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閑話っぽいやつ

前話から続ける予定でしたが、文字数が多くなりすぎるとアレなので分けた次第です。

 戦いの後、俺はエレカの下へと駆け寄った。


「エレカ!」


 俺の声に、エレカはレイピアを腰の鞘に仕舞いながら振り向く。

 そして何を思ったか、俺が耳を疑うようなことを言い放った。


「悪いが、ずっと気付いていたぞ」

「……マジ?」


 嘘でしょ?

 えー、完璧スニーキングだったはずなんだけどな……。隠れる場所が悪かったか。

 あっちの木の裏とかにしとけばよかったかもなー、かっー、(つれ)ぇー!


「セツヤ。ちなみに言うと、僕たちがアントマーさんを追ってる段階で既に気付かれてたっぽいけどね」

「――分かってたんなら教えてくれよっ!」


 何だよもう……ちょっとスニーキングを楽しんでた俺がバカみたいじゃん。

 はぁ、話題変えよ。


「……それにしても、良かったな。そのペンダント帰ってきて」


 俺は話題転換のために、エレカの手中にあるものに目を向けた。

 エレカの手の中には、ミレイから奪い返した金色のアクセサリが収まっている。

 ……ミレイも「異常なまでに大事そうにしている」とか言ってたっけ。

 こいつにとってこのペンダントはどんな位置付けなんだろう。


 するとエレカはアクセサリを首から提げつつこう言った。


「ああこれか? これはペンダントではないぞ」

「えっ……」


 驚く俺に、エレカは首に掛けたその丸型のアクセサリを開いて見せてきた。

 覗いてみると、中ではアナログ型の時計が動いていた。


「へえ……懐中時計だったのか」

「母上の形見でな。肌身離さずずっと大切にしている代物だ」


 形見、と言われて地雷を踏んだと俺は一瞬たじろぐ。

 そんな俺の表情を見てか、エレカはつとめて明るくこう言った。


「ああ、そんな顔しないでくれ。もう私も子供ではないから理解はしている。

 それに、もう死んでからかれこれ十年近くになるしな」

「そ、そうなのか……」


 いや、これで胸を撫で下ろすのはちょっと失礼なんだけれども。


 俺は再び懐中時計の中に目を落とす。

 開かれた内の下部では時計がカチカチと時を刻み、上部にはカメラに向かって笑う小さな子供とその母親らしき人物が写った写真がある。


「お前のお母さん、美人だな」

「ふふ、父上とお付き合いを始めるまで周りから言い寄られ続けていたらしいからな。

 その時の話を自慢気に私に話す姿をよく覚えている」


 エレカは昔を思い馴染むように微笑んだ。


「まあ母上は見た目と違って結構男勝りなところがあったからな。言い寄ってきた他の男も全て薙ぎ倒してしまったらしい」


 呆れたような、照れたような笑いを浮かべるエレカ。

 ……何というか、こいつがこういう性格なのも納得いった気がする。


 エレカは懐中時計を閉じると、改めて言った。


「さて、私の話はもういいだろう。それよりも……」

「パーティ、どうするのかな?」


 アレンがエレカの言葉を代弁する。


「そうか。確かにこんなことがあった後であいつらとパーティ組むのはちょっと……か」


 ようするに、エレカはこれで現在どこのパーティにも所属する予定がなくなってしまったということだ。

 で、あるならば……。


 俺は最初からいままでずっと心に抱いて来たことを言ってみることにする。


「エレカ、俺たちと一緒にパーティ組もうぜ」

「うん、僕もそれがいいと思うよ」


 横のアレンも俺の意見に賛同してくれた。


 正直エレカは、並外れた戦闘能力があっても性格やその他常識にかなり難がある。特に、相手を無駄に挑発するところとか。

 確かにそれに見合った実力をエレカが持っているのは分かる。が、その性格を正す者が近くにいなければ、いずれは己の首を絞めることになりかねないだろう。


 だから……、俺がこいつのストッパーになってやる。

 どのくらいいられるか分からないけれど、いられる限りは傍にいて、こいつの危なっかしい言動を俺が止めるんだ。


「いいのか? 私は一度断ってしまった身だが……」

「構わないさ。……どうせ、言われるの分かってたろ?」

「……ふふふ、どうだろう」


 エレカは無邪気に笑ってみせた。美人な顔に、年相応な少女の笑みが映り込む。

 ああ、こいつ、こんな顔もできるんだな。……可愛いとこもあるじゃんか。


「よし、それなら早速明日にでも事務の人にパーティ申請しなくちゃね!」

「そっか、申請必要だもんな」

「今日はもう遅い。

 明日と明後日は休日だし、アレンの言う通り申請は明日にでもしよう」


 そう言って、アレンとエレカは歩き出した。

 その背を見ながら、俺は思う。

 ――こいつらが、俺の最初のパーティメンバーになるんだ。

 そしてゆくゆくは『冒険者』として、この世界で生きていくんだ。



 ここが、俺の『冒険者』としてのスタートラインだ。

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