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変態と新たなる少女

「――これは、どういうことかしら?」


 訓練場に新たにやってきた女子生徒は、ラントに抱きついたままのエレカを睨みながらそう言った。

 どうやらラントに状況の説明を求めているらしいが、当の本人は固まってなかなか口を動かせないでいる。


「こ、これは……」


 そしてやっと、ラントが口を開こうかというその時、空気の読めない常識知らずの少女がラントの言葉を遮るように言った。


「お前は誰だ?」


 振り向き、第一声にその言葉を放つ。

 ……いやいやエレカさん。ちょっとは空気とか読みません? 明らかにあの女の子ラントの知り合いでしょうよ。


「……あんたこそ、誰よ。とりあえずラントから離れて」


 ぐいっとエレカからラントを引き剥がした女子生徒は、彼の手を引き俺たちから少し距離を取る。


「ちょ、ちょっとミル……」

「どうして模擬戦するなら言わないの? 私たち、同じパーティでしょ? 入試だって一緒に戦ったじゃない」

「そ、それは……」


 ラントは非常に言いにくそうにして、ミルと呼んだ少女から顔を背けた。その顔からは、何処か心配するような、それでいて申し訳なさそうな表情が見えた。


「お前、ラントのパーティメンバーか?」

「それが何か? 先輩」


 エレカが問うと、ミルはぷいとそっぽを向いて冷たくあしらった。言葉の最後に付いていた『先輩』がまるで嘲笑に使われたように感じる。


「ミ、ミル! 先輩にそんな態度をとったらダメだよ」

「だ、だって」


 ミルはそれでも抗議しようとしていたが、やがて口を閉じた。

 ……うーむ。この二人の力関係がよく分からないな。最初はミルの方が強いかと思ったけど、どうやらそうでもないらしいし。

 そんな二人を見ていると、今度はエレカが口を開いた。


「ミル……といったか。ラント、何故私たちと戦う時、お前はミルを呼ばなかった?」

「そ、それは……」

「もしかして、ウチらが断ると思っていたから?」


 ネロも口添えすると、ラントは再びどもってしまった。

 この状況、非常にややこしく入り組んでいそうだ。


「なに、ラント? 私に話していないことでもあるの?」

「うっ……」


 追い討ちとばかりに、ミルからも催促を受けるラント。さらに表情が曇る。

 そろそろ可哀想かな。そう思い立った俺はある提案をすることにした。


「なぁ、ちょっとラントを責めすぎじゃないか。男ってのは想像以上にメンタル弱いんだぜ」

「いや、僕を見られても困るけど……。まぁ、確かに、アルグリス君に事情を聴くなら場所を変えるか日を改めたほうがいいかもね」

「そうね……って、もうこんな時間なの!? まだ仕事が山ほど残ってるのに……」


 訓練場の時計を見上げたサラが絶望の表情を浮かべていた。仕事、片付けてから俺たちを誘ってくれよ……。


「それなら、明日にでも食堂でお話を聞かない?」


 ジェシカがそう提案する。

 それ! 俺も思ってたんだよな~。やっぱり俺とジェシカは相思相あ……


「仕方ないわね、それで手を打ってあげるわ」


 俺の思考を遮り、ミルが言った。ていうかなんで少し上から目線なんですか。

 それから話は纏まっていき、明日の午後5時に食堂集合ということになった。

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