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変態と少年

訓練場へ向かう途中。

ちょっと入れなくてはならないエピソードだったので。

 二年へと学年が上がった俺たちは、普段魔術の授業などを受ける教室も一つ上の階へと上がっている。

 二階の廊下は長く、端から端までざっと百五十メートルはあるだろう。

 何故かといえば、この階は二年の教室があると同時に魔術準備室があるからだ。

 魔術教官が授業前の準備をする教室が並んでいるのだ。


 ……思い返せばちょうどいまの時期。

 エレカとミレイたちとのやりとりを見たのもこの階だったな。


 などと考えながらさらに足を進める。

 当然階段を下りれば一階になるわけだが、いまのこの階は俺たちの後輩となる一年が使用している。

 つい一か月前までは俺たちも使っていた教室。こうして来てみると少し懐かしくも感じた。

 この学院だと先輩後輩の縦の関係が薄いため後輩が入ったことに対して何も考えたことはなかったが、こうして意識して来てみると一人くらい一年の顔を見たくもなってくる。


「……何か、懐かしい気分になるな」

「何言ってんだ、まだ俺たちが二年に上がってから全然経ってないだろ」


 エリックが階段を下りながら笑ってそう言った。


「ま、そうなんだけどさ……」


 相槌を打ちながら俺も階段を降りようとした。

 すると、


 ドンッ


「うぉっ――」


 身体の腰辺りに何かがぶつかった衝撃。

 後ろに倒れそうになるがとりあえず踏ん張る。

 一体何がぶつかって――


「――大丈夫か?」


 エレカが、一人の人物の腕を掴んでいた。


「ご……ごめんなさい」


 エレカに腕を掴まれていたのは、見るからに俺たちよりは年下だという少年だった。

 ぶつかったのは、この少年だろうか?


「ねーねー、ボク。謝るならこのお姉さんじゃなくて、こっちのお兄さんでしょ?」


 ネロが少年と同じ背丈まで腰を下ろし、瞳を覗き込むように言った。


「あっ……」


 言われた少年は慌てて俺の方に振り向き、


「ぶつかっちゃって、ごめんなさい」

「お、おう……」


 しっかりと頭を下げて謝ってきた。


「そ、それじゃあ……っ」


 少年はそれだけ言うと、急いで階段を駆け上がって行ってしまった。


「……いまの誰だ?」

「制服の色からして、恐らく一年だろうな」


 エレカが言った。


「そうだね。でも僕らより学年が一個下なだけで年齢自体は結構下っぽかったけど」


 アレンもエレカに賛同しながら言った。


「あれが一年……」


 俺は少年が辿った道を見つめながら呟いた。

 学年は一個しか違わないが、実年齢は明らかに俺たちより十は下だった。

 まだ声変わりもしていないような、少し高めの声がその証拠だ。

 でも、そんな少年がこの学院の入学試験を乗り越えてこれたというのだろうか。

 あの少年は一体……


「おーい。早く行こうぜー。遅れちまうよ」


 階段の踊り場からエリックが退屈そうな声を上げた。

 ……いま考えても仕方無い。次会う機会があればその時に色々訊いてみよう。


 そして俺たちは再び訓練場へと足を向けた。

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