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バグ#01 ゼロ、現界


 

―・―・―・―・―・―・―・―






 ──シャララ〜ララ〜♪タララララ〜♫



 スマホにセットしていた『ファナテクシア』のOPが流れてきて目を覚ました。

 朝から素晴らしい曲を聴いてスッキリ爽やかな寝覚めだ。


 ベッドから上半身だけ起こして伸びを一つ、それからスマホを操作して音楽を止めた。

 時間は6時30分、いつも通り朝の支度をして余裕で学校に間に合う時間。

 完全に身体をベッドから抜き出し、さっぱりしようと一階にある洗面所へ向かおうとして部屋の中を歩く途中に、壁に立て掛けてある木枠の細長い姿見に映った自分が目の端に入り込む。

 いつもはこれといって気にしないのに、何故か今日に限って鏡に映し出された自分自身を見てしまった。


「…………うん」


 ………うん?いや、まぁ見慣れた姿だよな。


「…………んん?」


 昨晩も見てたしなぁ…クリムと二人で拠点にしてるマイホームにあるデカい姿見で。


「……………んんんんっ!?」


 ちょっと待て、ここは現実で俺の部屋だよな…?その姿見になんでゼロが映ってるんだ??しかも何か視界の右上端にゲームみたいな緑と青のバーまで見えるんだがっ!?

 首を左右に動かして視界をずらしても付いてくるし…なんだコレっ!?


「………いやしかしやっぱゼロはカッケーな」


 細長い姿見に映ったゼロを見て自画自賛してみる。

 何となく声までゼロになってる気がするな…ということはつまり……。


「………現実でバグるとか、普通逆だろ………」


 ゲーム内で現実の姿になるならともかく、現実でゲームのマイキャラの姿になるとかどんな仕様だよっ、あり得るわけないだろっ!あ、そうか!この姿見がおかしいのかっ!なら洗面所の鏡で確かめてみるべきっ。


 早速部屋から出て一階への階段を降り、洗面所の中へ駆け込む。

 洗面台の正面鏡を見ると──やっぱりゼロだった。

 まぁ、視界端のバーが消えてない時点で分かりきってましたがね。

 ということは…『ファナテクシア』と同じなら緑がHP(生命力)バーで青がMP(精神力)バーってことですかい。


 なんでこんなことになってるんだ…イミフ、と洗面台の前で呆然としてたら、洗面所のドアが開いた。



「「……………」」



 顔を見合わす二人。

 次の瞬間、俺は目の前にいる義妹─空閑愛鈴紗くがありさの口を手で塞いだ…我ながら見事な動きだったと思う、まさにゼロのような敏捷性。


「キャァムムムムムンンンーッッッ!!」

「ヨーシヨシ落ち着けー落ち着けよぉー。はい深呼吸ー」

「(コクコクコクっ」


 ドアを開けて見知らぬ人がいたら叫びたくもなりますよねぇ。

 一瞬でその思考に辿り着いた自分を称賛したい、流石は俺…俺?この場合ゼロか?まぁどっでもいい、とにかく最悪の事態は回避出来たということで。


 ムダにイケボなゼロの声で愛鈴紗を落ち着かせようと深呼吸させる。

 俺が言ったことを理解してくれたのか、何回も頷いてる…あ、違うな、これ恐怖心からか。


 口を塞いでおいて深呼吸もクソもあったもんじゃないが、そこは置いといてまずは落ち着いてもらわないといろいろとマズい…既に起きているであろう義母が、愛鈴紗の叫び声で駆け込んできて更に面倒なことになるのは明白だからな。


「まず最初に言っておくけどな、こう見えて俺はお前の兄だから。そこは分かってほしい」


「………(じとぉー」


 うん、そのジト目は全然信用してないな。

 そりゃ当然ですよねー、っていうか俺自身もまだ現状を理解出来てないし。


「まぁ信じられないのは当然だよな。じゃあ証拠な…証拠……あー、愛鈴紗が義妹になった時の約束、覚えてるぞ。妹になったからには何があってもお兄ちゃんが愛鈴紗のこと守ってやるー、ってな」


「………っ!?」


 お、少し涙目になってた目を大きくして驚いてるみたいだ、これで少しは信用してもらえたか?

 っていうかこれ、俺がこっ恥ずかしいんだが…自爆気味になってるし。


「……落ち着いたか?手、放しても叫ばないか?」


「………(コクっ」


「よし、じゃあ手、放すからな……」


 ゆっくりと愛鈴紗の口から手を外す。

 やっぱりちょっと苦しかったのか、すぐに息を吸い込んで深呼吸をした…鼻は塞いでなかったから大丈夫だと思ってたんだけど。


「ぷはぁー…すぅぅ……はぁぁぁー………」


「急にゴメンな…。とりあえず信用してくれて助かったよ」


「………ホントにお兄ぃなの?」


 そう言って、じぃぃー…っ、と睨み気味に見つめてくる愛鈴紗。

 そんなに見つめられるとお兄ちゃん照れちゃうよぉ…じゃなくて。


「ホントホント。俺の名前は空閑零二、公立一ヶ嶺高等学校2年A組、出席番号7番、誕生日は10月22日、趣味はゲーム、好きな食べ「わかったもういい」………最後まで言わせてほしかった……」


「で?いつの間に整形したの?」


「あーっと…アレだ、寝てる間に宇宙人が来てキャトルミューティレーションだかエイリアン・インプラントだかで身体をイジられたらしい。朝起きたらこうなってたから」


「ふーん……。ま、まぁ、いいんじゃないの?前のお兄ぃより三割くらいマシになってるし」


 おおぅ…ピンポイントで三割増し当ててきたぞ……義妹侮り難し。

 それはそうとですね…愛鈴紗の頭上にも二本のバーが見えてるんですが、何故でしょうかね??


 それともう一つ、視界左側に見慣れない表示が……。



 喜:■■■□□□□□□□

 怒:■□□□□□□□□□

 哀:□□□□□□□□□□

 楽:■□□□□□□□□□ 

 恥:■■□□□□□□□□

 驚:■■■■■□□□□□



 どうやら本格的にリアルでバグっているらしい。






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