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バグ#08 理解不能



「零二、眞由美さんの卵焼きちょうだい」


「またかよ…俺の好物なのに。んじゃ美沙希さんの唐揚げくれ」


「いいわよ。んっ」


「サンキュー(パクっ。…ん、やっぱ美味いな。ほれ、卵焼き」


「…(パクっ。……いつも通り美味しいねぇ。流石眞由美さん」



「「………………」」



 

 お弁当を食べ始めてすぐ、璃空がおふくろの卵焼きを求めてきた。

 代わりに俺は璃空の母親である美沙希さんの唐揚げを要求。

 いつも昼飯は大体璃空と二人、たまにクラスメイト何人かが混ざってきて一緒に食ったりもする。

 で、今みたいなおかずの交換も毎度お馴染みのやり取り。

 もう昔っからこれなので、今更恋人同士がやる「あーん」だとか、相手の使ってる箸で間接キスだとかなんて、二人っきりでもクラスメイトがいてもお互い気にすることも無く。


 ただ今日はちょっと、いや、かなり違った…もちろん俺と璃空以外で今この場にいるのが愛鈴紗と仁科さんだっていうのもあるんだけど、それより何より俺の視界端にあるメーターがもう激しくて激しくて…ミュージックプレイヤーのサウンドレベル表示並に動いてるんですが、どうしたらいいですかね?

 あ、それとそっちばっかり気になってて置いといたんだけど、実は俺を含めてみんなのバー表示も減ってたんだよね…腹が減ると緑のバーが、勉強して疲れると青のバーが減るらしい。


「…璃空先輩……いつもお兄ぃとそんなことしてるんですか………」


「そうだけど?」


「………お兄ぃぃい?」


「え、ちょっ、だからその目はヤメてっ!?」


「璃空さん、それは妻である私の役目だからもう止めてね?」


「は?止めるわけないじゃない。これはいつもお弁当を一緒に食べてあげてるワタシの特権よ」


「食べてあげてるって…ヒドくね?」


「なによ、ホントのことじゃない。文句あるの?」


「いや、別に文句とかはないけど…イヤならイヤで友達と食うから無理しなくてもいいぞ?」


「そうですね、イヤイヤいるならもう来なくてもいいですよ、璃空先輩っ」


「これからは妻である私がいるんだから璃空さんはもう御役御免だよ?」


「はぁっ!?なんでアナタ達にそんなこと言われなきゃいけないのよっ!」


 ……はぁぁぁー……お弁当くらい落ち着いて静かに食べようよ…。

 っていうかもう少し仲良く出来ないのでしょうかね…何でこんなになってるの?俺が悪いのか…?

 でもとりあえずアレだな、まずは仁科さんを何とかしないと…何故か身の危険を感じてしまう。

 今後の安寧な学校生活のためにこれだけは最優先で解決するべきかと。


「ちょっとみんな少し落ち着こうや。話もしたいしまずは弁当食っちまおうって」



「「「…………」」」



 ギャーギャー言わなくなった代わりに険悪ムードで弁当を食べ始める三人。

 いや、そんな顔して食べてたら折角の美味しいお弁当も美味しさ半減して勿体無いでしょ…。

 

 結局こんな感じのまま全員弁当を食べ終わって、いざ話を切り出そうとしたら……仁科さんが徐ろに立ち上がり俺の隣まで来て座り直し、腕を絡めてピタっとくっついてきた。


「えーっと…仁科さん?何をしているのでしょうか……」


「もうっ、仁科さんとかそんな他人行儀じゃなくて、緋依って呼んで?あ、いつもみたいにクリムでもいいよ?」


「仁科先輩っ!お兄ぃから離れてくださいっ!」

「緋依ぃ!なに勝手に零二とくっついてるのよっ!」


「ちょ、ちょっと待て!みんな落ち着けっ!まず仁科さんは俺から離れてっ」


「…?なんで?」


「いや理由はいいからとにかく離れてっ!」



「「いい加減に…っ!」「離れてください…っ!」」



 璃空と愛鈴紗の協力のもと、やっとの思いで仁科さんを引き剥がせた…ホント何気に力強いのよ、この娘は。

 階段で話してた時もそうだったし。

 身体は小さいのにどこからそんな力を出しているのかと。


「ふぅ…。サンキューな。愛鈴紗、璃空」


「…別にお兄ぃのためにやったわけじゃないし」


「ワタシの許可なく零二に触れるなんて許されないからね」


「どうして璃空先輩の許可が必要なんですかっ」


「当然じゃない、零二は昔っからワタシのモノなんだから」


「お兄ぃはわたしのお兄ぃなのっ!璃空先輩のじゃないっ!」


 おぉぉ…愛鈴紗がここまで言ってくれるとか。

 でもやっぱり複雑だ…だってそれ、俺がゼロになったからだよな?お兄ちゃんちょっと悲しい……。


「二人とも何言ってるの?私の旦那さまに」


「それ!それのことだけど仁科さん、俺は今確かにゼロの容姿になっちゃってるけど、ここはゲームの中じゃないから君の旦那ではないんですよ?」


「…?ゼロも何言ってるの?」


「え?俺なんかおかしいこと言ってる?」



「「言ってない」」



「だよな…良かった」


「緋依、アナタ自分がオカシイこと言ってるって自覚ないの?」


「…?どこがおかしいの?」


「仁科先輩…一度病院で見てもらった方がいいですよ……?」


 愛鈴紗さん、それはちょっと言い過ぎのような…。

 でもこれ完全に区別ついてないな…どうしてこうなった、って俺がこうなったから俺のせいか。

 あーもーせめて容姿だけでも戻ってくれないかな…いや、全部戻してほしいけどさ。 


「とにかく!仁科さんは現実とゲームの区別を付けてくださいっ。ゼロはゲームの中だけです!」


「目の前にゼロがいるのに何を区別するの?」



「「「……………」」」



 ダメだコレ、何を言っても通じない…理解してくれない……お願い誰か助けてっ!





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