表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

ロケット人間 2

診察日:2187年3月22日(木)


氏名(仮名):トマソン・ローマン(17歳)

性別:男

出身地:アメリカ合唱国

症状:過剰な脳内物質の分泌及び身体能力の異常発達

病歴:なし

アレルギー:なし


来院理由

前回の検査結果を聞くため来院

検査後の日常生活は特に問題なしとのこと


検査結果

身長:178.6センチ

体重:186.8キロ

体脂肪率:6.8%


アドレナリンをはじめとするアミノ酸系ホルモンのほか、成長ホルモンをはじめとするステロイド系など、様々なホルモン分泌量が常人の3~5倍測定された

そのため、常時心拍数が100~150/分、血圧も200前後/140前後と高血圧

睡眠時間が短いのは常時興奮状態であるためと過程する


中略


17歳男性の平均的体躯とほぼ同じにもかかわらず筋肉密度、骨密度ともに高く、それによる異常な筋力と体重を測定している

過剰に分泌される脳内物質(成長ホルモン等)が原因と思われるが、ここまでの状態になるのは例がない


体力テストでは数々の国際記録を軽々と更新し、すべての測定が終わっても疲れた様子は見られなかった


中略


一日の消費カロリーが2万~3万カロリー

新陳代謝のみで1万前後のカロリーを消費している


中略


脳の各種検査は常人と変わりなし

学力テストは一般平均よりも高く、睡眠不足による集中力、記憶力の低下はみられない模様


追記

脳科学チームが彼に興味があるとのこと


以下、問診録音より一部抜粋、記載する


「まあ簡単に説明すると、君は馬力が高くて燃費の悪い車みたいな身体ってことです。」

「それは良いか悪いか、どっちなんですか?」

「不安材料がなくもないですが、いまのところ良いと僕は判断します。」

「不安材料?」

「一つは過剰に分泌されている脳内物質です。これらは心と身体に様々な影響を与えます。その結果、君はほとんど眠らない、というより眠れないし、身体が強くなっている。ここまではわかるかい?」

「ええ、はい。」

「よし。しかし、本来これらの脳内物質は多すぎても少なすぎてもダメなんだ。気持ちが高まったり沈んだり、身体に不調がでたりするんだ。まだ君にはその傾向が表れていないがね。」

「ということは、これからその症状がでたりするかもってことですか?」

「その通り、呑み込みがはやいね。いまの君は奇跡的にいい結果のみが表れていることが今回の検査でわかったんだ。もしかしたら今後悪い結果もでてくるかもね。」

「そんな、、、じゃあ、まだ良いか悪いかわからないじゃないですか!」

「まあまあ、落ち着いて。良い話もあるんだ。おそらくだけど、君の病気は脳内物質の過剰分泌による身体の異常発達じゃあないんだよ。つまりだ、君の病名はね、、、。」

「は、はい、、、、」

「まるでレースカーみたいだ病だよ。」

「、、、、、、。」



「お母さま、彼の身体は素晴らしい可能性を秘めています。」

「可能性?」

「そう可能性です。僕の予想では彼は成長するにつれて身体能力がどんどん高まっていくはずです。どこまで成長するかは予測できませんが、数年後には引く手数多のプロスポーツ選手、もしくは国を守るエリート軍人、もしかしたら災害から人々を救うヒーローにだってなれるかもしれない。」

「それは、、、逆に言えば息子を危険にさらす、、、、ということでもあるのではないですか?」

「それを決めるのは息子さんとご家族ですが、まあ今は話がそれるのでやめましょう。実は先ほど話した不安材料のことでもうひとつお話しがあるのです。」

「、、、、命にかかわることですか?」

「やはり心配ですか?」

「当たり前です、、、息子に席をはずさせたのは、、、そういうことなんでしょう?」

「残念ながらその通りです。」

「、、、、、う、、うう、、、ぐすっ、、、」

「どうぞ。」

「、、、、ありがとう。」

「単刀直入に話します。彼は死んでもおかしくない状態です。いや、むしろ生きていて、かつ精神、肉体ともに壊れていないことがおかしいのです。今回の検査で彼の身体能力が向上している理由はわかりました。しかし、休みなく働かされる身体や脳がその負荷に耐え、生きている理由を見つけることはできませんでした。」

「、、、、、、、、?」

「つまりですね、彼がこの状態で生きているという謎を解き明かさない限り、彼が突然倒れたり、死に至るような怪我をしたときに対処できないのです。」

「、、、息子に怪我をさせるな、ということですか?」

「それもありますが、いますぐに入院と追加検査をおすすめします。」




入院日:2187年3月23日(木)


治療方針

薬による脳内物質の抑制及び食事制限

激しい運動は控え、主にベッドで横になって過ごすことで筋力の減衰経過を観察


検査内容

経過をみて検査

内容は前回の検査に内臓系検査、脳波検査等も追加すること


追記

患者には命に危険がないことを伝え、不安にさせることのないよう

また、緊急時に患者を拘束、搬送できるよう力のあるスタッフを配備

家族にも遺伝子検査に協力するよう要請すること


以上


次回診療予定

2187年3月24日


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ