来襲
《それ》はある日いきなり現れた。
俺たちの暮らす東京は渋谷、スクランブル交差点のど真ん中に、一匹の竜が現れた。
まるでゲームや漫画に出てくるような巨大な竜はそのまま俺と一緒にいた彼女を吐いた炎で炭に変え、ハチ公なんか溶けてスライムみたいにされてしまった。
その事件はあっという間にネットで拡散され、どこかのゲーム会社のコマーシャルだとかいった平和な説から外国の秘密兵器が漏洩した、なんていう陰謀説までが出揃ったのは竜が現れた日の夜のことだった。
みんなそれをタチの悪い冗談か夢だと思いたかったんだろう。どこの掲示板やブログを見ても、どんな荒唐無稽な噂であっても「そうかもしれない」と肯定するムードだった。
目の前で大事な人や友達がわけの分からない化け物に焼き殺されたなんて事実、認めたくもないのは俺だって同じだった。
渋谷に竜が現れた翌日、秋葉原のメイド喫茶のブログを使ってある人物から声明が発表された。
その声明の主は自称《勇者》、自称《賢者》、自称《戦士》、自称《魔法使い》。
ブログに書かれていた内容はこうだ。
「我々はここではない世界から来た勇者だ。渋谷に現れた巨竜は我々の世界の術師が作り上げた界門を抜けこちらへ送られた。術師の目的はこちらの世界を征服し、王となること。
我々はそれを阻止する為にこちらの世界へ来た。