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しがない優等生の異世界攻略記録  作者: いすわりや
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1. 異世界攻略記録

テスト用紙の下部に最後の回答を書き終える。自分の名前である阿形コウキがきちんと氏名枠内に書かれているかを確認する。

そこまでの過程を終え、彼は確信する。このテストが会心作だと。


いままで特にすることもなかった自慢を今に限ってしたくなる衝動にかけられる、しかしそれも「テスト終わりのチャイム」が鳴るまでは我慢しなくてはならない。

はしゃぐなど性に合わない、回答もされていないテストのどこにモチベーションを持ったのか。いずれもこの日までのテスト勉強が感じさせたものであろう。そうなるまでに自信がある。あぁ、テスト返却日が待ち遠しいなぁ。


国内でも三指に入る超名門に入学出来た俺だが、まさか自分でもここまで伸びるとは思いもしなかった。これも天賦の才能、「優等生」というやつなのだろう。

全生徒の中でも1位を自負させる、出来過ぎた話でも信じ続ける、無駄なフラグは立てないのだ。


終わりまであとおよそ30秒。壁に掛けてある時計が全てを物語る。終わった瞬間に脱力して叫ぶだろう。

そして10秒、そこでようやく気づく。


謎の自信、傲慢な回想、いずれも「通常」ではないことを悟る。しかし彼自身が感じていた、今こうしとかないと後にこんな「くだらないこと」を出来なくなりそうな気がしたからだ。

それらも所詮勘に過ぎない、思い込みだろうか、にしてもリアル過ぎる。

冷や汗が垂れテスト用紙に垂れる、滲む紙はふやけはじめる。


6秒、5秒...と、意識は次第に薄れていく。

そしてテスト終わりのチャイムが鳴る




「ようこそ」



***





目を開ける。何気無い動作にも少々労力を感じた。しかし疲弊するわけでもなく、体に異常があるわけでもなかった。

一つあげるとすれば、それは必死に自分の「状態」を考えていることだった。培った脳を全回する、まるで現実から目をそらす様にーーー


しかし、目を開けた瞬間にそれは叶わなかった。突如脳で焦点を結び現れたのは


「トカゲが......立ってる」


アガタの目の前には大きな道が延々とひいてあった。石で組み合わせられ、作られただろうその「地面」は彼の知るものではなかった。

そして脳に入ってくるトカゲ、紛れもなく見間違いでもないその「トカゲ男」は無数にその道を歩いていた。


よく見ると狼や猿、竜の見た目の「獣人らしき者」も歩いている。まともなことに半分以上は自分の知る「見た目」ではないが、明らかに人間であった。

だがこの状況、教室から明らかに転移したであろう状況に、認めたくなくとも脳は整理してしまう。


「異世界、異世界か。なるほど」


アガタは何も理解してない顔で手を仰いだ。



***




どこかのゲームで見たことのあるような、「ベット」のシルエットが記された看板の建物の手前までやってくる。

恐らくだがここが「宿屋」だろう、ゲームをあんまりしない俺にすらそう思わせるんだから違いない。


何を根拠にかアガタは勝手にそこを宿屋だと決めつける。が、大方間違っていないようで彼が見据える間にも次第に疲れていそうな「旅人」が宿屋へと入っていく。休むとこ、というのは間違っていないようである。

一つ彼は懸命な判断をしたと悟る。突然の異世界に情報が不足するのはありがちだが、すぐさま訪ねずにいたのだ。あの半端な人間、獣人の歩く大通りで聞いたらたまったもんじゃないはずだ。その分、人間がいるということは人間とその「種族」にはなんらかの仕切りがあると伺える。


「んで、ここだよな」


改めて宿屋を見上げる。先程から「人間みたいな人間」が宿屋へと次々入っていく。かなり大きな宿屋だが部屋がなくとも、少なくとも情報は聞けるはずだ。

一番に目をつけたのはこの人間率、今のとこあの他種族の奴らは来ていない、つまりは「仕切りがある」というのはまんざらでもないらしい。


把握しながらも恐る恐るドアを開けると、手前にはロビーが広がり、中央には受付らしきとこがある。若干広過ぎる感じがするが「ロビー」と認識出来るだけまだマシなのかもしれない。


受付けには女性が立っている、眼鏡をかけて茶髪の.......よく見ると耳が少し長い。しかしパッと見ても人間に見える見た目であった。言い方は悪いが許容範囲である。


「あの、すみません。他国から来たんですが、この街のことよく知らなくて...」


知るはずもない「他国」と「この街」という単語を出し、いかにも「他国にはいた感」を醸し出す。

恐らくだが、一番してはいけないことが現実世界から来たと暴露することだ。すれば互いに「異世界」となり押し問答になってしまう。とすればまだ「何も知らない異世界住人」のが情報散策がうまくいくだろう。


手帳らしきものに記述する作業をやめ、キョトンとした顔でこちらを見つめる女性。まじまじ見ると顔は整っていて、れっきとした人間なら一目惚れでもしていたかもしれない。


「新参者?駆け出し冒険者さんですか?」


「あ、はい。そんなとこっす」


意外と円滑に話が進むのに戸惑いながらも、なお話を進めていく。いや、こうなるように仕向けたんだけれども。

彼女は「ちょっと待ってくださいね」と一声かけ、後方の本棚へと振り返る。何を取るのかと思えば一番横にある、まるで古事記のような分厚い本であった。


辛うじて英語なのか、「冒険者のすすめ」と書かれてそうなその本を受付け台へとバタンッと置いてみせる。


「こちらがこの大陸での『英知書』です」


「この大陸」という言葉に俺は気づく。つまりは俺の思う「他国」というのは現実で、いくつもの国や町村があるとみていいようだ。そして「この大陸」という発言から、地方と分別していない辺り、海は存在すると予想される。

ならば海を渡れば帰れる......?いや、今は帰る手段よりも情報が必要だ。情報不足では海へ行くことすら出来ない、そもそも海があるという確かな証拠とも言えない。


「あのー、とりあえず地図みたいなページってありますかね?あとカタログ......みたいな」


「カタログ?よくわかりませんが、ここはザスティアというアルバレス国一番の大街です」


始まりは中心街、お約束ともいえよう転回に少々胸が踊りつつある。

大街ザスティア、アルバレスという国にいることがわかった。女性の指差す地図のページを見る限りでも中心部の方の大陸に位置している。なによりーーー


「海が、あるのか」


「そりゃ世界ですもの。面白い方ですね」


女性は俺の反応が可笑しかったのか、小馬鹿にするように微笑を見せる。いや、可笑しいのも無理もないか、常識を問われ外したら誰だってそうなる。しかしこちらの身となればそれが大きな発見ともいえる、そうやすやすと馬鹿にされてはどこか苛立ちも覚えるものだ。

しかしだ、海は確認しても地形が意味不明そのもの。俺の知る国はないし、ましてや似てる名前を探そうにも文字が読めない。


短時間で把握するのは困難だ。もう少し落ち着いたところで時間を作った方がいいな。


「あの、すみませんがこの本貸してくれませんか?明日辺りに、一番に寄って返すので」


「その本ですが、あげちゃいます!右往左往する旅人さんを放ってはおけません。それに...」


そこまで行って女性はなにやら受付台の下部に手を伸ばす。ガサガサと音がする、何かを探しているのだろうか?


「ん~....あ、ありました」


「うん?なにこれ」


取り出されたのは小さなポーチであった。大きさにしては「よくある財布」と同じ程度の。

女性は「それ、入れ物に使ってください」と笑顔を見せる。いやどう考えてもこの本は入らないだろ、と言いたい気持ちもあるが、ここは優しさに免じて心に秘めておくことにする。


「あと、情報が欲しいなら酒場に行くべきです。この街の酒場は割と有名なんです。その分いろんな方が出入りするので、自然と情報が集まるんですよ」


「へえ、酒場か。じゃあそちらに行ってみます。ありがとうございます、えっと.......名前は」


「ヘスティです」


ヘスティと名乗った彼女は、再び笑顔を見せる。存外この世界にも信頼や友情、縁というものが芽生えるのかもしれない。

俺はヘスティに「アガタ」と名乗り、宿屋をあとにした。






***





数分前の初見など忘れるように、それは見慣れた光景へと変わりつつある。視界の右から左へと、はたまた逆でもあるが歩いて行く人々。若干名宿屋の前というのに「獣人」の姿も見受けられる。最初ほど慌てないあたり短時間でもこの世界に慣れてきていると考えて良さそうだ。

歩く速さを変えず、むしろいつもよりゆっくりと市街地を歩き「酒場」を目指すのだ。まあそれが第一の目的かと問われたら答えることは出来ないだろう、なんせまだ他に確認することがあるからだ。


しかし消去法だと酒場に行く以外では情報収集は困難で、今の行いこそが最善の手だと考えてしまう。この行き着きこそが俺の悪い癖なのかもしれない。

昔から脳の回転は早かった。学校でも成績は常に上位、高校に関しては名門校に入学している。それについ数時間前のテストでもさらに力を発揮した。今こそその事実があり得ないことなのだが、その状況を感じさせただけでもこの異世界転移に意味があるのかもしれない。


はて、つい物理的なことを考えていたが、よく考えるとそれもおかしなことかもしれない。

「海を渡れば帰れる」これはあくまで俺の見解に過ぎないが、普通なら他国へくればそう考えるだろう。そう「普通なら」である。この状況は間違いなく普通ではない、それもあってこの世界を俺は自然と「異世界」と呼んでしまっている。気づかぬうちに呼んでいた、不可抗力でありそれは認めている証拠にもなりうる。

ならそんな考えはやめ、いっそ魔法的な何かだろうか。異世界転移なんて言ったが現在の科学でそんなことは可能なのだろうか。いずれもこの世界ではとても言い切れることではないのだが。


しばらく歩くと前方に騒がしい音の溢れる建物を見つける。「ビール」らしき看板があるあたり、ここが酒場と見て間違いないだろう。

早々に入り情報を得たいところだが、あいにく騒がしいというのは把握している。こういう場合は先に話す相手を定めてから行った方がスムーズに行きやすい。


酒場というくらいだ、「女将」がいるはずだ。管理人かはともかく話の聞ける相手だと見ていいだろう。しかしここで直面するのが異世界事情である。そもそもこの世界に女将なんて?


「..........」


無言、思考より先に体が動いてしまう。恐らく脳が「この」思考を嫌い、神経へ任したのだろう。しかしその働きは今となっては機転で、良い行いとも言える。

動くきっかけにはなった。


辺りには広々とした空間が広がり、酒や何かの料理が入り混じった匂いがプンプンする。そしてその環境を後押しするかのような声、声、声。


アガタはそれすらからも目を背けるように、まるで無心でただただ中央を突き抜ける。彼の周りにはいい年したオッさんらが無数にいる、中には獣人や、この酒場の売り子なのか、ウェイトレス的な人までいる。


マルチすぎるこの空間。なぜだろうか、あの大道のがマシに思えてくる。いや、そもそもこの獣人らを敵対視するからそういう反応になってしまうのか。

いずれにせよ向こうも同じ考えだそうで、どこからか来た俺を揃って見つめてくる。その際にも声が絶えないのはこの酒場の「酒場らしい」点なのだろう。しかし、あの耳のちょい長い人間的な何かと俺の見た目は何が違うのか、理解にくるしむところがある。


「すみません、少しお時間よろしいでしょうか?」


この世界にあるかもわからない丁寧な文法で、中央のカウンターのおばさんに話しかける。俺の感だとこの酒場の女将的な存在に違いない、なんか体格ゴツイしデカイし、そんな雰囲気ガンガン出してるし。


「あぁ?あんたあたしも直接指名してるつもりかい?どれほどの地位がものを言うんだい」


「いや別に指名とかではないんですが、ただ少しお話が聞きたくて」


そこまでの会話で俺は「何故か入るポーチ」から英知書を取り出し、おばさんに見せる。

「追って話すので」と言葉を加え、第一に知りたいー...


「どれほどのもんだいあんたはって聞いてんだよ。一方的に質問かい?ちょいと傲慢じゃないか?」


おばさんの迫力のある正論に気圧される。しかし俺とて事情無しなりに必死なつもりだ、この程度で諦めるわけにもいかない。

そんな目で軽くおばさんを睨んで見る、するとその意思が伝わったのか、その力んだ顔から緩んだ表情になり、豪快に笑い出す。


「あっはっはっは、大したもんだい!たしかに勇気ある行動さ、この国じゃ人一人に話しかけるのにも相当な苦労がいるものさ。あんた偉いよ、名前はなんてんだい?」


「アガタだ。話を聞いてくれるのか、ありがとう」


「そうかい、あたしはグランマ。この酒場の女将をやってるよ。それより話が進んでるよ、話を聞くとは言ってないさ」


なんと、そうゆう流れであったろう。と、ツッコミたいとこではあるが実際そうはいかない、この巨漢には反抗されたら勝てるはずもなく、そもそも俺の筋が通っていない。


「確証がないからあんま強くは言えんが、ある人からこの酒場には情報が集まるって聞いたんだが」


「たしかに間違ってねえさ、周りを見な。こんだけ他種族が集うんだ、他国の情報はもちろん、ごまんとある。だが、それならそいつらに聞けってんだい」


またもや正論を刺されるが、実際それが出来ないからグランマさんに聞いているのだ。

獣人とは元から種族が違う、ならば知識があっても何かしらの和解という「前提」がいるはずだ。そうじゃない「あの人間」にしても、彼らが他種族と交流がある限り同じことになる。

本来なら自分でこの英知書を使い学ぶべきなのだろうが、あいにく俺にはこの英知書するわからない状態だ。本とは別に、質問に答えてくれる「まともな人」が必要だ。そんなわけで俺はここの代表的な存在を選んだのだが。


困惑する俺を察したのか、グランマさんは少々小馬鹿にするように


「はっ、どうやらそれすらも敵わないようだね。しょうがないねえ、今回だけ特別扱いしてやるよ。おい、ストレア」


グランマさんの発言に反応したのか、後方からせっせと駆ける足音が聞こえる。

現れたのは先ほど見たウェイトレスと同じ格好をする女の子、ストレアと呼ばれた彼女だった。


「アガタってんだ。こいつをあいつのとこに連れてってやんな」


「わかりました。行きましょ、アガタさん」


言われるままに俺は彼女の後についていく。なぜだろうヒロインが確立した気がした。





***





今思えば不思議なものだ、こうして脳が認めてしまっている。

外見こそバカでかいこの酒場だが、どうしてこのような構想があると予想が出来なかったのか。


「びっくりしました?」


「あぁ、かなりな」


驚いたのは無理もない。俺はグランマさんに言われるまま彼女、ストレアについていっている、そこまでは順調なのである。

しかしどこへ向かうかと思いきやストレアは何かを詠唱した後に俺たちの体は光に包まれ、こうして「別の場所」へと送り込まれた。

壁や床を見る限り先ほどの酒場と同じ材質であると伺える。


「転移呪文です。ここはグランマの酒場の別館というところでしょうか」


ストレアはそんなことを言いながらただ廊下をひたすら突き進む。途中何度かドアを見つけたが、目的の部屋はまだ先なのだろうか.......?


そして一つ学習をした。彼女の「びっくりしました?」という発言に要点を置いてみる。いくら他国民とはいえ呪文か魔法の類の知識はあるはずだ。しかしそれにも関わらず顔色を伺うということはこの転移魔法は「高度な魔法」に違いない。

必然的にかなりの強者と考えられるが、どうも年下のせいか、この中学生にも見える彼女をそう認識することが出来ない。そもそも、年齢がそれを言うならまだ確証されてはないのだけれど。


「着きました」


彼女は足を止め右手のドアを紹介して見せる。何度か見たドアと同じ気がするが、この延々と続く空間でよく覚えていられるなという感心すらも芽生える。


「ありがとうストレア。一応確認するが、要はこの中の人物が情報提供者ってことでいいんだよな?」


「はいそうです。あ、それとまあまあおじいちゃんなので、そこらへんは上手く接してくださいね。ではアガタさん、楽しんでくださいね」


ストレアは軽く片目を閉じ「ウィンク」をして見せる。

不覚にも胸がときめいてしまう。やはり俺の脳が彼女をヒロインとして確立させているようだ。





***





「失礼します」


目的のドアを2回ノックしたあとに、静かに部屋へ侵入する。今思えばあのノックがこの世界において正しい作法なのかどうかすらも知らないが。

部屋の中は中央に酒瓶がいくつかおいてあるテーブルに、相対するように椅子が二つおいてある。そして片方には心なしかボロボロに見える黒のマントを纏った「まあまあな老人」が座っていた。


「君が客か。まあ座りたまえ」


老人に言われるがまま俺はもう片方の椅子に会釈くしながら座る。

そしてポーチから英知書を取り出し、テーブルの上で開いて見せる。


「俺はアガタ、えっとあなたは」


「シリウスでいい。英知書を持参か、目的意識があって来たようだな」


シリウスは咳払いし、椅子に座りなおす。


「普通なら自分で知識を身につける世の中だが。なるほど、人頼みか」


「面目無い、ごもっともだ。だがあいにくそれすらの知識がなくてだな」


図星、正論と言えばそれでお終いだ。しかしこの世界の「最低知識」を学ぶには人に聞くという答えに辿り着いたのは揺るがない。

しかし、そんな俺の心情を悟ったのかシリウスはもう一度咳払いすると、


「ふむ、なるほど。しかし私も軽率な推理だったようだ。不思議なことにこの空間にいること自体が特別でね、訪ねる結果それが私ということなら、ここまでの過程に努力があると考えられるな。よかろう、質問があるならするがいい、私に答えられることなら全て答えよう」


「ありがとう、助かるよシリウス」


それなら話が早いと、俺は地図のページを飛ばし真っ先に「それらしいページ」を見つける。

それはいくつかの容姿の絵が描かれたページで、おそらく「職業」的ななにかの類だと考えた。ここにくる以前にグランマさんからは何度か「地位」という単語を耳にした。この世界では身分がほとんどを動かすのではないのだろうか。


「なるほど、地位のことか。たしかに職業などで優劣はあるが、獣人達との差別が無いのがこの国の良いところだ。まあどっかの連中は忌み嫌い、仕切りをするとこもあるが」


それはあの宿屋も同じことなのだろうか。たしかに獣人が中には見えなかったが、獣人との仕切りを入れているという確証は無かった。

ならヘスティも「そっち側」...?


「まずは一般的な農民、町民がいる。そのまま両親の稼ぎなどで生きる、大半がこれを占めるだろう。そして次に商人らの職人だ、今の両親に当たる立場だ。こう見ると必然的に職人の地位が上と見ていいだろう」


「酒場を見たあたり、冒険者か?ゴロツキっぽいのもかなりいたような気がしたが」


「あいつらは『旅人』と呼ばれててな。なに、無理やり地位を作ってるだけだ、立場的には商人と同等といったところか。ただ、稼ぎは商人以下と見ていいだろう」


「稼ぎ?」


俺の知る異世界やファンタジーでは、どえらいクエストをクリアし大金を手にするイメージがあるが...


「言ってしまうと、たしかに高難度の依頼を達成すれば報酬が弾む。しかしそれはごく一部の奴らだ、この世界は何かと外が騒がしくてな。そう容易に出歩けるもんじゃないんだ」


シリウスは英知書のページをめくり、あるページを指差す。


「これがジェスファールだ」


「ジェスファール?」


「正義組織ってとこだな。ここには商人の会長や旅人の長など、要は権力者や実力者が集まり、政治を行っていく」


政治という単語が出て来たのには素直に驚いたのは、多少なりとも現実世界の文化と似ている点があるらしい。

ならこの「英語らしい」字も頑張れば読めるのか...?


「ならジェスファールが最高機関ってことでいいのか?」


「うむ、機関では間違いなく最高だろう。しかし最高位の人間がいるわけではない」


「ん?今の話だと恐らく国王もそこにいるんだろ。王様以上がいるのか?」


「その通り、この国の国王ドレアムはジェスファールの最高位だ。しかし世界から見ると国王以上の地位もあるものよ。まあ少なくともこの大陸を動かすのは国王ドレアムといっても過言ではない」


シリウスの言葉通りだと国王以上の権力者がいることになる。国の決定者が国王なら世界の決定者が「以上」と考えられる。

この街を歩いて思ったが、中央に聳え立つ城、あれが恐らく「ジェスファール機関」なのだろう。


「地位についてはここからが本題だ。ジェスファールとて中にも優劣はある。まずは銅兵、奴らが機関の8割を占める。いわば兵隊、志願した旅人などがなる職だ。次に銀章、銅兵にて功績を挙げた者がこの地位につく、ここまで来て商人や旅人以上と言える」


「いかにも兵隊がつきそうな地位だな。しかしまとめるのは誰なんだ?」


「もちろん、銀章を仕切るのは国王以外にもいる。それが金冠、ジェスファールの最高戦力だ。奴らの中には国宝もいる、間違いない国の切り札だ」


「なるほど、ジェスファールにも3段階あるってことか」


「そういうことだ。それにしても最初に地位について聞くとは、なかなか賢いな」


シリウスは酒瓶をグイっと持ち上げ「あっぱれ」とジェスチャーして見せる。

自分とてこの判断には敬服する。仮にシリウスが質問を1つのみと制限しても同じことを聞いていただろう。グランマさんの発言から地位がよほど大事なものだと、この世界は語るのだ。ならば他者に聞くにしても人は選ばなくてはいけない、そのためにも有力者か判断する地位について知る必要があった。


「他に質問は......おっと、言い忘れたが、いや...」


シリウスは何か言うそぶりをみせる


「何か他にも?」


「あぁ、アガタには関係ないと思うが......一応な」




「『国宝』と『天罪』についてだ」

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