バグ#10 先輩救出
「先輩!お待たせしてすみませんっ」
いかにも待ち合わせしてましたー、みたいな体で睦月先輩の側まで来た…来てしまった。
俺に何が出来るのか分からないけど、来たからにはこの場を何とか…せめて睦月先輩だけでも無事逃げられるようにしないと…。
近くで見ると写真の通り、ランキング上位に嘘偽りの無い美少女だった…身長は仁科さんより少し高いくらいだから、それなりに俺との身長差がある。
そして俺がすぐ側まで来ても、その表情は全くと言っていいほど動いていない…こちらもどうやら聞いてた通りみたいだ。
が、しかし、近くに来たことで表示されたメーターはというと……
喜:□□□□□□□□□□
怒:□□□□□□□□□□
哀:■■■■■■■■■■
楽:□□□□□□□□□□
恥:■■■■■■■■■■
驚:■■■■■■■■■■
……MAX表示初めて見た。
哀恥驚だけってことは…これが怖いっていう感情表示なのか?
表情からはそんな感じを全く受け取れないんだけど、よくよく先輩を観察してみると肩の辺りが僅かに震えている…小刻みに。
あと、何か言おうとしてたのか、唇も微妙に動いてるような気がするし、俺の勘違いかもしれないけど顔が引き攣ってるようにも見えた。
やっぱり怖かったんだと思う…来て正解だったか。
「ん?誰だお前…」
「あ、はい、同じ学校の後輩で待ち合わせをしてたんですが…あの、もしかして先輩が何か失礼なことしちゃいました…?」
「いや、別にそういうわけじゃねーけど」
「すみません、先輩ってこの通り無口なうえに感情表現が上手く出来ない人で…だから何か失礼があったんじゃないかと思って」
「お、おう…そうなのか」
「あー、だからさっきから何も言わないし、表情も変わらなかったのか…」
…うん、ナンパ確定だな。
この二人、先輩の上っ面しか見てないし。
ちゃんと見たら怖がってるって何となくでも分かるだろうに…。
けど、すぐ手を出してくるんじゃなくて話を聞くタイプみたいだから、これなら何とかなりそうだ。
「はい、そういう人なのでなるべく一人にならないよう伝えてあったんですが…。あ、先輩、もう他の人は集合してるんで行きますよ。時間もあまりないですし」
「………(じぃぃぃ……」
「それじゃすみません、これで失礼します」
男二人組に対し下手に出るよう挨拶をして睦月先輩の手を引き、この場からさっさと去る。
少し行った先でチラっと振り返り置いてきた二人を見ると、俺の説明で納得したのか次の獲物を探すように俺達と反対方向へ歩いていった。
「……ふぅぅぅー………緊張したぁ………。あ、睦月先輩、大丈夫でしたか?」
「………ぁ…」
「…?」
「……(コクっ」
今一瞬声が聞こえたような気がしたけど…気のせいか。
頷いたところを見ると、本当に大丈夫みたいだ…って、まぁ大丈夫って聞いた時点で…
喜:■■■■■■■■■□
怒:□□□□□□□□□□
哀:■■■□□□□□□□
楽:■■■■■□□□□□
恥:■■■■□□□□□□
驚:■■■■■■□□□□
…こうなってたからもう問題は無いな、とは思ってましたが。
喜んでもらえてるみたいで何よりです、無表情なのは変わりませんが。
これが喜んでる顔なのか…うん、これ誰にも分からないんじゃないかな?『不動姫』って呼ばれるのも分かる気がする…けど、やっぱり今の俺には通じないからその二つ名、俺には適用されませんねっ!顔に出ない分、感情のブレ幅が他の人より激しい気がするし。
とりあえず、二人とも無事切り抜けられて良かったということで!




