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変態の夏休み②

海に向かいます

「……で、何でお前がいるんだよ」


 次の日の朝。俺とエレカとジェシカの三人は、学院の入口前にいた。

 これから行くのは、俺とエレカは以前合宿で行ったハリアブルー。

 その近くにある海水浴場に以前使用した馬車を使って行くのだが……。


「引率よ、引率。ちゃんと学院長の許可も取ってあるんだから。

 それに、あたしがいなかったら馬車の操縦誰がするってのよ」

「いやそれは確かにそうなんだが……その手に持ってるものは?」


 俺が指を差すと、サラはその手に持った紙を悪びれもせずひらひらとさせる。

 それは、俺たちが持っているものと同じ海水浴場の入場チケットだった。


「だって、どうせ行くならあんたたちだけ楽しむのはずるいじゃない?」

「じゃない? って言われても……ちなみにそれ、自腹か?」

「経費」

「職権乱用だろそれ!」


 いいのか、ケルティック学院! こんないい加減な教官を雇っていて!


「失礼な男の子ね~。ちゃんと学院長の許可は取ってあるって言ったでしょう?」


 ケリスもなぜ許可を出したんだ……。


「あ、あはは……」


 横でジェシカが苦笑いしていた。


「あれ、そういえばジェシカってサラと会うのは初めてか?」

「う、うん。サラさんって有名だから名前は知ってはいたけど……」


 え、サラってそんな有名なのか。

 ダウナート出身じゃないジェシカでも知ってるって、かなり凄くないか?


「もしかして幻滅しちゃった?」

「え、えっと……」


 ジェシカはかなり言いにくそうにしている。

 おいおい、そんなの直接本人に聞かれて答えられる奴がいるかよ。どんだけ神経図太いんだ。

 と思っていたら、


「私も名前だけならサラ教官のことを知っていたが、実際に会ったときは予想と大きく違ってかなり驚いたぞ」


 さらりとエレカが言い放った。

 あーもう、こいつときたら……。


「ちなみにそれは、どっちの意味での違う、かしら?」

「ん? 悪い意味でだが」


 当然だと言わんばかりの言い方である。

 ま、言いますよね、エレカなら。

 サラは怒るどころか、呆れていた。


「はあ……あんたって、ホント容赦ないわね」

「人と付き合うのに素顔を隠す仮面を被ってどうする。それに私は、何もサラ教官が嫌いだとは一言も言ってないぞ」


 言われて、サラは目を見開いた。

 ついでに俺も見開いてる。

 ここまで裏表が無い奴もそうそういないぞ……。


「こういうところが、他の子たちから煙たがられる要因の一つなのかもしれないわね……」


 サラが溜め息混じりに言った。

 全くその通りだと思う。





 王都ダウナートから見て北西に位置する、ハリアブルー。

 合宿の際はあまり関わることがなかったが、この都市は海が近く、所謂漁業というものが盛んな都市で一般的には"港都"と呼ばれている。

 異世界に来てまでまさか漁業を見ることになるとは思わなかったが、どうやら前の世界の漁業とはかなり違うらしい。


 この世界の漁業では魔術を使う。正確には、魔術の術式が埋め込まれた道具を使って魔術を発動し漁業の工程を大幅に効率よくしているそうだ。つまり、学院で使用されている技術と同じだ。

 とは言えこの辺は俺もちらっと聞いただけだからよく分からないけど。

 そんなことより……。


「海だ!」


 俺は馬車による酔いも忘れて、眼前に広がる海原に心を躍らせていた。

 ザ・インドアの称号を持つとはいえ、俺もやはり男の子。

 こんな広大な海を見せられて心が踊らない男子がいないはずがない。


「噂通り、かなり綺麗だな」

「海の底が見えるみたい……」


 横の女子二人も同じく見とれているようだった。

 そしてジェシカの言う通り、ここの海は驚くほど綺麗だった。

 青空が反射した透き通るような水色と白い砂浜のコントラストが映える。


「ここの海は観光地としても有名なのよね~。あたしも若い頃はこの海に来る度若い男に声を掛けられたもんだわ」

「あ、あはは……」


 あ、そうなんですか。

 という意図が取れるようかのように、俺とエレカは見事にサラをスルー。

 ジェシカだけ苦笑いしていた。


「あそこで受付をしているみたいだから、行こうぜ」

「そうだな。こんな綺麗な海を見ていたら早く入りたくなってしまった」

「わ、私も……」

「ちょっと! 無視しないでよ!」


 三人揃って、入口らしき施設へと向かう。

 後ろから何か声が聞こえた気がしたが、気にしないでおこう。





 受付施設まで行くと、係りの人と思しき女性が二人ほど待ち構えていた。

 俺たちを見るなり、すぐさま声を掛けてくる。


「ご来場の方々ですか?」

「はい、四人なんですが」

「それでしたら、まずはチケットを見せて頂けるでしょうか」


 言われたので、俺たちは女性にチケットを見せた。


「……はい、確かに。では、こちらに記入をお願いしますね」

「分かりました」


 差し出された紙に必要事項を書いていく。

 その後、書き終わった紙を受付の女性に返すと、カウンターの下から何かを取り出した。


「それでは、こちらをお受け取りください」


 受付の女性が差し出してきたのは、クレジットカードくらいのサイズと厚みのカードだった。

 それは銀色の軽い金属で出来ていて、表面には『入場パス』という文字が黒く刻まれている。


「それは今日のみ使用可能の入場カードです。

 そちらの入場チケットと交換という形で差し上げますので、それを無くされると再入場が困難になります。ご了承ください」


 なるほど、再入場の時に使うカードか。

 無くしたら確かに面倒そうだ。





 水着を持ち合わせていない俺は、レメリオル海水浴場が貸し出している水着に着替えて外に出た。以外に水着の種類多くてちょっと迷っちゃったぞ。

 砂浜に出ると、自前で水着を持ってきていたという女性三人組がそれぞれ俺を待ち構えていた。


「すまん、待たせた」

「結構遅かったじゃない。水着選びにでも時間取ってたの?」

「そんなところだ」


 俺の登場に何故か真っ先に声を掛けてきたサラ。

 彼女はやけに俺に対して胸を押し出してくる。

 ……残念だけど、俺にその攻撃は効かないんだよね。好きな女の水着どころか、下着まで見たことある男だぞ?


「それじゃ早速何して……」


 俺が半ばスルーしながら話を進めようとすると、サラが少し不機嫌そうに言った。


「まずは、この子たちの水着を見てあげたら?」

「ああ……」


 そうだな。サラはともかく、同学年の二人の水着くらいは見てやるとするか。

 ではまず、エレカから。


「水着の評価なんてせずに私はさっさと泳ぎたいのだが」


 エレカの着ている水着は所謂スポーツ水着のようなもので、身体にピッタリと張り付いた紺色の水着が身体のラインがよく出ている。

 以前エレカは俺に、自分は子供の頃から身体を鍛えている、と言っていたがまさにその通り。

 程よく引き締まったその身体は、水着のおかげでより引き締まって見える。エレカ自身そこまで胸は大きくないが、それがかえってぴっちりとした水着によく似合う。


「うん、とても良く似合ってるぞ」

「……そうか。そう言って貰えると悪いものでもない」


 エレカは女の子らしく顔を赤らめるようなこともなく、ただ純粋な笑顔を見せた。

 ……ま、あのエレカが赤面するようなことがあれば、間違いなく今日は嵐に見舞われるだろうな。せっかく海に来たのに嵐でさようならは勘弁だぜ。


「セツヤくん……その…………私のは、どうかな……?」


 ジェシカに目を向ける。

 腰元にヒラヒラとしたレースの布を巻き付けたビキニ。

 元より豊満な胸が、ビキニによってさらに強調され、正直目のやり場に困る。普段は制服を着用しているため見慣れるのは早かったが、こんな水着姿はさすがに見慣れるというわけには行かないな。

 風が吹くたび、腰元に巻き付くレースがヒラリと揺れる。

 ……これ、そこらへんにいる男数人なら殺せそうだぞ。


「ジェシカも、良く似合ってるよ。エレカにはどちらかというと"かっこいい"とかそういう感想を持つけど、ジェシカさんは満場一致で"かわいい"だな」

「そ、そんな……!」


 ジェシカは赤面し、俯いてしまった。

 ……ふう、危うく俺以外の男子なら既にジェシカさんに心を奪われているところだぜ。


「何満足そうな顔してるのよ?」


 横からずいっと顔が現れた。

 不満そうな顔のサラである。


「まだ何かあるのか?」

「私がまだじゃないのよっ」


 そう言って、フフン、と胸を張るサラ。

 はあ、仕方ない。


「えっと……」


 改めて、サラの水着に目をやる。

 着ているのはジェシカと同じビキニタイプだが、腰元にレースの布は巻き付けられていない。普通の黒ビキニだ。

 しかし、サラの持つ大きな胸と黒という色のせいで余計アダルティックに見える。完全に男を釣ろうとしてるよねこれ。


「それ、自前の水着なんだよな?」

「ええ、そうよ」

「まあ、何というか……男探し、頑張ってくれ」

「な、何よ! あたしまだ男探しするなんて一言も言ってないじゃない!」


 キーっと睨みつけてくるが、ここはスルー。

 しかしスルーしていると、サラが引率教官で付いてきたとは思えないような発言をした。


「セツヤ、あんた罰としてあたしの身体にオイルを塗りなさい」

「はあ?」


 罰? なんの?

 どうせ男探しするなんてこと、誰が見てもわかるわ!


「ほら、早く! あっちのパラソル空いてるから」

「何で俺が……」


 サラが俺の腕をグイグイと引っ張ろうとする。

 すると、風紀にうるさい女生徒の鋭い一声が飛んできた。


「サラ教官、さすがにそれは教官としていかがなものかと思うが?」

「うっ……」


 エレカ言われ一歩後ずさるサラ。

 碧眼の瞳が、いまにも俺を捕らえようとしているサラを睨む。


「じょ、冗談よ! 冗談に決まってるじゃない!」

「全く……当たり前だろう」

「そんなに睨まなくてもいいじゃないのよ。もう、ケリスみたいに怒るんだから……」


 俺の腕がサラの拘束から解放される。

 ……た、助かった。

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