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Rainy Day Blue  作者: 皇雄
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第四話:新学期四日目

 夢を見た。

雨が降っている。

見渡す限り闇、俺はそこでただ立ち尽くしている。

雨が強くなってくる。

俺はただそこに立っているだけ、何をするわけでもない。

その傍を一台の車が横切る。

俺はこの車を知っている。

青色の車。

車が横切る際、運転手の顔がちらりと見える。

俺はこの人を知っている。

一筋、雨とは違う滴が、俺の頬をつたう。

俺はその車の行く末を見送る事が出来なかった。

その車の結末を知っているから。

雨とは違う滴が溢れ出る。

俺はただそこで立ち尽くすしかなかった。




 ピピピピピ・・・・・。

ハッと目を覚ます。濡れた頬を拭くと、体が湿っていることに気づいた。

どうやら汗をかいたようだ。気持ち悪い・・・・。

最悪の目覚めだ・・・。

冷えたお茶を一杯飲む。あぁ、喉が潤っていく・・・。

汗をかき体が気持ち悪いのでシャワーを浴びる。

(夢にまで出てこなくても忘れねーよ・・・、ったく)

風呂場を出るとふと気づく、あぁ、ひどい顔してんなお前・・・。

鏡に映る自分を指でなぞる。


 時刻を見る6時48分。

軽く飯を食べて、自転車を飛ばせば7時30分までには学校に行けるな。

そう言えば何時に来いって言ってたっけ?何時とか言われてないよな?

うん言われてない。

こんな事を考えてると読者の方々から、皇太!!そんなこと考えてる場合じゃないだろ!!と怒られてしまう気がするが、とりあえずそっちは考えがある。

あいつらに有効か分からない、たぶん無駄に終わってしまうかもしれないが、喧嘩をして同じ事の繰返しをするよりかはこの方がいい。

え?それは何だ?いやいやまだ教えられませんなぁ、ふぉっふぉっふぉっふぉ・・・。

・・・・・・・・・・。

何やってんだろ俺。


俺は支度をし、学校へ向かう。校門のところまで来ると、今日は違う教師が見回りをしている。

しかもこの教師にもワッペンを付けろと怒られた。

しょうがない帰りに買って帰るか。


そして今日も掃除用具片手に、俺は戦地へ向かった。

おぃおぃ、昨日の今日でこれか?何でお菓子のゴミが昨日と同じくらい落ちてんの?

お前ら、ちゃんと部活してんのか?

俺は一日ここで見張っていたい衝動にかられたが、そこまでやる気力はないと5秒で諦めた。

昨日よりか集中してやったせいか、1時間ちょいで掃除は終わった。

さて、報告は・・・・。

山崎のとこでいいか、片瀬はどうせいないだろ、授業中だし。

俺は掃除用具を片付けて保健室に向かった。

保険室の前まで来ると、話声が聞こえる。

ノックをすると、どうぞと声が聞こえた。

入ると、男子生徒二人が治療を受けている。

「掃除終わりました」

中には入らず報告する。

山崎は生徒の腕に何か塗りながら、分かった御苦労さまと、返事をした。

治療を受けている生徒は薬品がしみたのか声に出して痛がっている。

俺は失礼しましたと声をかけ保険室を出た。

その足で、生徒指導室まで行く、もちろん怒られにではなく、自転車に着けるワッペンを買いに行くためだ。

何も生徒指導室で売らなくても・・・。

生徒指導室に入ると年配の教師が出迎えてくれた。

歳で言うと60歳は超えていそうだ。

授業中なのにどうしたと聞かれ、事情を説明する。

停学中であること、掃除をしてきたこと、自電車にワッペンが付いていないこと、その教師はそれ以上は聞かずワッペンを取り出した。

用紙にクラスと名前を書きワッペンを貰う。

ワッペンには452と書いてある。

なるほど、この番号で誰の自転車か分かるのか、しっかりしてるな。

俺は失礼しましたと部屋を出る。

少し歩き気づく、俺金払ってない・・・。

まっ、いいか、今度言われたら払おう。いやいいのか?

・・・・・いいだろ?

そんな事を考えていながら足は自転車置き場に向かっている。

ま、昼飯代が浮いたし良いにしよう。


さてと、あいつらゲーセンかどっかにいればいいんだけどな、あいつらとはもちろん鷹尾と薫をリンチにしたあの三人だ。

俺と同じく停学になったって言ってたが、大人しく家にいるはずがない、なんせ俺がそうだからな。


俺は自転車を走らせ昨日見つけたゲームセンターを回ったが、いない。

くっそ、他にゲーセンなんてあるのか?

あとは、商店街しか残っていないが、遊ぶところなんて在ったっけ?

とにかく探してみることにする。

駐輪場に自転車を止め商店街を歩きまわすが、あの三人どころか遊ぶところすらない。

コンビニでジュースを買い外で飲んでいると、向いのパチンコ屋から見たことある三人が出てきた。

おぃおぃ高校生・・・何やってんだよ。

あの三人だ。俺は近寄り声をかけた。

「おい、あんたらちょっと待てよ」

すると一人がちらりとこちらを見て歩くのをやめた。

「おまえ!!大藤!!」

それを聞いた他の二人もこちらを向く。

「お前のせいで俺らは怪我させられた挙句、停学まで食らったんだぞ!!」

自業自得だ。全部お前らが悪い。

「自業自得でしょ?それはそうとあんたら、関係ないクラスメートをリンチにしたらしいじゃん」

俺は三人を睨んだ。

三人は睨み返してくる、やる気満々だな。

「お前が居ないって言うからな、憂さ晴らしだ!!」

憂さ晴らしだと?ふざけんな。相手の言葉にまた怒りが込み上げてくる。

「関係ない奴まで巻き込みやがって、ふざけんな」

「とりあえず場所を変えるか、ついてこいよ」

と三人は歩きだした。どうやら人気のないところに連れていくようだ。

俺は三人の後をついて行くと、小さな公園に連れていかれた。

昼間だというのに暗く草が生い茂り、誰も使っていなさそうな公園だ。

「よし着いた。さてやるか」

と三人はこちらを向く。

俺は人差し指を立てる。

「おい、今から好きなだけ殴らせてやる、その代り一つだけ約束しろ、今後一切他の奴らに手を出すな」

三人は少し驚いき、ひそひそと話し始めた。

「今後お前が俺らの言うことを聞くってんなら考えてやってもいいぞ」

三人はにやにやして条件を突き付けてきた。

そうきたか、だがこれで他の奴らに手を出さないならそれでいいか、この場でこいつらを殴り倒してもこいつらはたぶんまた教師に言うだろうな。言い方によっては俺が一方的に悪くなる。

俺はいいが同じ事の繰り返しだ。

「分かった、お前ら約束は守れよ」

三人はへへへと笑いながら俺に近づいてくる。

「おぉよ、とりあえず気が済むまで殴らせてもらうぜ」

相変わらずやられ役みたいな笑い方をしやがんな。

などと考えていると殴り倒された。

あぁ、殴り返したい・・・。

俺はそのまま殴られ続けた。


どれくらい経っただろうかあいつらは満足したようで帰って行った。

体が思うように動かない、相当殴られたようだ。

幸い顔はあまり殴られていないようだが、泥まみれだというのはすぐ分かった。

とりあえずこれで喧嘩したってわからないだろ。

空を見上げると微かに空が茜色に染まっている。

もうすぐ夕方か、なんとか体を起こす。体に激痛が走るが、なんとか立てそうだ。

壁にもたれ掛りながら歩く、なんとか歩ける。帰ろう。

歩くたびに体に衝撃が走る。道行く人は汚いものを見るように俺を通り過ぎる。

誰一人として声を掛けてこない。

ある程度歩いたが、体が限界に達してきたのか、足が上がらなくなってきた。

家まではまだもう少しあるのに、と顔をあげると神社が見える。

あそこで休むか、俺は最後の力を振り絞り神社まで歩いて行く。

意外と大きい、周りを見るが誰もいない、俺は木のベンチに横になった。

微かに木の香りがする。

俺はそのまま目を閉じた。少し・・・、寝よう。



ふわり、微かに良い匂いがする。

と同時にアルコールの匂いがし、何かが顔をかすめ俺は目を覚ました。

ざぁぁぁ・・・

・・・・・・・。

「大丈夫?」

静かなしゃべり方だ。

「えっと・・・何?」

俺は状況が把握できなかった。

なんせ目を覚ましたら女性が俺の顔を覗いているではないか、何故か恥ずかしい衝動にかられた。

体を起こそうとしたが、起こせない。

「大丈夫?怪我してるみたいだけど・・・」

見ると、手には消毒液を持っている。

「もしかして手当てしようとしてくれたのか?」

その女性はこくりと頷いた。

「そうか、ありがと」

よく見ると、彼女は巫女姿である。この神社の人か?長い黒髪のポニーテールがよく似合っている、にしても若いな。

「少し休ませてもらえば大丈夫なんで」

鏡を見ていないから分からないが、顔に痛みはない、多分口元ぐらいだろう。

「そう」

何やら俺をジロジロ見てくる、外傷を探してるのだろうか。

「喧嘩・・・だよね?」

心配そうに聞いてくる。

「えっと、まぁ・・・」

やばい、やっぱり喧嘩したって分かるのか?なんて答えたらいいか分からず適当な返事しかできなかった。

「大藤君停学中でしょ?喧嘩なんてしちゃダメじゃん」

・・・・・・・。

うん?状況が全く分からない、なんでこの人は俺の名前を知ってるんだ?しかも停学中ということまで・・・。

「えっと・・・誰?」

見覚えがない、学校の人だろうか?

「あはは、同じクラスだよ?まぁ大藤君二回しか学校来てないから分かんないか」

・・・・・・・・・・・・・・・・。

まーーーーじかーーーー!!!!!!!おおお同じクラス!?

起きた時少し見とれてしまった事を思い出し、めちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。

「えっ?えっ?まじ!?」

俺は相当驚いていたのだろう、彼女は俺の顔を見て大笑いした。

「あはは、あーおかしい」

涙まで出して笑っている。相当おかしかったのか俺の顔は・・・。

「笑いすぎだろ」

俺はなんとか上半身を起こした。

「ごめんごめん、あははは、あー久しぶりにこんなに笑ったよぉ」

あぁそうかい、そいつはよかったな〜。

「えっと、同じクラスの小泉翼、よろしくね」

彼女は満面の笑顔を俺に見せてくれた。

「小泉さんね、覚えとく、この神社の人?」

彼女は薬箱を片付けながら向かいの椅子に座った。

「うんそう、うちの家が管理してるんだよ」

すごいな、見たところ小さい神社ではない、奥には門があり、まだ先がありそうだ。

「結構でかいな、って言うか管理してんのかすごいな」

「すごいでしょ?って言っても私は手伝ってるだけだから、ちょっとしたバイトみたいなもんかな」

金貰ってるのか身内のくせに・・・。

「バイトって・・・、金貰ってるのかお前は」

「まー小遣い兼でちょっと多めに貰ってるだけだから、あはははは」

手をひらひらさせて苦笑いする。

「まーいいや、小泉さ、俺が喧嘩したこと誰にも言わないでくれるかな?」

薬箱を膝に乗せうーんと考え込む、お願いだからそこは悩まないでくれ・・・。

「うーんいいけど、一個だけ約束しよう」

小泉はにっこり笑い人差し指を立てた。

「なんだ?」

「もう悪いことしないと約束したまえ」

何?なんだそりゃ?というか今回の件は不可抗力というかなんというか・・・。

まーいいか、そんなことでよきゃ。

「分かった約束する」

「本当?よかったよかった〜♪副委員長が不良なんて皆に格好がつかないもんね♪」

ん?副委員長?誰が?

「えっと・・・、今何て?」

「だーかーらー副委員長が遅刻やら停学やらしてたら皆に示しが・・・、あっ」

えー、俺の解釈が間違ってなければ、俺は副委員長なのか?何だ副委員長って・・・おいしいのかそれは?

「えー、それはどういうことですかな?」

小泉は苦笑いして後ずさった。

「えーっと、今日クラス委員を決めたんだけど、副委員長が中々決まらなくて・・・それで片瀬先生が・・・大藤でいいだろうって・・・」

やっろぉーーーー!!何勝手に決めてんだぁぁ!!

俺はすっと立ち上がった。

「悪い小泉、片瀬だけ殴らせてくれ」

ちょっとちょっとと言い小泉は俺を座らせた。

「だめだよ!何言ってんのよ!!」

肩を掴まれ、激痛が走る。

「分かった、分かったから強く掴まないでくれぇ・・・」

冗談じゃなく俺はその場に横になった。

「えっと、ごめん、そんなに強く掴んだかな?」

いえ、多分普通に掴んだのでしょうが、今の俺にはとてつもなく辛いのです。

「いや、大丈夫、もうそっとしといてくれるかな・・・」

もう心も体もズタズタです。

「大丈夫?まぁ私が委員長だからあんまし悪い気はしないでしょ?」

ドンと胸を叩く、何言ってんだお前は、というかお前が委員長なのか。

「自分で言うな・・・」

「あははは、笑えなかったかな?」

俺の反応を見て苦笑いをする。

「笑えない、ドン引きです」

えーと言いながらしゅんとなってしまった。

「というかお前はこんなことしてていいのか?」

空を見るともう日が暮れかかっている。

「あーそろそろ家に戻らなきゃいけないなぁ〜〜、しんどそうだね、お父さんに言って送って行こうか?」

心配そうに俺の顔を覗き込む。

「いや、大丈夫、なんとか家には帰れるよ」

体はまだ痛むが、なんとか家には帰れそうだ。

「無理しなくていいよ?」

「いや、本当大丈夫だから」

俺は立ち上がりそのまま門へ向かった。

「手当してくれてありがとな、じゃ」

小泉はうんいいよ〜と返事をし、そのまま俺を見送ってくれた。

この神社から家まで結構近い、5分もあれば着くだろう。

しかし世の中狭いもんだな、あんなところでクラスメイトに会うなんて、しかも衝撃の真実を打ち明けられた。

明日片瀬に抗議しに行ってやる。

あわよくば殴る。

家に着くころには大分体も楽になっていた。

家に入りソファーに座る。

あぁ、今日はいろんな事があったな。

あいつら約束守るかな?もし守らなかったらどうしよう。

あれこれ考えていたが、俺はそのまま魅惑のワンダーランドへ飛び立ってしまった。


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