変態の役割(?)
「あれ、セツヤ先輩にレミアウス先輩。えっと……どうしたんですか?」
「ああいや、こっちのことは気にする必要ないぞ」
その後俺たちは昼休みの時間を使ってラントの下へと向かった。
一年生の教室まで着くと、ちょうど教室から出てくるラントと鉢合わせた。
彼は、俺の横にいる目元を赤く腫らしたジェシカを不思議そうに覗き込んでいる。
「う、うん! 気にしないで!」
覗き込まれたジェシカも慌てて話題をそらす。ラントは少し煮え切らない表情をしていたが、それ以上の追求はしてこなかった。
「それで……二人してどうしてここへ?」
「今日からちょっと、お前に稽古をつけようと思ってな」
「け、稽古?」
その言葉にラントがずさっと身を引いた。
「ミルを守りたいんだろ?」
言うと、うっと嘘がばれた子供みたいな顔をする。……と言っても、年齢的には全然子供なんだよな。
「でも……皆さんに迷惑ですよ。先輩たちはただでさえランキング戦の最中だっていうのに……」
「後輩が何を心配してるんだ。放課後に少し時間を取って、魔術と近接戦の稽古をするだけだ。別に大した支障は出ない」
「そうだよ、ラントくん。治癒魔術なら私が教えるから」
「……」
ジェシカの優しげな微笑みにラントは見とれていた。まあ仕方ないよね、ジェシカってこの学院じゃ相当可愛い方だと思うし。
「それなら……お言葉に甘えて……」
「よし、決まりだな」
ラントが折れたのを見て、俺は言った。
さて、本当にラントをあいつらの前に連れて行ったらどんな反応するかな。
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「本当に連れてくるとはね」
その日の放課後、俺たちは訓練場にいた。
現在この場にいるのは、俺・ジェシカ・ラント・ネロ・エリック・アレン・エレカの合計7人。
アレンが呆れたような顔をしている。
「まあな。……おっと、俺がラントを脅してここまでこさせた、なんて思うなよ?」
「はは、セツヤなら強引にやりかねないね。でもまあ、そうじゃないのは彼の目を見ればわかるよ」
「よ……よろしくお願いしますっ!」
ラントが勢いよく俺たちに向かって頭を下げた。
「そんな気負わなくていい。俺たちだってそんなに厳しくするつもりは――」
「――では始めるとしようか、ラント」
俺の言葉を遮るように、エレカが一歩前に踏み出して、そう言った。周りには『ゴゴゴゴ』と漫画でよくありそうなオーラが漂っている。
「ひっ!」
「おい、エレカ! 誰がそんな怯えさせるようにしろっつった!」
つーかお前、やっぱラントに教える気マンマンなんじゃねぇか! 最初は反対してたのに、いざやるとなると一番にやる気出しやがって、調子のいいやつだ。
「悪いけどエレカちゃん、今日ばかりは俺に譲ってもらうぜ」
次いでそう言いながら腕をぐるぐると回しているのは、その顔になにやら意味ありげな笑みを浮かべるエリックだった。
話によると、彼は今回が最初で最後の参加になるらしい。大方、ゴーサス辺りに「お前まで行く必要がどこにある」とか言われながら強引にやってきたのだろう。訓練場に来たとき、何故かあちこちボロボロだったし。
「いいネー、ウチも混ぜてよ!」
と、無邪気に間に割り込むネロ。
「まあ、やるならちゃんと教えようか」
そう言って、実は最初から楽しんでいたんじゃないかと思わせるアレン。
「も~、みんな、順番に教えないとラントくんがこんがらがっちゃうよ~!」
悲痛な叫び声を上げながら、自由奔放にラントに教えていくみんなを纏めようとするジェシカ。
そして、そんな中後ろでぼうっと立っている、俺。
……あれ? もしかしてこれ、俺が一番やることないんじゃ……。




