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...._これはとある夏の日のこと。
...
「え?ばあちゃんち?」
「そ、あんたもうちょっとで夏休みでしょ?どうせ夏休みぐーたらするんだから行ってきなさい。」
と言ったのは重たいメガネをかけた俺の母さんだ。
「いやいや、なんで俺の夏休みの予定決定されてんの。」
ぐーたらしないし、とは...言えない。
なんせ、ここは俺が通っている中学校から遠い。そのため友達がこの辺りには1人もいないのだ。
ということで、夏休みがきてはずっとぐーたら生活をしていた。
しばらく言い訳を考えていたら、母さんはそれを察したらしく、俺が何かいう前にトドメをさす。
「ほら、ぐーたらするんでしょ。おばあちゃんの面倒見も兼ねて行ってきなさい。」
そこからは早かった。
母さんにこれ以上言っても無駄だと思った俺は、母さんに言われる前にさっさと準備を始めた。
別にばあちゃんの家に泊まりに行くのは全然いいのだ。むしろ嬉しいくらい。
...だが。
俺は、どうしても気がすすまない理由があった。
それは『迷惑がかかる』こと。
俺のせいで。
俺、宮田葵は『色』というものが見えない。
俺の視界は産まれた時からずっとモノクロの世界だ。
このことが原因で、家族にも友達にも迷惑を沢山かけた。
だから嫌なのだ。特に、 交流が少ない人と一緒にいるのは。
ばあちゃんとははっきりいって年に1回会うか会わないか程度の交流だ。
そして、多分俺の目のことをばあちゃんは知らない。
俺は憂鬱になりつつも、ほんのちょっぴり楽しみにしていた。
...
夏休み1日目が幕をあげた。
「あらー!蒼ちゃん!!久しぶりねぇ!」
玄関に入った途端、満面の笑みで台所から俺の元にやってきたのは、やはりばあちゃんだった。じいちゃんは俺が小さい頃にとっくに亡くなってて、今では顔もはっきり思い出せない。
家に上がるも、元気にしてた?学校は楽しい?とか色々質問攻めされ、けれど手厚く歓迎された。
そこで俺は、あらかじめ迷惑をかけないように俺の目のことをばあちゃんに話しておくことにした。
話し終えた後、ばあちゃんはゆっくり目を瞑り、「ごめんね。」と小さく呟いた。
「どうしてばあちゃんが謝るの?」
慌てて俺が聞くと、ばあちゃんは眉毛を少し下げて笑顔を作った。
「お母さんも目が悪いでしょう。もしかしなくても私のせいかな、って思ったの。」
そんなことないよ、と否定するように首を横にふる。
そんな俺の様子にばあちゃんは微笑んで、そっと俺の頭に手を置いた。
「気分を悪くさせちゃったわね。..私のお気に入りの場所に行きましょうか。」
「お気に入りの場所?」
「ふふ、着いてからのお楽しみ。」
ばあちゃんはそういって、口元に人差し指を当てた。
ばあちゃんの家は山付近にある。
今、俺はばあちゃんと家の近くにある山に登っていた。
ミーンミンミンミーンミンミン....
何処かで蝉の鳴き声が聞こえる。それは山全体に響いていた。
数10分、山の中を歩き続けると不意にばあちゃんが足を止めた。
「ここだよ」
目の前にあるのは1本の木だった。
花は咲いていないようだ。
「この木は?」
「ばあちゃんが心配でよく見に来る木。花が咲いていた時は本当に綺麗だったよ。」
ばあちゃんが、少し寂しそうな顔を俺に向けながら言った。
「今は、咲かないの?」
思っていたことを口にするとばあちゃんは、とうだろうねぇと笑いながら気木のほうを見る。それに続けて俺も木のほうを向いた。
「この木の花は本当に綺麗でねぇ、白色の花を咲かすんだ。」
「シロイロ...」
その色が俺にはわからない。
想像することしか出来なかった。
「この木の、名前は?」
ばあちゃんは、一瞬、ほんの一瞬こちらを見てすぐに木の方に視線を戻し、口を開いた。
それと同時に強い風が吹く。
「この木の名前はね....____」
風の音より小さいばあちゃんの声を、俺は聞き取ることができなかった。
...
あれからばあちゃんにもう1度聞くなど出来なくて、俺は木の名前を知るのを諦めた。
そして、翌日。
「蒼ちゃん、おつかい頼まれてくれない?」
二階にいたばあちゃんが俺に声をかけた。ばあちゃんは用事があるらしく、ずっと忙しそうにしていた。
「うん、わかった。」
スクッと立ち上がり、ばあちゃんから〈おつかいリスト〉とお金を受け取る。
「ばあちゃんは、5時くらいになったら帰ってこれると思うから。」
と玄関にいる俺にばあちゃんは1階の台所から声をかける。
現在の時刻は3時。俺のおつかいは少なくとも1時間くらいで終わるだろう。
「はーい。行ってきまーす」
ガラガラと、古くなった扉を開いた。
第1話の投稿です。まだまだ未熟者で、拙い部分もありますが、よろしくお願いします。




