孤独
孤児院には、時々大人が子どもたちを引き取りにやってきた。昨日も、2歳の女の子が1人、善良そうな仕立て屋の夫婦に引き取られていった。
そういうことが、だいたい2か月に一度くらいのペースであった。だが、老若男女がやってきても、誰1人天使に見向きもしなかった。
そういう時期だったのか、孤児院では次々と子どもたちが引き取られていって、最初15人ほどだったのが、この時には既に6人くらいまでに減っていた。引き取りやすい幼児が人気だったので、残っているのは物心のついた10代くらいの少年少女と天使くらいだった。
こうなると、人間は焦り出す。
なぜ自分はまだなのか、自分も「引き取られる側」に行きたい。焦りと怒りと戸惑いが入り乱れて、その矛先は一番向けやすい存在に集中砲火する。仲良く遊んでくれた子は、その品性を買われ、ほとんど引き取られていった。
1人の少女が、遊んでいた天使を押し倒す。
「あんたみたいな気持ち悪いのが来たせいで、
私たちのところに人が来なくなったじゃない!」
すると、触発された他の子どもが野次馬になる。
「そうだよ!」
「変なの。悪いモンスターみたい。」
「みんなでやっつけちゃえー!」
子どもたちはワーワー言いながら、天使に乗り掛かった。天使は何も言わず、とりあえず丸くなって怪我をしないようにした。
慌てて、数人のシスターが駆け寄る。
こういうことが、たまに起きるようになって、
天使はすっかり孤独になった。
「あんな子、絶対誰も貰ってくれないよ」
「気持ち悪いな!
病気うつされそうだからこっち来んなよ!」
その日から天使は1人で寝るようになった。
時々シスターが心配して交代で一緒に寝てくれた。天使を可哀想に思った年配のシスターは、皆に内緒でぬいぐるみをくれた。少し大人びた子や元々1人が好きな子も数人、天使と友達になってくれたので、さほど悲劇的な状況にはならなかった。