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Rainy Day Blue  作者: 皇雄
4/7

第三話:新学期三日目

  ピピピピピピピ・・・・

今日もまた、同じ時間に目を覚ます。

いつものように学校に行く支度をする。

そして気づく、俺今日から自宅謹慎じゃん。何やってんだ俺、寝よ。

そう、俺は昨日喧嘩をして停学処分になってしまったのだ。

なんで喧嘩をしたかというと・・・、めんどくさいので前話を参照してほしい。


時刻は7時27分、制服のまま寝るのはどうだろうと思いつつワイシャツは脱いで、Tシャツのままベットに横になる。

さすがにシャワーを浴びると目が覚めるところだが、ご飯を食べたて満腹の俺に、睡魔は颯爽(さっそう)と現れた。

うとうとして気持ち良くなってきた時にふと思い出す。

朝は学校に掃除しに行かなければならないんだった。

ちっきしょーー、と体を起こし脱ぎ捨てたワイシャツとブレザーを着る。

時刻は7時52分、どう考えても掃除どころかHRにすらギリギリ間に合うかどうかの時間だ。

しょうがない、俺の愛車を使うしかないか。

俺は自転車にまたがり競輪選手並みにペダルを漕いだ。

桜並木に差し掛かる。時計を見ると、8時12分。

頑張った!頑張ったぞ俺!!

俺は最後の力を振り絞り学校までラストスパートをかけた。校門に見慣れた男が立っている。

片瀬だ。

俺はおはようございまーす。と過ぎ去ろうとしたが、荷台を掴まれ急停車した。

「うおっと!!危ないじゃないですか!!」

「おはようございまーす。じゃ、ねーだろうが!!」

何で怒ってるのかよく分からなかった。挨拶がダメだったのか?まとすの間を伸ばしたから怒ってるのかこの人は?

「今何時だと思ってんだ?」

時計を見る。8時14分。

「8時14分ですよ。全然間に合ってるじゃないですか」

ほれほれと時計を見せる。

「ちっがーう!!なんでお前は普通に登校してんだよ!!普通、朝早く来て掃除するもんだろうがよぉ!?」

両肩を掴まれ、ゆさゆさと前後に振られる。

「いやいや、何時に来いとか言われてないし」

「確かに言わなかったけれどぉ、言わなかったけれどぉ」

うううっと下を向いてしまった。

「おなか痛いんですか?」

首を傾げて心配そうに聞くが、ちっがーう!!と跳ね返されてしまった。

「とりあえず今から掃除しろ!終わったら俺のところか、山崎先生の所に報告に行くように!!」

山崎?初めて聞く名前だ。

「あの、山崎って誰っすか?」

「なんだお前、山崎先生の事知らんのか?保険の先生で美人なんだ!うちの高校じゃー結構有名だぞ?」

腕を組みうんうんと頷く。

「山崎ねぇ、知らないっす」

「先生を付けろバカ者が、とりあえず山崎先生は大抵保険室にいるから、ちゃんと報告しに来いよ、後、掃除をちょろまかすなよ、後で見て回るからな」

びしっと指をさされる。

「はいはい、わかりましたよー」

自転車を引きながらその場を去ろうとする。

「はいちょっと待ち」

呼び止められた。要件はいっぺんに言えよな。

「うちの学校で自転車通学したいなら、ワッペンを買って自転車につけなさい」

「ワッペン?何それおいしいの?」

おいしい訳がない。

「盗難防止にナンバーが書いてあるシールみたいなもんだ。因みに、一つ500円なり」

以外と高いな。

盗難防止なんだから、しょうがないしょうがないと肩をポンポン叩かれる。


 そして俺は掃除用具を片手にいざ戦地へ!

と、意気込みたいが、ざっと見たところあまり汚くはない、適当に掃いて終わらせてしまおう。

と思ったが意外とゴミというものは落ちている。

部室の所なんかは酷かった。お菓子の袋なんかが結構落ちている。何やってんだお前ら、ちゃんと部活してんのかよ。

あとは砂なんかが多かったかなー、時期のせいだろうか、思ったより落ち葉が無かったのは不幸中の幸いといえよう。

大変だったがちょっとした発見もあった。

至創館という所だ。中を少し覗いたが畳がびっしり敷いてある。たぶん柔道とか空手専門の建物なんじゃないだろうか?

あとはミニサッカー場みたいのと、テニス場を発見した。

一番びっくりしたのが弓道場まであったことだ。

意外と部活に力を入れてるなこの学校。

2時間かけ一通り掃除を終えた。あぁのどが渇いた・・・。

ゴミを捨て、用具を片付けると俺は職委員室に向かった。

中に入り片瀬を探す。

いない・・・。

まぁ期待はしていなかったけどな。

中を見渡すと授業中だからかほとんど人がいない。

俺はその足で保険室に向かう。

初めてくるな。

こんこんと戸を叩き失礼しますと中に入る。

はい、誰もいませんよ〜。

一応誰かいませんかーと呼んでみるが、返事はない。

しょうがない食堂でも行って一服つけるか、と、振り向いた瞬間何かにぶつかった。

長い黒髪がふわりと舞い、一瞬それに見とれてしまった。

それはドスンと尻もちをつき、いたたたと腰を擦る。

白衣を着ている。この人が保険の先生か?

「あはは、驚かそうとして近づいたんだけど、急に振り向くからぶつかっちゃったぁ」

何しょうもないことやってんだあんたは。

見ると新学期初日に説教してきた女性だ。

「よいしょっと、んで君なんか用事かな?見たところ調子が悪いってわけじゃなさそうだし」

ぽんぽんっと服に着いた埃を払い俺の顔をジロジロと見てくる。

「ん?どっかで会ったっけ?」

新学期初日にあなたに説教された生徒ですよ〜〜。

「いや、分かんないっす。掃除終わったんで報告しに来ました。」

そっぽを向いて話すと、黒髪を(なび)かせ俺の視界に入ってくる。

「こらこら、話をする時は相手の顔を見て話しなさい」

めんどくさいな、俺はじっと彼女の顔を見る。

しばらくの沈黙、何かしゃべれよ。

と、唐突にバシっと頬を叩かれる。

「なんでそんなに見つめるのよぅ」

俺はぐへっとその場に倒れこんだ。

「なんで叩くんだよ!!おかしいだろ!!」

叩かれた頬を擦る。意外と痛い・・・。

「いやぁ君があんまり見つめるもんだからつい、ごめんごめん」

てへへと笑う。ついじゃねーだろまったく。

片瀬の言う通り確かに美人だが・・・。

この行動はどうなんだろう?有りなのか?

「とりあえず報告はしましたからねっ!俺帰りますからねっ!」

立ち上がりパンパンと埃を払う。

「おぉそうか、君が停学中の大藤君か!そういえば一昨日会ったわね」

今さらかよ、しかも人の話聞いてないし、いや聞いてるのか?

「そうですね!」

はいはいと呆れて言ったが、聞いてるのか聞いてないのか勝手に話を進めていく。

「そうかそうか君がぁ?へぇ〜〜あの三人をね〜〜へぇ〜」

にやにやと・・・・。うざったらしいなこの人、話し方が心なしか片瀬に似ている。

とりあえず無視だ。かまってたら一日終わっちまう。

「じゃ、失礼しましたー」

すたすたと保険室から出ていく。

「はい、お疲れさまでした〜」

お、意外と素直に見送るではないか。

「因みに、気をつけなさいね。あの三人復讐してやるーとか言ってたから。一応止めといたけどね」

その場で立ち止まる。

あの三人?あぁあの(・・)三人か、まぁ鼻骨とろっ骨痛めてりゃそうそう手出しはしてこないだろう。

俺はそのまま保険室を出ると、ちょうど授業終了のチャイムが鳴った。

後ろから聞いてるの〜?と聞かれたような気もするが、まぁ気のせいだろう。

しかし面倒なことになったな、あいつら治ったらリベンジしに来るってことかよ。

まぁそん時になったら考えるか、めんどいし、それよりどっか寄って帰るかなー。

と、気楽に考えていたが、面倒事はすぐ傍まで来ていた。

が、今の俺には知るよしもなく、このまま遊びに行ったらまずいから一旦家に帰って着替えてからにしよう、などと遊びに行く段取りを決めている始末。


 自転車を引きながら校門のところまで来る。

体育教官室?だっけ?のところで片瀬がタバコをふかして待っていた。

お前ぇぇぇ。というかよく片瀬に会うな。狙ってるのかこいつ?

「いよぅ、ご苦労さん」

にこにこと手すりにもたれ掛り俺に話しかけてくる。

おつかれーっす、と過ぎ去ろうとしたがまたもや荷台を掴まれた。

「なんっすか?」

「いやいや、報告は?」

あきれ顔を見るのは初めてか?

「山崎先生に報告しましたよ」

ハンドルを引っ張るが進まない。

「おーそうか、どうだ?美人だったろ?」

ズズズと自転車を自分のところまで引っ張ってくる。

「そうですね・・・、つーか放してくださいよ」

「なんでだよ、ちょっとお話ししようよ」

なんだこの暇人は!?

「暇なんですか?教師のくせに」

かなり酷いことを言ったつもりだ。

「俺、次の時間授業ないし」

ニコニコと返されてしまった。いや仕事しろよ。

「んじゃこうしよう、お互い一つずつ質問し合って答えていこう。その方が話が弾むしな」

何勝手に決めてんだよ、つーか弾まねーよ。

「じゃー最初は俺な、ぶちゃけ学校に来るのはだるい?」

なんだそりゃ。

「だるい」

適当に答えておく。少しの沈黙。

「いや、次お前な」

煙草に火をつける音がする。

しょうがない少し付き合うか。

「この学校で格闘技制覇したのになんで卓球の顧問やってるんですか?」

「やる人がいないから」

即答かよ。

「じゃ次俺、ぶちゃけ不良じみた方がかっこいいと思う?」

なんだそりゃ。

「どうとも思わない」

本当か?という顔をして俺の顔を覗き込んでくる。あぁ一度殴ってやりたい。

「ハイ次の質問どうぞ」

いつ終わるんだこれ。

「ぶちゃけ山崎先生が好きだ」

「パス」

即答かよ。しかもパスってあんた。

「じゃ次俺、ぶちゃけ反抗期だ」

本当にパスしやがったこいつ、最悪だな。

「片瀬教師に対して反抗期」

片瀬はガクッと肩を落とし鼻をすする。

「次の質問、あんたは俺が不良になると思ってんの?」

「思ってる。つーかね君、そりゃーうちの学校は不良と呼べる奴は結構いるが、新学期初日から遅刻するは、次の日には喧嘩して停学食らうやつなんて本校初よ?」

知ったこっちゃない、たまたま良くない事が続いただけだ。

「次、これからも遅刻や喧嘩をするかもしれない」

「時と場合と気分による」

小さな声で気分って・・・、と聞こえた。もう帰ってもいいかな?

「次最後、あんた結婚してるの?」

しばらくの沈黙。

「パ、パス」

ざけんな。

「いるんですね、にもかかわらず山崎先生の事が好きだと?あーあ最悪」

ぶちゃけ教師に対してこの態度はどうかと思うが、なんとなくここで今までの鬱憤を晴らしておきたかった。

「ざけんな!俺は美代を愛してる!ほほほ本当だぞ!!」

めちゃくちゃ動揺してんじゃねーかよ。

「次!!学校は楽しいか?」

しばらく考える、楽しいか?昨日あんなことがあったにもかかわらず楽しいか?馬鹿か、楽しいわけあるか。

「分かりかねます、まだ入学して二日しか経ってないし」

そりゃそうだと頭をかじる。

「じゃ、俺行きますんで」

俺は自転車を引きながら歩き始める。

「昨日・・・」

かまわず片瀬がしゃべりだす。いつもなら無視するところだが、何となく聞かなければいけない気がした。

「昨日、お前が帰った後に、2年の女子が二人俺のところに来たんだ。なんでも大藤君は自分らを助けるために喧嘩したんだと、たぶん校内放送聞いて来たんだろうな。経緯を話してくれたよ、二人ともあまりにも真剣だったから信じた。

丁度そこに校長と教頭が居てな、そういう訳なら停学は無しにしようかって話が出たんだが、とりあえず相手に怪我を負わせた事には変わりないからそのまま継続するそうだ。」

それはありがたい、5連休が無くなってしまうところだ。掃除しに来なきゃならんが。

「で?それがどうしたんですか?」

ぶっちゃけ状況は何も変わっていない。

「うーん、まぁ何だ?とりあえずこういうことがありましたよ、という報告と、ぶっちゃけお前の言った事、信じて無かったからな」

信じて無かったのかよ。まぁーそうだろうな。

「正直悪かったと思ってる。すまない」

と片瀬は深々と頭を下げた。意外だ。ただのヘラヘラしてるスケベ教師じゃなかったのか。

「いや、いいっすよ、頭なんか下げなくても、俺が悪いわけだし」

片瀬はそうかと、にこりと笑った。今まで見た中で一番切ない笑い方をしていた。

「それとあの三人にも処分が下るそうだ。と、もう一つ、今回の件は内申書に響かないそうだ、これは吉報だろ?」

正直どうでもいい。あいつらがどうなろうが、内申書がどうなろうが別にどうでもいい。

「そうですか、じゃ、これで失礼します」

軽く会釈をして校門を出る。

少し歩くと、おーいと呼ばれた。振り向くと片瀬が立っている。

「理由はどうあれ、もう喧嘩すんなよ〜〜」

俺はそのままヒラッと手を上げ、再び桜並木道を歩き始めた。

喧嘩ね、別に好きでやってる訳じゃない。中学校のころも何度か喧嘩をしたことはある。態度が気に食わないと言う奴が多かったかな、その時も相手に怪我を負わせ、結局俺が悪いことになった。手加減してるつもりなんだが・・・、まぁここは中学よりか幾分かましか。


 家に着くと取りあえず表に出てみることにする。冷蔵庫の中身も危ういしな、買い物がてら街を散策するのもいい。

夕方、町の散策も済み、買い物も済んだ。小さいスーパーはあるものの、未だに商店街が栄えている。意外だ。

俺が前住んでいた所は、商店街なんて荒んだものになっていたのに・・・。こんな言い方だと田舎ってやーねーと聞こえが悪いが、この街は、前住んでいた町よりも大きいし建物も結構ある。と、一応フォローしておく。

帰る途中、見慣れた二人を見つけた。藤波と近藤だ。近寄り声をかける。

「いよぅ、今帰りか?」

二人に近づくと少し様子がおかしい。

「や、やぁ、コウ、何してるの?」

どこかぎこちない。心なしか腹を押さえている様に見える。

「あぁ、買い物してきたんだ」

藤波はそっぽを向いて会話に参加する気配がない。

「どうした?なんか元気ないな藤波」

顔を覗き込むと口の横が少し青い。喧嘩か?

「なんだ喧嘩か?気をつけないとお前らも停学になっちまうぞ」

少し笑って見せたが二人は乗ってこない。

「実はコウ・・・」

と近藤がしゃべると、止めろ!!と藤波が大声をあげた。

「どうした藤波・・・」

ざぁっと葉が揺れる音がした。いやに耳につく。

行くぞと近藤の手を取り藤波は走って行ってしまった。

何だ?どうしたんだ?

俺は訳も分からず家路についた。

家に戻るがさっきの出来事が頭から離れない。

俺は食材を冷蔵庫にしまうと、学生書を取り出した。

そのまま電話を取り、学校に電話する。片瀬居ろよ。

祈りが通じたのか電話に出た相手は片瀬だった。

「すみません、近藤薫の家の電話番号教えてほしいんですが・・・」

なんだ?と言いつつガサガサ音が聞こえる。

「いえ、ちょっとあいつに話があるんで・・・」

「そうか、言うぞ?xxxx−xxxx−xxxxだ」

俺はそれをメモする。

「ありがとうございます。失礼します」

電話を切ろうとすると、

「おい大藤、帰り際に約束したこと覚えてるか?」

といやに真剣な口調で話す。

「え?えぇ、覚えてますよ」

ならいい、と片瀬は電話を切った。

何だ?まぁいいやと、今度は近藤に電話をかける。

あいつらが喧嘩したとして、多分あの態度は俺絡みだ。だったら俺は知らなければならない。というか俺絡みであいつらに迷惑かけたくない。

最初は母親が出た。なんかすごく若い声をしていたが、本当に母親か?

「はい、薫ですけど」

と薫の声がする。

「よう、皇太だけど」

とあいさつをすると、少しぎこちない返事が返ってきた。

「どうした?学校で何かあったのか?」

最初はなんでもないと中々話そうとはしなかったが、5分くらい粘るとしぶしぶ話をしてくれた。

「最初に言っとくけど、この事は他言しないでほしい」

「あぁ分かった」

「実は、放課後、先輩数人に袋叩きに逢った。

なっ、喧嘩じゃない・・・そんなのリンチじゃないか。

「そいつらコウのせいで停学になったとかでコウを探してたんだけど、停学中で今はいないって言うと、見せしめだとか言って殴りかかって来たんだよ。俺とタカしかいなくてさ、俺らも抵抗したんだけど、数が多すぎて結局一方的にやられちゃったよ、ははっ」

声が笑ってない、むしろ震えている。

「悪い、俺のせいで迷惑かけた」

「いや、俺はいいんだけど、タカが結構怒ってて、その、なんていうかコウに対してじゃなくて・・・、あいつらコウの悪口とか結構言ってて、そんな奴らに手も足も出なかった自分が許せないって・・・」

なんてこった。まだ出会って一日しか経ってないのに、俺が悪いのに・・・。

「帰りに、校門で片瀬に会ったんだけど、走って逃げてきちゃった。あはは、明日怒られるかな・・・」

その時さっき片瀬が言ったことを思い出した。

『おい、帰り際に約束したこと覚えてるか?』

帰り際?

『理由はどうあれ、もう喧嘩すんなよ〜〜』

片瀬は知っているのか?もしかしたら知ってて確認したのか?いや、だったら薫に確認の電話ぐらい入れるだろ、それともそこまで気が回らない男なのか?ありえる。

「因みに袋叩きに逢った事を教師にばらしたら、今度はクラスのやつらが酷い目に逢うって言われちゃったから、頼むから教師には言わないでくれるかな?」

話す声に力がない、震えている。

「あぁ、因みにそいつらの名前わかるか?」

「何する気だよっ!?」

力がない声に力が入る。

「責任はきっちりとる」

「馬鹿言うなよ!!停学中なのに!!もしばれたら停学どころの騒ぎじゃなくなるよ!?」

怒鳴られた。心配して怒ってくれている。昨日出会ったばかりの男に対して・・・。俺のせいで酷い目に逢ったのに・・・。

「ざけんな、大事な友達がやられて黙ってられるか!」

うっ、と声が漏れ沈黙が続いた。電話口からはすすり泣く声が聞こえる。

大事な友達。そうだ、昨日知り合ったばかりの男に対してこれだけ思ってくれているやつが二人もいる。こいつらは俺にとって大事な友達だ。

「ありがとう、でも分からない、ごめん・・・」

たぶん本当に知らないんだろうな。

「分かった、巻き込んで悪かったな」

「いや、しょうがないよ、たまたま教室に俺ら二人しかいなかったわけだし・・・」

しょうがないわけないだろ。

俺はもう一度謝り電話を切った。

さすがに鷹尾のところに電話をかけても、あの状態だと話すらしてもらえないだろう。


 話ではあいつらも停学になったらしいな、大人しく自宅にいるとも考えにくい、明日は掃除が終わったら遊べそうな場所を探してみるか。

会ってどうする?また喧嘩をするか?そういえばあいつら怪我してるんだったけな、関係ないか、動けなくなるまで傷を深めてやる。

そう考えるとさらに怒りが込み上げてきた。

いや、それだと同じ事の繰り返しだ、どうする・・・・?

・・・・・・・。

ぐぅ〜・・・。

緊張感の欠片もないな俺の腹は・・・。

食事を作る。もちろん炒飯だ。少しは料理のレパートリーを増やさないと飽きちゃうな。

飯の後は風呂を沸かしTVを見る。

風呂に入る、一日の中でこれが一番心安らぐ瞬間だ。

あぁなんて至福の時なんだ・・・。

風呂から出てお茶を飲みながらまたTVを見る。

このまったり感もいいんだよねー・・・。

・・・・・・・・・・・・・・。

いやいやいや、こんなにまったりしてる場合じゃないだろ俺。

さっきまでの怒りは何処にいっちゃったの?

しかし、あいつらどうしてくれよう。

と考えてみたもののやっぱりボコボコにするのが一番という結論に出てしまう。

それでは同じ事の繰り返しだ。

グダグダ考えていたが、いつの間に現れた睡魔に誘われ、俺はワンダーランドの世界に飛び立ってしまった。


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