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変態とライバル

二年生編、始まります

 王都立ケルティック学院。

 多数の冒険者を毎年排出するこの学院は、クリムゼル王国唯一の冒険者育成機関だ。

 今年も総勢五十名近くの冒険者を輩出した。

 卒業し、晴れて本物の冒険者となった者たちは、それぞれ各都市のギルド支部に所属する。

 そこで再び実践による冒険者のノウハウを学び、よりレベルの高い冒険者へとなっていく。


 ケルティック学院二年。

 俺たちは無事進級試験を合格し、二年へと上がった。

 どうやら俺たちの代では殆どが二年に上がったらしく、落ちた者は十名に満たないらしい。


「……で、何でこんなことになってんだぁぁぁ!」

「ふふ、観念しなよ、セツヤ!」


 不敵な笑みを浮かべ、背後から襲ってくるトリス。

 彼の周りにはいくつもの土塊が停滞し、発射のタイミングをいまかいまかと待ち望んでいるようだ。


「くそぉ! こうなったら……」


 俺はトリスから逃げる最中、両足に強化魔術を施す。

 強化された脚力を使って、高く跳躍する。


「出たね、セツヤの得意技! でも……」


 トリスは素早く周囲の土塊を投げ付けてきた。

 ……ここまでは想定通り。とりあえずあの停滞した土塊を排除しなければ、永遠にこちらの不利だ。

 しかし、このままではまたトリスは魔術を発動するだろう。

 その前に何とかしないと……


「――うわぁっ!」


 そんな俺の思考を遮るかのように、浮いていたはずの足に何かが絡みついた。

 見ればそれは、地面から生え出た直径二十センチほどもある大きな茨だった。

 ――い、いつの間に発動したってんだ!?

 茨はそのまま、俺を地面に叩きつけようとする。


「さあ、終わりだよ。セツヤ!」


 地上で待ち構えるトリスが、不敵な笑みを浮かべながら俺を見る。


「まだだ……!」


 俺は素早く魔術の発動に入る。

 ――イメージするのは、炎を纏いし玉。

 落下する恐怖をも打ち消し、イメージのみに集中する。

 次第、俺の周りに三つほどの火の玉が出現した。


「ふっ、そんな攻撃!」


 トリスは俺の魔術に臆することなく、防御するための土の壁を魔術で用意した。

 ――でも、そんなこと俺にだって分かってる。


「さぁ、これでセツヤの反撃の目は――」


 そう言ってトリスが目の前に展開した土の壁を消すと、そこには――


「隙だらけだぜ」


 強化魔術で身体の部位全てを強化した俺が、トリスの眼前一メートル無い距離まで近付いていた。

 俺の手には、模擬戦用の直剣。それを後ろに引き、突きの構えをする。


「なっ」


 トリスは咄嗟に得物である戦棍(メイス)を身体の前に持ってこようとする。


「それじゃあ遅い!」


 俺は強化された腕で、剣を思いっきり振り抜いた。

 振り抜かれた剣はわずかな差でメイスに阻害されることなく――


「――そこまでっ!」


 訓練場に、鋭く凛々しい声が響いた。


「全く……いくら模擬戦用の武器だからってそんなに本気で振り回したら大怪我になりかねないのよ?」


 声の主、サラが呆れたようにこちらにやって来る。


「いえ、サラ教官。実践ではそんな甘いことが許されるはずがありません。もしいまの攻撃が通っていたなら、それは俺の力不足です」


 トリスは真っ直ぐにサラを見据えた。

 ――いまの攻撃が通って"いたなら"――

 つまりトリスは、あそこから俺の攻撃を避ける手段を持っていたということか?

 俺はトリスを見た。


「……ふぅ。やっぱり、グロウさんの血は争えないわね」

「サ、サラ教官、何故父の名を……!?」


 サラが溜め息混じりに零した名前に、トリスは鋭く反応した。

 目を見開き、サラを凝視する。


「あたしがグレイワース支部にいた時代、かなりお世話になってね。あの時は私もまだまだ未熟だったから、グロウさんにはいろんな技術を教えてもらったわ」


 グレイワース支部? 聞いたことのない名前だが、支部と付いている以上グレイワースというのは主要都市の一つなのだろう。


「そうだったんですか……」

「ま、そんなあたしの目から見ても、トリス(あんた)にはグロウさんの影が見える。その棒術に関してもそうだし、魔術の発動の鋭さ、そして戦況を先読みする眼……改めて、グロウさんの息子さんなんだって思っちゃったわ」

「い、いえ、俺はまだ父の域には……」


 謙遜するように手を挙げるトリス。

 しかし若干ではあるが、その表情に喜びが感じられた。


「……さ、もう気は済んだでしょ? 明日からお待ちかねのイベントが始まるんだから、今日くらいはゆっくり休みなさい」

「は、はい」

「ああ」


 俺とトリスはそれぞれ返事をして、訓練場を後にした。

 ――明日から、いよいよ二年時の全てを使って行われる、『学内ランキング戦』が始まる。

 三年に上がるも落第になるも、全てはこの行事で高順位を獲得できるか否かに掛かっている。

 この間行われた筆記と魔術の進級試験とは比べ物にならない。

 明日から始まる一年を通してが、全て進級試験となるのだ。

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