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愛情
化け物から出てきたのはなんと生贄として捧げられた愛娘だった。
なぜ化け物から出てきたのかという疑問は一切浮かばず、失ったはずの娘に駆け寄る。
「エルラ…、エルラ…!」
愛娘との再開。それは心から願っていたことだった。
生贄は国民からランダムで選ばれていた。王直属護衛軍団長の娘であっても。
王に何度も、何度も見逃してくれと頼んだが無駄だった。
そして幼いエルラは生贄の崖に…
「ぉとうざ…」
「大丈夫か?怪我はないか?」
エルラの無事を確認していると
心臓を貫かれる。
「カハッ……」
そのまま黒い液体が吹き出し男を取り込んでいく。
「…エル………」
消え行く意識の中で
「お父さん、ごめんなさい…ごめんなさい…」
と聞こえるはずのない、震えた声が聞こえてきた。
あぁ、お前にはいつも叱ってばかりだったな。
今は特別に怒らないでおこう。
だから
仕事で全く愛情を注げなかったこの俺を
お前を守ってやれなかった情けない俺を
許してくれ