ロケット人間 3
診察日:2187年4月13日(金)
氏名(仮名):トマソン・ローマン(17歳)
性別:男性
出身地:アメリカ合衆国
症状:
病歴:なし
アレルギー:なし
診療経過
彼があの状態で命を維持している謎について、僕は仮説を二つたてた
①身体への負担を超回復で打ち消している
もしくは
②身体の細部まで強化されており、過剰な負荷にも耐えられる
これらの仮説を検証するため、以下の処置を行った
3月25日から現在に至るまで、彼には脳内物質の分泌を抑える薬を与えた
もしも脳内物質の分泌を抑えたことで睡眠をとったり、身体への負荷を減らすことができるのなら御の字だ
また、これによって身体が超回復しているのか、それとも強靭な耐久力なのかがわかりやすくなるだろう
さらに3月26日~4月10日まで彼には極力運動を控える、もしくはしないようベッドで横になる生活をお願いした
食事は最低限の栄養にとどめ、カロリー消費を抑えるよう管理士に指示した
これは彼の身体に起きている現象が運動と食事によって変化するのかを調べるためである
結果から述べると、僕の仮説は当たらずとも遠からずだった
まず、脳内物質の分泌を抑える薬だが、はじめの頃は効果があったものの、今では減少した分を補うかのごとくさらに大量分泌しはじめたため危険と判断し中止した
また、長期のベッド生活にも関わらず筋肉量が落ちることはなく、4月11日に行った体力測定では以前と変わらない結果を残した
食事制限では食事回数を日に三回までにし、最低限の栄養とカロリーのメニューで2週間過ごしてもらったところ、なんと便と尿をほとんどしなくなった
あとで調べたみたが、彼はこの二週間で少ないカロリーと栄養でも長期活動ができるよう、摂取したものを極限まで吸収するようになっていた
これらの経過結果を受け、僕は彼の細胞組織を一部提供してもらいある実験を行った
彼の細胞に熱を加えたり、電気を通したり、化学薬品をかけるなどをして彼の細胞を破壊する実験だ
すると彼の細胞は損壊し始めるとともに素早く順応をはじめ、さらに強く、最終的には全く効果がないところまで進化してしまった
もっとも早く細胞が順応した記録は3分37秒である
これらの結果から、僕は彼が「過酷な環境に即順応し進化する身体」であると判断した
そして、彼の寿命が短いという事実も発覚した