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喜劇友を待つ男  作者: 美祢林太郎
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8 外国人

8 外国人

「エクスキューズミー」

えっ、外国人さんかよ。

「オー、イエス、イエス」。

あんたも「善人アプリ」を持っているのね。えっ、持ってない。よかった。あれ日本だけなの。たしかに日本人と外国人の善人面は違うだろうからね。早く世界で通用するものを開発して欲しいね。いや、いや、おれの顔が万国共通のお人よし顔だったらなさけない。もしかすると近々「善人アプリ」主催で、「世界善人顔コンテスト」を開催するかもしれないな。おれ推薦されても絶対に出場しないからな。

「クッジュテルミー・・・・・・・」

「オーイエス、イエス」

何言ってんの? とりあえず、国際親善で外国人には親切にしなければならないからにこにこしているけれど、心の準備がなかったから、何言っているかわからないよ。それかと言って卑屈になるのは日本人の悪い癖だよな。堂々として応対しないと。でもどうやって応対すればいいんだよ。

「アイベッグユアパードン。クッジュスピークモアスロウリイ」

言えたぞ。立派なものだ。おっ通じた。これもNHKラジオ英会話の成果だな。

「オウ、オウ、ソウリ―。クッジュ・・・・・・・バス・・・・」

なんだ、バスに乗りたいんじゃないか。バス停を教えてくれって言ってるんだな。

「シュア」

おっ、われながらかっこいいね。素人じゃないね。周りの奴らが我々を見て、おれが英語が使えるのに驚いてるぞ。普通の日本人だったら「オッケイ、オッケイ」だぜ。英会話勉強しているおれなんか「シュア」だものね。なんならその後に「サートンリー」まで付けちゃうぞ。

友だちはまだ来ないのか。おれの雄姿を見ないのかよ。見たらさぞかし驚くぞ。さてとバス停だったよな。下に降りて、外に出て、英語で説明するのは面倒だな。習ったんだけどな。咄嗟には出てこないよ。よしここは「レッツゴー」だ。友だちよ、早く来てよ。おれの雄姿を見てよ。

一抹の不安はあったけど、やっぱりバス停で正解だったな。えっ、何番線だよ。わからないよ。どこへ行きたいんだ。なにかしゃべってるよ。えっ、スマホを取り出したよ。スマホに向かって英語喋ってるよ。おっ、日本語が出てきた。なんだ自動翻訳アプリを入れてるんじゃない。あるなら早く使ってよ。勝鬨橋に行きたいのね。それなら、えっ15番線、アプリでわかるなら聞かなくてもいいじゃない。おれよりアプリの方が詳しいんだから。「オオ、サンキュウ、サンキュウ」。

大事なのは、やっぱり人間の温かみなんだね。自動翻訳アプリには温かみがないものね。コミュニケーションはフェイスツーフェイスだよ。もっと英会話の勉強しなくっちゃ。

ああ、もう6時半になってしまった。


つづく

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