの中でも、絶対的なルールが二つ存在する。


 1) ワールドクリエイター内で死んだ場合、復活は出来ずデータが完全削除される。

   また、死んだ場合現実の身体のどこか一部をゲームリソースとして提出する。

   そしてワールドクリエイター内で起きた出来事全ての記憶が、

   本人、及び、世界の記憶から削除される。


死んだらリスポーン、所謂、復活が不可というゲームは昔にも存在していたからさして物珍しいものではない。

でも、次の一文。

『死んだ場合現実の身体のどこか一部をゲームリソースとして提出』

これは本当に言葉通りの意味で、選択制ではあるが、身体の一部を差し出す必要がある。

というのも、ワールドクリエイターの運営会社が、

これほどのゲームを作り上げるには、通常のゲームの作り方ではサーバー容量もデータ量もメモリ量も圧倒的に足りない。

資源が足りないこの世界で、最も価値のある資源、それが人間の身体と気づいたのが、ワールドクリエイターの運営会社。

見た目ではわからないが、身体に流れる電気信号の一部を、物理的に奪い取り、

ゲームシステムリソースに振り分ける非人道的な技術、その悪魔のような発明を、

運営会社の社長が開発し、それをきっかけに世界が変わっていった。


当然、発表当初の反発は凄まじかった。

だが、その声はだんだんと聞こえなくなり、最終的には無となった。

それはなぜか。

それだけ、ワールドクリエイターというゲームが与えてくれる快感が振り切れていた。

発表当初はプレイ方針が固まらず、死んで身体の一部が再起不能となり、

更に死んだ記憶が無くなっているからトラブルが続出した。

病院で診察してもらっても、そもそも流れる電気信号が無くなっているから、

あとは緩やかに腐っていくだけで、その部分を切除するか、悪影響が無いから残すかの選択しかない。

だが、慎重にプレイするプレイヤーが、その可能性の広がりに気づいていった。

慎重に、慎重に。


 ・ 空を飛びたかった。

 ・ 億万長者になりたかった。

 ・ 思う存分寝たかった。

 ・ 異種族になって他人を害したかった。

 ・ 魔王になりたかった。


その絶対に叶うはずの無い夢を、次々と叶えていった。


そのため、世界中の人がプレイし、魅了されるワールドクリエイター。


その二つ目のルールが、


 2) ワールドクリエイターは運営が選んだプレイヤーしかなることが出来ず、

   権限の委譲は基本的には不可とする。

   唯一の例外は、ワールドクリエイターを殺害し、

   ワールドクリエイターが担っているリソースを全て引き継ぐ覚悟があるプレイヤーのみとする。


というもの。


ワールドクリエイターというゲームの名前にもなっている、

ゲーム内に限られた存在。

それが『ワールドクリエイター』。

まぁ、所謂、ボス的存在で、目的が存在しないゲーム内での一つの到達点の位置づけがされており、

当然NPCではなくプレイヤーである。

だが、ワールドクリエイターには他のプレイヤーには無い、唯一の権限、それが、

『世界を作る』こと。


星を作ることは通常プレイヤーにも出来る。

だが、世界を作ることは『ワールドクリエイター』にしか出来ない。

その世界はこれまた自由。

 ・ 重力が逆の世界。

 ・ 金が価値が無く、石ころが価値ある世界。

 ・ 呼吸が出来ない世界。

 ・ 愛が疎まれ、人殺しが貴ばれる世界。

 ・ 弱いものが強く、強いものが弱い世界。

土地や空間だけではなく、存在、法則、全てを自由に作り出せる存在、

それが選ばれた『ワールドクリエイター』。


だからこそ私がプレイする価値がある。

私はいつか、『ワールドクリエイター』になってみせる。

だから私は決めたのだ。

私がワールドクリエイター内で誰かを害するのはワールドクリエイターになるときのみと。

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