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胎動

 事の始まりは2015年にアメリカ合衆国が広範囲電磁波妨害電子装置「ADAMS」を世間に公表した出来事にあたる。

 予てよりシリコンバレー、シリコンデザート、サンベルト、スノーベルトなどの工業地帯で同時開発された「ADAMS」は軍事関連においてのみレーダーを妨害するものであり、広範囲に妨害電波を発生させる巨大な装置だった。

 

 電波反復率の高い妨害電波或いは欺瞞信号を広範囲・こうこうに渡って発生させるというディセプション式に似た装置で、これによって敵レーダーの妨害、レーダーホーミングミサイル又はICBM(大陸間弾道ミサイル)の阻害が可能となったのである。

 

 2019年、合衆国第45代大統領ジェラルド・ボールディング・ウォードは「ADAMS」の存在を世間に公表すると共に米軍の軍事作戦に導入する旨を伝えた。だがレーダーを妨害する「ADAMS」の導入は、戦闘機や戦車など従来の兵器の優位性を失う事に繋がるとして米軍は反対するものの大統領の命令によりせざるを得なくなる。また大統領は国連を通じて「ADAMS」の導入を各国家に呼びかけるが決断は見送られる事となった。

 

 それから一年後の2020年12月。ロシアで政変クーデターが起こり、政府の高官だったウラジミール・ミハイロヴィッチ・セルゲーエフが大統領と首相を兼任して旧ソ連国家を政策により強引に吸収した。更にセルゲーエフは政府の最高地位を書記長に変え、「新たなソビエトを宗主とした社会主義共栄圏の復活と資本主義への闘争の再開」を提唱しソビエト社会主義共和国連邦(新ソ連と呼称)を復活。崩壊前の強大な力を以て周辺の国々やアメリカに連なる資本主義国を脅かし始めた。

 

 その他にも中東やアフリカに於いて民族主義や、イスラム原理主義による活動が活発化し、各地で内戦・テロが勃発。2023年には中東を中心に、民間軍事会社・白人主導のグローバル化反対主義者・テロリストなどによる擬似国家「アル・インサーン」が形成される。

 不安定な世界各地の事情により「ADAMS」の導入を要請する国家が現れた。

 

 更に世界を不安定な状態に陥れたのは、世界各地で頻発に発生した大地震であった。

 2024年3月に日本、中国、インドネシア、フィリピン、チリ、イラン、トルコ、シリア、ニュージーランド、イタリア、ギリシャなど数多くの国々で同時期に超巨大地震が発生し、壊滅的な被害を受けた。日本国内では偶然にも東日本大震災と重なった3月11日から南海トラフ・駿河トラフを中心に発生し、震度9(マグニチュード9.5)の超巨大地震に見舞われた。13日から27日の間には十勝沖、根室、三陸、福井、中越、能登半島、濃尾、阪神といった過去の被害区域や、玄界灘近海、芸予、長野、鳥取といった地震空白域でも震度8の巨大地震が起こり、世界各地で起きた未曾有の大災害でも特に多くの自然災害に遭ってしまった。

 

 こうした事態に国連では災害を受けた国々に対して即座に復興支援を行うものの、冷戦時代と同様の緊張した各国間の思惑や事情によって支援は僅かに僅かな期間で終了。これにより不満や対立感情が湧き、国連の形骸化を招いてしまう。

 翌月、新ソ連と改称されたロシアを理事国から外した形で国連会議が開かれたが、国際連合総会会議場で多国籍の犯罪者によるテロが起こり、要人の多くが犠牲となった。複数の事件や出来事が重なった結果として多くの国家が対立感情を噴出させ、世界は戦争の道を歩み始めたのである。



 「ADAMS」の導入によって従来の兵器が優位でなくなると悟った国家では不安定な国際事情から軍事面において新型兵器の開発計画案を探り始めた。

 

 そんな折の2025年、合衆国に「御内みうち瀬戸せど」と名乗る日本人の天才科学者が現れ、15~20mに及ぶ二足歩行の人型を模した機動兵器の開発図案を提出したのである。


 それはあまりにも画期的で現段階の開発技術で適わない兵器であり、コスト面や御内瀬戸氏への猜疑から一時は見送られそうな事態になるものの、合衆国に本社を置く新興の軍需複合産業会社「エステル・インダストリー社」が日本と共同開発する取り決めで乗り出す。というのも世界を取り巻いた大震災による被害の影響から総額3125兆円もの借金を日本は背負っていたのだ。

 しかも震災直後の日本政府の国力は落ちるところまで落ちており、新ソ連・中国からの圧力を受けてアメリカの支援なしでは維持できない程に陥っていた。

 

 そこで日本政府は国力と自衛戦力の回復の為に国民の反対を押し切って憲法9条を改定し、大まかな変則事項として「自衛隊を軍と見做し、満13歳からの入隊の許可」「満15歳の訓練兵の戦地への派遣許可」「満15歳の青年の暫定的な成人としての認可」が決定された。

 これにより日本は長らく維持していた日本国憲法の基本秩序である「平和主義」を崩壊させてしまい、都市部の再発展の裏で暗い影を落として戦争の道を歩み始めた。こうして御内瀬戸・エステル・インダストリー社・日本の大手工業会社の連携の下、メタンハイドレードを燃料としたMCFC(=溶融炭酸塩形燃料電池)と炭素繊維強化炭素複合素材(強化カーボン)を装甲として用いた機体を2017年初頭に開発。「27しきせんこうじん(JTAF-27TM)」「FD-02ガニ・エスター」の二機が生産され、「ADAMS」の効果によって有視界下に制限された中で主力兵器を担う事となった。これを境に人型の機動兵器は従来の兵器を圧倒することになり、戦争構造を大きく変えるのである。



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