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年末年始短編小説  作者: みやびあい、
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一年のオワリ

一年のオワリ


もう今年も終わりだ。

そう年末に誰しも思う。

いいことわるいこと含めて一年は終わる。

「あたし、この一年なにしてたんだろ」

そう言って街イチバンの絶景ポイントで一人夕日をみている女性がいた。


大葉叶子おおばかなこ24歳、独身、彼氏なしだが、優良物件だ。


叶子は、明るく真面目で頼られ、優しい子である。

そんな叶子でも、こういう時間はあるのだ。

街イチバンの絶景ポイントを望む彼女の側には、赤い愛車、86(ハチロク)が止まっている。

まるで彼女を慰める、見守るように。


急に背伸びをする叶子。

「さて、帰るかね!86!」

そう言って車に乗り込む叶子。

ブレーキペダルを踏み、クラッチペダルを踏み込みエンジンをかけ、ギアを1速に入れその場から走り去っていった。

辺りに86のマフラーから奏でられる心地よい音を響かせて。


叶子は、峠道を走りながらおもった。

86はMT車なので、シフトアップやダウンをコーナーに合わせて行う。

アップダウン‥

「人生と一緒じゃん‥」そういいながら峠道を走り抜ける。


長い人生の中の一年。

たったなのか?もうなのか?

人によって違うだろう。

流れる周りの景色がそう語りかけているように感じる。


軽快にコーナーを攻略していく叶子。

グリッピング走行だが、滑らかなドライビングだ。

「ここまではいいんだよなー」と叶子は呟く。

「次なんだよねー」といいながら、シフトダウンして減速する叶子。

峠道でも長い部類に入るストレートが終わり、キツイ右の複合ヘアピンが迫る。


右コーナー。対向車もコーナー自体もブラインドになるため、経験者でも怖い瞬間だ。


コーナーミラーを一瞬みて判断を決める。

今までのグリップ走行から一転、慣性ドリフトに移行する。

対向車線にはみ出さずクリアしていく叶子。見事なコントロールだ。


「今日は上手くいった!‥」にこやかな顔とは裏腹に、運転はグリップ走行になっていた。

「チャレンジしなければ上手くはならないもんね‥ホント運転と人生似てる」

そう言いながら、肘をついて頬に手を当て窓の外をみる叶子。

左手のみで、ステアリングとシフトチェンジをしている。


いつも通りのことは、いつも通り過ぎるもの。

意識しないで日々流れていくものが、どれほど多いことか。


「この一年でなにか変わったかな?」といいながら、シフトアップして加速する叶子。

86と同じように前には進んでいる。

時もそうだ。

「あっ」叶子は何かに気づいた。

峠道も街に近づくにつれ、叶子のドライビングも安全第一にかわる。

86の奏でるサウンドも、静かになる。

周りの景色も、よく見えるようになる。


「もっと周り見る余裕つくらないとね!」

そう言いながら助手席の窓を少し開ける。

流れ込む風が叶子の綺麗な黒髪をさらっていくかのように靡かせる。

「きもちー!」






「叶子、窓をしめなさい!」

運転する父に注意される10歳の叶子。

叶子は父が峠道やドライブに行くのによくついて行った。


叶子は父の車と運転が好きだった。

無駄のない動き、流れるようなドラテク。

いったいどれだけ練習したら、ああなるのだろう。



そんな昔のことを少し思い出した叶子。

父がよく言っていた「失敗も糧、成功も糧」の言葉が今になって沁みてくる。


一年の終わりだからと嘆くことはない。

全ては自分の糧になっているのだ。

そう自分に言い聞かす。

前を見据える叶子。


峠を走る時、前には父が運転する車の幻影がいつもみえる。

叶子は、いつも父のゴーストカーを頭に描いて走っている。


「目標は、ないよりあるほうがいい!」

車は喋らないが、色々なことを教えてくれると叶子は思っている。


普通がイチバン、当たり前がイチバン。

でも、それらをこなすには基本が大事である。


「父さんは、みっちり基本やったってことだもんね」

ひとり納得する叶子。


まったりしたスタイルから両手てハンドルを握り、姿勢を正す。


エンジン音を一段階上げて、叶子の86が街中へと消えていった。






-おしまいー






また短編シリーズですが、読んでいただければと思います。

今年もあと2か月。

がんばりましょう!


そんな思いを込めて書いております。

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