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変態と少女たち

やっぱり強い

 学内ランキング戦。

 それは、二年に上がった生徒同士がパーティもしくはソロで参加する、一年通しての大型イベントである。

 開始は二年への進級が確定した翌々日から。

 全ての生徒同士はその瞬間から敵同士となり、技術教官を審判とする模擬戦を主に行って順位を競う。


「……それで、次はお前か?」


 学内ランキング戦中は、学内のほぼ全てのエリアが模擬戦場となる。

 もちろん勝手な戦闘は規則でありえないため、必ず手近な技術教官にその旨を志願する必要があるが。


「先生もう疲れちゃった~~早く帰らせてよ~~~」


 夕日が照らすこの中央広場の一角でも、一つの生徒同士の模擬戦が行われていた。

 審判を担当する技術教官のセルファは眠たそうにあくびをする。


「まだだ! 次は俺らがやる!」

「やるなら構わん。さっさと構えろ」


 制服の袖をまくり、得物である短めの直剣を構えた男性徒四人のパーティを見据えるのは、金色の長い髪を靡かせて悠然と立つ少女、エレカ・アントマーだ。

 俺たち他のパーティメンバーは、それを後ろから見る形になっている。


「ねぇねぇセツヤ。エレカのスタミナって、もしかして底なし?」


 ネロがふとそんな質問をすると、


「エレカちゃんは、すごいんですよ。私たちなんて到底及ばないくらい」


 俺とネロの間に割り入るようにしてジェシカがそう答えた。


「へー……一度戦ってみたいなぁ」


 ジェシカの回答にぼそりと、そう漏らした。

 彼女の眼差しは、羨望の色に染まっている。


「――よし、準備は出来たようだな?」

「ああ……いつでも来い!」


 そうこうしているうちに、両者の準備が出来たようだ。

 セルファはベンチに座りながら、あくびとともに試合開始の合図をした。


「さぁ――……は?」


 一瞬だけ。

 風を切る音のみが、戦場を支配した。

 それ以外特に動きもないままに――


「ぐえぇ……」

「ふぎゃっ……」

「きゅう……」


 三人の男性徒が膝から崩れ落ちた。


「お、おいっ! 何してんだお前ら!」


 仲間を叱咤する最後の男性徒の前に、人影が現れた。


「――もう満足か?」

「……!」


 次の瞬間、男性徒の首筋には身の細い剣先が突きつけられていた。


「は~い、もうおしま~い」


 パンパンと、手を叩く音が響いた。

 セルファだ。


「シュレイ君、もう満足でしょ?」

「ま、まだ俺は倒れてなんて……!」

「も・う・満・足・で・しょ・?」

「……はい」


 垂れた目元とその喋り方のせいで柔らかな印象を受けるセルファだが、そんな彼女に睨まれた男性徒はすごんでしまった。


「はいはい! 残りの皆もまた今度ねー。エレカちゃんも疲れてるだろうし、私は疲れてます!」


 最後の一言だけやけに強調していたように感じたのは気のせいだろうか。


「……すまないな、セルファ教官。一日中付き合わせてしまって」

「んー、まあ、これも教官のお仕事だしね~。割り切ってるから大丈夫よ~」


 そう言って、セルファは手をひらひらと振り学舎方面へと去っていってしまった。

 それを見て、いままでエレカに血気盛んな目を向けていた男性徒たちも散り散りになっていく。


「……皆もすまなかった。まさかこんなに時間が掛かるとは……」


 エレカは俺たちの下に寄ってきて、頭を下げた。


「エレカちゃん、頭なんか下げないで」

「そうだよー。色々と面白いものも見れたしねー」

「こんな時間までなったのは別にアントマーさんのせいじゃないよ。それに、全部勝ってくれたおかげで僕らの順位も結構上がってるんじゃないかな」


 各々が、エレカに対して優しい言葉を掛けた。

 するとエレカは顔を上げて、


「……ありがとう」


 照れたように頬を染め、そんなことを言ってみせた。


「ま、今日はもう帰ろうぜ。腹減っちまったよ」

「……ふふ、そうだな」


 エレカは頬を染めたまま、俺に向かって笑顔を向けてきた。

 ……相変わらずこいつは自分の顔がいいことに気付いていないからタチが悪い。


「それじゃあせっかくだし、皆で食堂で夜ご飯食べない? 皆で食べたほうが美味しいしー。それに今日はスペシャルデーなんだよー。五人以上で食堂で注文すると、高級料理店で料理長も務めたことのあるコックさんが作るデザートが出るんだよ!」

「おいそれが本命だろ」


 そんな言い合いをしながら、俺たちは揃って食堂へと向かうのだった。





「リーブマルさん、いまの見ましたかィ?」

「ああ、もちろん見ていたよ」


 中央広場の外回りに立つ木々の中から、ある人物たちが姿を現した。


「……ヒヒ、あの中にいた褐色の子、最近転入してきたってウワサの女の子だろ~? ヒヒ、タベたくなっちまったよ」

「おいレストルト。いま気にするべきはそいつじゃないだろ」

「いーんじゃないっすか? オイラだったら、あのピンク髪の子がいーなー」


 出てきた彼らは、思い思いに喋りだす。

 ぱっと見れば団結力のない集団に見えるが、そんな中に一つの声が飛ぶ。


「……エレカ・アントマー……!」


 まるで女性ではないかと見紛うほどの綺麗な銀髪を靡かせて、口角を釣り上げながら意味ありげに笑う男性徒。


「やっと戦えますぜィ、リーブマルさん」


 そんな彼に、前髪を伸ばし固めた非常に珍しい髪型の男性徒が声を掛けた。

 リーブマルと呼ばれた銀髪の男性徒は顔を伏せると、


「フフ、フフフフ……"雷の王女"、その力、見せてもらうよ……!」


 そう言って、顔に刻んだその笑みを一層深めた。

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