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バグ#07 昼休みの邂逅



 …結局、俺の説得も虚しく空を切り、朝のHRが始まる直前までこのままだった…。

 ゲーム内だったら平気で抱き返せるのに、これじゃ生殺し…ゲフンゲフン。

 と、とにかく今日一日かけてその認識をどうにかしないと、と考えを巡らせながら二人で教室に戻った…今度は俺が手を引かれながら。


「ちょっと待って、流石に手繋ぎながらはヤバいってっ」


「ヤバいって…何が?」


「いや、だからみんなに誤解される…」


「…?誤解もなにも私たち夫婦でしょ?」


 いやもうホント勘弁してくださいっ、これ以上厄介事は増やしたくないんだよぉぉお!教室出る時も戻る時もこうやって手繋いでたら確実にクラスメイト全員そういう関係だって思うでしょっ。

 昨日まで全然そんな雰囲気も無かったのにいきなりこんなことしてたら誰でもオカシイってなるじゃないですかぁ!

 ただでさえこんな容姿になって注目浴びてるのにこれ以上掻っ攫う気は毛頭無いんだってばっ!

 今まで平穏なスクールライフ、別にぼっちでも陰キャでもないけど至って普通にクラスメイトや幼馴染と接してきたのに、そこへ波風立てるようなマネなんかこれっぽっちも望んじゃいないっ!


「それについては後でじっくり話すとして、とにかく今まで通りにしててほしいんだけど」


「うん、だから今まで通りだよね?」


 話が通じていない…これのどこが今まで通り、ってゲームの中のことかっ。

 …うん、仁科緋依っていう娘はいろいろとヤバいってのは分かった。

 分かっただけで何も解決出来ていませんがねっ!

 もうこうなったら多少強引にいくしかないか…。


「あっ…」


 無理矢理繋いでた手を引き離して先に教室のドアを潜り、素早く自席に戻る…手を離した時に哀メーターが凄い勢いで上がったのが一瞬目の端に見えたけど、そこは心を鬼にして見なかったことにした。


 自席に戻ってすぐ先生がやって来て朝のHRが始まった…出席を取った時、先生が俺を見て怪訝な顔をしてたけどスルーしてくれた、そこはやはり大人の対応というべきか。

 単に突っ込むと面倒だと思われたような気もするけど。


 その後授業が始まって─現在昼休み。


 それまで午前中の各授業間の小休みになる度、仁科さんと璃空が俺の席まで来るもんだから、何気にそれがバリアみたいになってたらしく、他のクラスメイトはそれを遠巻きに見ているだけで誰も近寄っては来なかった…普段話してる男の友人達も遠慮してだかどうかは分からないけど、話し掛けてくることはなく聞き耳を立てているだけだった。

 話してた内容はというと…いや、話にはなってなかったな、仁科さんと璃空がお互いどういう関係だとか言い合ってる感じで、たまに俺に同意を求められて相槌打ってたってだけで…。

 その間の二人のメーター変動が凄まじかったけど。


 で、今は昼休み中だけ開放されている屋上で昼食を取るべく来ているわけなのだが……。


「…なんでアナタたち二人がいるわけ?いつもはワタシと零二だけなのに」


「璃空先輩はもう来なくていいです、今日からわたしがお兄ぃと一緒に食べますから」


「愛鈴紗…見事に開き直ったわね……」


「ところで…こちらの方はどなたです?」


「私は妻ですが何か?」


「…………お兄ぃ、どういうこと?」


「……愛鈴紗さん、その目は勘弁してください……」


 絶対零度の魔眼アブソリュート・アイはゲーム内だけにしてほしいです…流石に現実では復活出来ませんので…。


「はぁ…。彼女はね、仁科緋依。ワタシと零二のクラスメイトで零二がやってるゲームの中での嫁なんだって」


「ご紹介にあずかりました、ゼロの妻、クリムですっ」


「あぁ、お兄ぃがやってるあのゲームのですか。それで?ここにいる理由にはなってないですよね?」


「…?旦那さまの側にいるのは普通ですよ?」


「旦那さまって…。いや、だからそれゲームの中の話ですよね?」


「愛鈴紗、この娘ちょっとオカシイから」


 璃空もそう思ってくれてるのか…俺だけじゃなくてよかった。

 やっぱゲームはゲーム、現実は現実だよな…こんなナリになった俺が言うのもなんだけど。

 俺の存在自体がゲームとリアルで混同してるっていう…。


「…まったくもう、なんでこう次から次へと…(ブツブツっ」


「ま、来ちゃったものはしょうがないし、お弁当食べよ」


「そうするか…。いただきます、おふくろ今日もありがとう」


 いつものお約束で弁当を作ってくれたおふくろに感謝しつつ、とりあえずこの面子で昼食を取ることになった…相変わらず視線を集めているのは教室にいる時とほとんど変わらないんだけど、何故か男子生徒達からは歯軋りが聞こえてくるのは空耳だろうか…。





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