変態と銀狼 2
銀狼の登場
第一学舎の地下。
そこに訓練場は存在する。
地下の広さは大体第一学舎の建物全てと同じという巨大さを誇り、中央は円形に砂地が用意され、その周りを取り囲むようにして観客席が存在する。
エリックのパーティ以外の俺たちはその観客席に座り、"銀狼"と呼ばれるリーブマルの到着を待った。
「ふむ、観客席から他のパーティの戦闘を見るというのも新鮮なものだな」
と、横に座ったエレカが腕を組みながらそう漏らした。
「そうだね。普段の模擬戦だと大体個人戦だし……」
エレカと共に俺を挟むようにして座ったアレンもそれに首肯する。
「そういえばエレカって、こないだのたくさん挑んできた相手とかにもそうだったけど、授業で行われる模擬戦の時も皆に対して容赦ないよねー」
「当たり前だろう。手を抜いたら、それは相手を見下していることになる」
二年時のカリキュラムに取り入れられている、週に四回行われる生徒同士の模擬戦。
エレカはそこでもいまだ負け知らずだ。
もうクラスの大体の生徒がエレカと対面しているが、その誰もが終わった後心を折られたような表情を浮かべていたのを覚えている。
すると、
「……あ、来たみたいだよ」
ジェシカが訓練場入口を指差す。
その方を見れば、いままさにドアを開け、制服に身を包んだ数人の男性徒たちが入ってくるのが見えた。
最初に入ってきたのは、前髪を円筒状に固め前に伸ばした……つまりリーゼントのような髪型の男だ。
だがあの男は銀髪ではない。どうやら"銀狼"ではないらしい。
次に入ってきたのは、赤い髪を乱雑に切った飄々とした男と、茶髪で背の小さい男、そして紫の派手な髪色をしてニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべている男の三人だ。
しかし、彼らの中にもまた"銀狼"はいないようだ。
そして、最後に入ってきた人物。
背中の真ん中辺りまで綺麗伸びた銀色に輝く髪。
他の生徒とは一線を画すような堂々とした足取り。
そして、
「……すまないね、待たせてしまったようだ」
訓練場に響く、透き通るような声。
その髪と相まって、ともすれば一瞬女性に見えてしまう者もいるかもしれない。
「待ちくたびれたぜ、リーブマル!」
エリックが一歩前に出て、銀髪の男性徒にそう叫ぶ。
……リーブマル。やはりあの男性徒が"銀狼"と呼ばれる人物のようだ。
「おや……?」
しかし、リーブマルは目の前のエリックたちに見向きもせず、観客席にいた俺たちを見てきた。
それに、横にいたあのリーゼントの男性徒がリーブマルに何か耳打ちをしている様子も見える。
「あれが、"銀狼"……」
一人だけ、明らかに別格のオーラを漂わせる人物。
その振る舞いから見ても、只者でないのは明白だった。
「…………エリック君、だったかな? 遅れてきてしまった僕が言うのも失礼だが、この後の予定が少しばかり急でね。さっさと始めてしまおうか。監督の教官は僕の方で呼んでおいた。もうすぐ来るはずだよ」
「そーだそーだ。カワイコちゃんがいないパーティなんて、さっさと片付けてその後に……」
「おいレストルト、あまり勝手なことをしてリーブマルさんを困らせるなよ?」
「行きますぜィ、リーブマルさん」
リーブマルのパーティはそれぞれ持ち寄った模擬武器を展開し始めた。
それに続くような形でエリックたちも展開してゆく。
それから、リーブマルの発言の通り後から遅れてやって来た技術教官の到着を確認して、二パーティの戦いの火蓋は切って落とされるのだった。




