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変態と最年少最入試優秀者

「最年少最入試成績優秀者?」


 試合の後、疑問符を付けた俺の声がサラに向けて放たれた。


「そ。去年はエレカやあんた、そしてトリスたちがそうだったように、毎年入試成績優秀者という存在は生まれる。その中でも、過去のどの入試成績優秀者より"年齢が低い場合"特別な名誉が贈られる。それが、最年少最入試成績優秀者ってわけ。実力さえあれば年齢性別なんて問わないケルティック学院ならではね」

「へぇ……」


 ちらりとサラの横に居たラントを見やると、恥ずかしそうに顔を赤くして俯いていた。……俺にショタコンの気質が無くてマジでよかった。

 サラは自慢げに胸を張ると、ラントの背中をバシバシと叩く。あまりの勢いにラントはつんのめりそうになっていた。てか、なんでサラがそんなにエラそうなんだよ。

 そんな姿を見たあと、アレンが質問をした。


「サラ教官。ちなみに、過去アルグリス君と同じ名誉をもらった生徒って、何歳くらいなんですか?」

「15歳よ。ラントは今年で10歳の誕生日を迎えるはずだから、実際は9歳ね」

「きゅ、9歳……」


 ジェシカが驚きのあまりラントを凝視していた。ジェシカのような可愛らしい容姿でも、やはりぐっと見られると怖いのだろうか、ラントはまた一歩サラの後ろに擦り寄った。


「9歳って言うと、ちょうどウチが村の裏にあった森で狩りを始めた時と同じだネー。でもラントは、その年齢でケルティック学院(ここ)に入学しちゃってるんだから、スゴイよー」


 褐色の顔に、満面の笑顔が生まれた。それがラントに向けられる。ラントはまた一歩、サラの後ろに隠れようとした。


「こらラント、いつまであたしの後ろに隠れてるのよ。全く……戦い以外のことになると、あんた、急にへっぴり腰になるわよね」

「だ、だって……皆さん先輩ですし……」


 おずおずと、サラの後ろから出てくるラント。その顔は恥ずかしさのあまりか朱に染まり、謙遜からか身体がさらに小さく見えた。……マジで。マジであぶねぇ。黄泉の入口で能力を選ぶとき『チートレベルのイケメンになれる』の下にあった『ショタコンに目覚め、天性のショタ射止めオーラを放つ』とかいう意味不明な能力選ばなくてよかった。今だったら完全に下を選んでる。


「胸を張りなさい。あんたは十分戦ったわ。まず相手は5人なうえに、今年の入試優秀者までいる。負けるのは仕方ないと言っても過言じゃ……」

「ダ、ダメです!」


 今まで縮こまっていたラントが、サラの言葉を遮るように、突如声を張り上げた。


「ダメ、なんです……。今日の試合は、完璧な僕の負けです。本来なら勝つべきだった。勝とうと頑張るべきだった。でも……」

「ラント」


 俯き、今にも消え入りそうな儚い声で言葉を綴るラントに、名を呼ぶ低い声が一つ飛んだ。


「アントマー……先、輩……?」

「お前は、かつての私に、ケルティック学院に入学する前の私にそっくりだ」

「え……?」


 そして次の瞬間、エレカは何を思ったのか、おもむろにラントへと近づき――小さな肩を抱きしめた。


「っ!!」

「その歳であれだけの実力。そうとうな訓練を積んできたんだろう。とくにあの土系魔術の応用なんて、一朝一夕で得られるモノじゃない。何か強い目的がなければ、人間そこまでたどり着くことなど出来ないからな。……しかし、今のお前は、あまりに気負いすぎている」


 エレカはとても優しい口調で、ラントを諭していく。

 ラントをここまでの強者に育て上げるだけの理由。それが逆に、彼を縛り付けているのかもしれない。

 ――――そんな時だった。


「ラントッ!!」


 バン! と訓練場の入口が大きな音を立てて開かれた。扉の先に居たのは、ひとりの女子生徒。ラントと同じくらいの年ごろだろうか。明るめの茶髪を両サイドの赤いリボンで縛り、走ってきたのか乱れた息を整えるために肩を大きく動かすたび、その茶髪とリボンがふりふりと揺れる。

 女子生徒はそのままつかつかと訓練場に入ってくると、目の前の光景にハッとした表情を浮かべた。


「……これは、どういうことかしら?」


 ラントに"抱きついた"エレカの背を睨みながら、リボンの女子生徒は冷たく言った。

 ……そのトーン、完全にヤバい時のジェシカと同じ感じですよね。

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