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バグ#11 表情筋は仕事放棄



 思わぬ所で救出劇を演った俺は今、救い出した姫である睦月先輩と適当に街中を歩いている…何故か手は繋いだままで。

 いや、だって先輩が離してくれないんだもん…俺が離そうとして手を握る力を緩めたら、反対に先輩がギュって力を込めてきて、無言で俺の顔を隣から見上げてくるんですよ…表情は変わらないんだけど、俺が手を緩めたり握ったりする度メーターが、



 喜:■■□□□□□□□□

 怒:■■■□□□□□□□

 哀:■■■■■■■■■□

 楽:■■□□□□□□□□ 

 恥:■■■□□□□□□□

 驚:■■□□□□□□□□



 こうなったり、



 喜:■■■■■■■■■□

 怒:■□□□□□□□□□

 哀:■■□□□□□□□□

 楽:■■■■■■■■■□ 

 恥:■■■■□□□□□□

 驚:■■■□□□□□□□



 こんなんなったりするんですよ…?この人表面上は微動だにしないのに、内面ではこうも激しく揺れ動いてるんだって分かっちゃったら、なんかもうこっちが照れてきちゃってどうしようもないんですがっ。

 ナニソレ可愛いってこっちの顔がニヤけるのを我慢するのが大変なんだよ…。


 バレない様に手を繋いでない反対の手で口元を隠そうとすると、それをまた見上げて「コテっ」って無表情で首だけ傾げるんだから、更に追い打ちかけられてるっていう。

 メーター表示では不思議っていう感情は明確に分からないんだけど、表情変えなくてもそれはその態度ではっきり分かってしまうからの追い打ちなわけで。


 このままだとなんか俺が持たないような気がしてきたから、ちょっと何とかしよう、うん。


「えーっと…睦月先輩?俺の事知ってますか…?」


「……(フルフルっ」


「デスヨネー」


 先輩…知らない人と手繋いじゃダメって教わってないんですか…?あ、いや、付いてっちゃダメか。

 でも今の状況正しくソレですよね?なんで黙って俺に手を引かれて付いてきちゃってるんですかっ?いくら助けられたからと思ってても普通に知らない人に付いてっちゃダメですよっ、危なっかしいなぁっ。


「まぁ制服で同じ学校ってのは分かってると思いますからギリセーフってことで…。んじゃ改めて、俺の名前は空閑零二、公立一ヶ嶺高等学校2年A組、出席番号7番、誕生日は10月22日の天秤座、血液型はO型、趣味はゲーム、好きな食べ物は…って、愛鈴紗がいないからノンストップだな、これ…」


 いやホント俺もなに初対面の人に個人情報全開示しようとしてるんだか…睦月先輩のこと何も言えないアホな俺。


「………レイ…。……覚えた………」


「え?何か言いました?」


「………(フルフルっ」

 

 またしても何か聞こえたような気がしたんだけど、睦月先輩は何も言っていないそうな…首を振って全否定。


「と、まぁこんな感じですけど、俺の事は分かりましたか?」


「………(コクっ」


「それは良かった。それはそうと先輩って…ホントに喋らないんですね」


「…………」


「ああっ、いやっ、別に責めてるとか悪いとかそんなこと全然思ってないのでっ。俺も人伝でしか聞いたことがなかったもので…」


 あ、焦った…一気に哀メーター上がったし。

 これ、この表示無かったら絶対気付かなかったよな…だってこれが悲しそうな顔なんて誰も思わないだろうし、変化無しなんだから。

 少しくらい目元や口元が下がったりしたら、見慣れた人ならその微妙な変化を読み取れるくらいにはなれるんじゃないかと思うけど、ホント変わらないんだよ…表情筋が完全に仕事を放棄しているみたいな、そんな感じ。


 この人と話す時はこの表示を注視しながらにしよう、うん。


「ところで先輩はあんな所で何を…って、本屋の前だったんだから本買いに来たに決まってますよね。あ、じゃあ何の本を買いに来たんですか?」


「………(ゴソゴソっ」


「……あーなるほどー………」


 鞄から本を出すために手を離して、中から本屋で買ったのであろうモノを取り出し俺に見せてきた。


 ……『無口な先輩が可愛すぎて困っています』という太字のタイトルと、モエモエーな表紙イラスト……見紛うことなきラノベでした、ハイ。

 っていうかこんな道端で堂々と見せびらかしてもいいんですか?先輩っ…あ、ちょっと恥メーター上がった…やっぱり恥ずかしいんじゃないですか。

 それでも無口は貫き通す、と…それはそれで凄いなぁ。


「………」


「え?」


 そそくさと鞄に本をしまった後、またすぐ俺の手を握ってきた睦月先輩。


 えーっと…エラい懐かれちゃいました?俺……。

 いや、だけどなんて言うか、全く悪い気はしないというか、逆に嬉しいんですけど…そしてドキドキが止まらない俺。


 目的地も決めずただこうして歩いているだけで、お互い嬉しいと感じている二人なのでした…顔に出ているのは俺だけだろうけど。





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