9.
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暗く湿った石の牢は、なんとなくオンコトの森に似ているなあと思った。
二年の間、そんなことばかりを考えていた気がする。
カナギは近づいてくる靴音を聞きながらそんな思い出に浸っていた。気怠さに身を委ね聞く靴音は、歩き方も含めていつもと違っていた。一つはもうすっかり顔なじみになった牢番のもの。もう一つは――今日はもう一つ、聞き慣れない足音があとをついてくる。
二つの足音はカナギのいる牢の前に来てぴたっと止まった。牢番にうながされ、もう一人いた何ものかが一歩前に歩み出た。薄暗い牢で足もとを照らすのにぶら下げて来たランタンをこちらに向ける。「カナギくん」と呼ばれると、とても懐かしい気持ちになった。
「すっかり大きくなって、全く別人のようだよ! ……っていうような再会を思い描いていたんだけど、そんなことなかったね。大きさはあの頃のままだ」
「ケンカ売ってんのか?」
「声がッ! ちょっとだけ大人っぽくなってるじゃないか! 声変わりの途中なんだね。良かった良かった」
何が良かったのかわからないが、二年ぶりに会った世話役の男は、笑ってるのか泣いているのかわからない顔つきで何度も頷いていた。
「あんたは全然変わらないみたいだな」
こんなにすんなりと言葉が出てくるとは意外だった。彼が二年前と同じ調子で話しかけてくれたからだろうか。カナギはくすぐったいような申し訳ないような気持ちになりながら世話役の男と視線を合わせた。
世話役の男はもう一度だけ頷いた。
そうしてからごく自然に右の手を差し出した。
「迎えに来たよ。さあ、ウルハシへ帰ろう」




