序章 第3話 「いつまで続く序章というのは」
暗い、当たり前だが人が通らないから整備もしてない、水たまりトラップやレンガ壁剥がれも目立つ。
しかしながらだがおそらく昔ここの近くに住んでいた人が利用はしていたのだろう。
この通称「異世界トンネル」については正式なトンネル名はどこも書かれていない、おそらく廃墟にしてからずいぶんと経って自然に帰ったんだろう。
この先もずっと真っ暗、全長がどこまであるのか進むほど不安と寒気が出てくる…
「なぁ?本当にこのトンネルは異世界に行くのかマジで」
「わからない!だから確かめてみるしかないのよ!気合を入れて!」
「お前は本当に昔からどんなときでもうるせぇほど元気だな」
やばい…寒すぎる、【はーくしょん】なんだ廃トンネルってそんなに寒いのか…思わず鼻がムズムズと寒気が進むほど寒くなってきたのだ。
「今私、拓巳に褒められた気が」
「気のせいだ、というよりやっぱトンネル内凍るほど寒くないか?」
「そういえばそうだね、やっぱ山奥だからかな?」
「どう考えてもおかしいだろ…つららとかそんなのねぇのに氷点下くらいに寒すぎる…そろそろこれ冗談抜きでやばいやつじゃね?というよりお前学校指定のジャージの中にブラウス着せて上着の4枚と体操ズボンで絶対寒いだろ?見ていて寒気がする」
俺はカバンにたまたま入っていたマフラーと上着をつけて最大7枚でもこのマジモンのトンネルにはかなわないのに…まあ元から寒がりなのも原因のひとつである体質のせいでもあるし。
手もまさかこんなところまで行くとは想定しなかったから手袋などもっておらん、だからポケットに手を突っ込んだがこの異常な寒さに負ける…うぐぅ雪国見てぇだ。
ところがあいつじゃ寒そうで明らかに露出があるにも平気にむしろ全然余裕な感じだ。
「私はぜっんぜん!まだまだこんなもん甘い!多少スースーするけど気にしないレベルだ!てかさ、寒ければこうやってくっつけば良いんじゃね?」
「はぁ?」
愛奈は拓巳のマフラーを抜き取り、二人一緒まとめるように巻き直した。
「でーきた!これなら寂しくないだろ」
愛菜は右に俺は左にマフラーは1本繋がっているこの状況…俺は思わず…
「おいバカ!…おれは寒いだけで別に寂しいとかそういうのじゃねぇ!ぐぅ…何度同じことを言ったらわかるんだ!恋人でもねぇのに流石にそれはあかんやつだって!」
「寒がっているお前をほっとくわけには行かないんだ…」
「はぁ?」
急に真面目に暗い顔になっていきなりと手を握りしめた。
彼女の手は炎の魔法を使った冷たい心の俺を溶かすように力強く右手を握りしめた。
「お前の手本当に凍る感じで冷たすぎる…だから温める…今までこうやって二人、幼い頃から難関なる試練を乗り越えて成功したじゃない、だがそうも一人でうまくいかないときがある」
「・・・」
「そんなときはお互いに二人で行けばなんとかなるよ、私も拓巳も」
「まあ…俺のことを心配かけて悪かったな、じっせぇに凍え死にそうだったから」
「それくらいはお安い御用だ!私はお前を見捨てるなんてできないからな!」
あいつはアホでうるさくてめんどくさいやつだが、なんだかんだ言って友達を大切にする良いやつだったりするから憎めないんだよなこれが…
俺はあいつの真相を少し見直す必要があったと思ったのである、女子力皆無でもやはり握ると女の子だなと思わせる柔らかさだ、実際に抱きつかれるのはさんざんあるが握られるのはそんなにないから新鮮だ。
だが温めるのはありがてぇが・・・正直言おう
【お前のせいで話が全然進まねぇよ・・・】
例の異世界召喚タイトルだととっくにこのパターンで異世界でヒロインと出会うパティーンなのにまだ物語なんぞ始まってない。
いや別にこのトンネルが異世界召喚なんて信じてるわけではない、あくまでも仮にこの話が本当だとの場合だ、何よりさっさと進行して気味悪暗くトンネルから抜け出したいというだけ。