代用品たちの舞踏会 1
古城に行った日の翌日、サウはハーウェイに呼ばれ、ルリに連れられハーウェイの部屋に来ていた。
部屋の前でルリと別れ、部屋に入る。
ハーウェイ一人が六~七人くらいが座れるテーブルに座っていた。
「昼食を一緒に食べませんか?」
ハーウェイが誘う。
「よろこんで」
サウが誘いを受ける。
部屋の中は二人だけだった。
サウがハーウェイの向かいに座る。
しばらくすると給仕の者がやってきた。
「何を召し上がりますか?」
座っているサウを一瞥して、ハーウェイに言った。
「私はパンとスープを。あなたは?」
ハーウェイが答える。
「私も同じものをお願いします」
「かしこまりました」
給仕の者が出て行く。
「フォメノではどんなものを食べていますか?」
ハーウェイが聞く。
サウは聞かれてかなり長い間考え込んでいた。
沈黙でハーウェイの居心地が悪くなってきた頃にサウは口を開いた。
「わからない」
「は?」
「私の国の民が何を食べているのか知らない。民の食べ物を食べたことがない」
サウがハーウェイの反応を見て、付け加えた。
その答えにはハーウェイも納得が出来た
ハーウェイはサウの答えを上流階級のものしか食べたことがなく、一般的な国民が何を食べているのか知らないと解釈した。
「ではあなたは何を食べていましたか?」
「肉や木や草、それから鉱物なども食べる」
ハーウェイは絶句した。
顔が引きつるのをどうにかこらえた。
ハーウェイは自分の質問にちゃんと答えてもらえず、馬鹿にされているように感じた。
テーブルの上に置いた両手をギュッと握る。
怒りでいつの間にかまぶたに力が入っていて、目の奥がチカチカする。
ここで怒ってはいけないと自分に言い聞かせ深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。
その後、料理が運ばれてくるまで二人とも何も喋らなかった。
給仕の者が部屋に入ってくる。
食事と食器を二人の前に出すと出て行った。
ハーウェイはナプキンをひざに置き、スプーンでスープをすくい、一口飲んだ。
(いつも通りおいしい)
繊維のある野菜を魔法でバラバラにし、よく煮込んだスープだった。
ハーウェイの気分もいくらか良くなる。
サウはそんなハーウェイを見ていた。
その視線には何の感情も込められておらず、ただハーウェイの行動を観察していた。
ハーウェイは目隠しをしていたが、サウがあまりに露骨にハーウェイを見ていたので、落ち着かない。
「どうかしましたか?」
耐え切れずハーウェイが聞く。
「見えているのか?」
サウが少し意外だというふうに聞く。
「それだけ隠す気がなければ誰でもわかります」
不機嫌に答える。
「ああ、すまない。食べられるのだな」
余計な一言を口走った。
「どういう意味でしょうか?目が見えなくてもほとんど普通の人と同じように暮らせるのですよ」
感情を抑えて、出来るだけすまして言った。
「いや、君なら何も食べずとも生きていけるだろう?」
「は?」
「精霊や力のある魔物になると何も食べず、何も飲まず長い間生きられる。君はもはや人間どころかそれらも超えているよ。食べ物を食べることに意味がなくなるほどにね。君は何のために物を食べているんだい?」
ハーウェイは部屋の気温が下がったような気がした。
何を言っているのかわからなさすぎて鳥肌が立つ。
サウと会ってまだ間もないが、早くもハーウェイはこの結婚を決めたことを後悔し始めた。
とりあえず無視して食事を再開することにする。
しかし、スープの味が感じられなくなっていた。
サウがアーグラフに来て四日目
サウは今日から毎日昼食をハーウェイと一緒に食べる約束をしたので、ハーウェイの部屋に行こうとしているとなんだか城内の雰囲気が騒がしかった。
ちょっと注意すると人の流れがいつもと違うのがわかった。
興味を引かれてフラフラ歩いて行くと、演習場に出た。
演習場はドーナッツの輪のように人が集まっていた。
その中心にはレストとルークがいた。
ルリの姿も見つけたのでそちらへ行った。
「ルリ、今日は。」
ルリがサウを向く。
「サウ様、今日は。いらっしゃったのですね」
「今から何が始まるんだい?」
「模擬戦を見にいらっしゃったのではないのですか?」
ルリが首を傾ぐ。
「模擬戦があるのか。知らなかった」
「レストとルークの模擬戦があるんですよ。ルークの方はあまり乗り気じゃなかったんですが、クロトがけしかけたようです」
クロトはサウがアーグラフに来た日、ルークがレストとの手合わせを断ってからずっと機嫌が悪かった。
耐え切れなくなったルークがレストと模擬戦をすることにしてやっとご機嫌が戻ったのだ。
「クロト様お止め下さい」
サウが声のした方を振り向くとそっちの方にはクロトを中心にして人だかりが出来ていた。
ルリと目を合わせる。
ルリも何が起きているのかわからないようだ。
とりあえず人だかりの方へ行ってみる。
『あんたたち、いつも通り賭けなさいよ』
「クロト様、今回の模擬戦には賭けが成り立ちません」
『だから、私が賭けが成り立つまでルークの勝ちに掛け金を賭けると言っているでしょう』
「いえ、ですから。この模擬戦は勝敗が決まっています。クロト様からお金を巻き上げるような真似をするわけにはいきません」
『勝敗の決まってる勝負なんてないわ』
声が出ていたらヒステリックに叫んでいるであろう様子だ。
「クロちゃん、もうやめたら?」
ルリが口を挟む。
クロトの周りに集まっていた城の兵士たちが助かった、とほっとした顔をしている。
『ルリ、酷いのよ。誰もルークの勝ちに賭けてくれないわ。普段の模擬戦なら馬鹿みたいに金を流すのに』
「しょうがないよ。相手がレストだもの」
『そうよね。あなたなら相手が誰であれ全財産をレストの勝ちにつぎ込むものね』
「クロちゃん!?」
さっきまでクロトと困り顔で押し問答していた兵士どもが「オォー」と歓声をあげたり、指笛を吹いたりしている。
『いいわ、あなたと賭けをしましょう』
完全に矛先がルリに向いていた。
『今日用意してきたお金全てをルークの勝ちに賭けるわ』
「いいよ、それなら私はレストの勝ちに同じだけ賭ける」
二人とも意地になっていた。
サウには全く理解できなかったが。
演習場内のボルテージが最高潮に高まっていて、サウはその空気が嫌いではなかった。
「それではレストとルークの模擬戦を行う。
殺しと呪詛はなし。
武器は棒切れ一本。
勝敗は審判である私、ゴアリスが判断します。
後は何でもありの簡単なルールですぞ」
立派なひげを生やした初老の男が審判を勤める。
レストとルークが向かい合い武器を構える。
「ルリ、いざとなったら頼みますぞ」
ゴアリスがルリに言った。
「はい、もちろんです」
ルリは即座に答えた。
「君が二人を止められるのか?」
サウが面白そうに聞く。
ルリはサウに笑みを返すだけで何も答えなかった。
「それでは…始め」
ゴアリスが手を振り上げ、降ろした。
即座にルークが与えられた棒切れを短く切断し、レストに向かって投擲した。
レストはそれを半身になってよける。
投擲と同時に走り出していたルークがレストと肉薄し、追撃に棒切れを頭上に叩きつけた。
レストがそれを棒切れでガードする。
元からガードを崩せないとわかっていたルークがすぐさま棒切れを引き、レストの腹の位置を真横に振りぬく。
レストがそれをバックステップでかわし、すぐさま踏み込む。
レストの棒切れがルークの首筋を叩く直前で止まり、ルークが振り返した棒切れがレストの首筋の手前で止まっていた。
「そこまで」
ゴアリスの渋い声が演習場に響く。
「両者引き分け」
という判定が下されると会場が歓声に包まれた。
ルークが棒切れを放り投げ、もろ手を挙げている。
「おめでとう」
引き分けたレストが賞賛の言葉を送る。
「手加減したのか?」
レストのあまりにもあっさりした様子にルークが怪訝な顔をする。
「いや、棒切れでも殺すつもりでやった」
「それはそれでどうなんだ…」
ルークの顔が引きつる。
『あら、なんだか嬉しそうね』
ルリとクロトとサウが二人の元にやってきていた。
「そりゃあ嬉しいさ」
ルークの顔が緩む。
「うわっ」
『あなたじゃないわ』
ルリがルークの表情に引き、クロトがぴしゃりと返した。
「へ?」
ルークが虚を突かれた顔をしてクロトとレストを交互に見た。
「ああ、引き分けたのは悔しいが、ルークは僕と同じだけの力量を示した。それはこの国にとって有益なことだ」
ここまではクロトに対して言った。
「力を示したということはそれに応じた責任を負うことになる。自分と同じだけの強さを持つ者がいると心強い。これからも今以上に国のために共に勤めよう」
レストがルークに対して格式ばった口調で言った。
「お、おう」
ルークがしどろもどろになりながらもレストに返事をする。
「それでは姫に今日の模擬戦の結果を伝えに行きましょう」
レストが周りに聞こえるくらいの声を出す。
レストを先頭にルーク、クロト、ルリ、サウの五人はハーウェイの部屋に向かった。
城内にて
「なあ、急にどうしたんだ?」
ルークが立ち止まって、困惑気味にレストに尋ねる。
前を歩いていたレストが振り向く。
「何が?」
レストが首を傾げる。
「いや、さっきの台詞」
「ああ、ルーク、君の立場を周りに示したのさ」
「はあ?」
ルークが息を漏らす。
意図が上手く伝わっていないと感じたレストが続ける。
「要するに君がこちら側の、僕たち側の人間だということを知らせただけだよ。ただでさえ僕と引き分けただけの力量を示したんだ。どこの貴族も君を取り込もうと必死になるはずだから先にけん制しとこうと思ってね」
レストがこともなげに言う。
「こちら側とは?」
サウが質問する。
「ん~、色々な決め事それら各々に色々な立場があるのだけれど。今回のことで言うとハーウェイの王位継承という決め事で、僕たちはハーウェイを擁立する側です」
「反対する勢力がいるわけか」
「そうです。まだお忍びという形になっていますが、あなたが我々の切り札ですよ。まあ、ある程度の事情はわかってると思いますが」
サウがうなずいてレストの言葉を肯定する。
「さあ、ハーウェイのところへ行こう。彼女も喜ぶはずだ」
レストが前を向いて歩き出すと、その背中に、
『へぇー、彼女も喜ぶね』
クロトがレストに伝わることのないように文字を書いた。
それを見たルークが苦笑し、ルリがオロオロとレストの背中とクロトを交互に見た。
ハーウェイの部屋にて
「引き分けたのですか?」
ハーウェイが右手で口元を隠す。
ハーウェイはベッドの上にちょこんと座っていた。
「レストは本気で戦ったのですか?」
まず模擬戦の結果で手抜きを疑われて、レストとルークが微妙な顔をする。
「心外だ。なぜ手を抜いたと疑うんだ?」
とレスト。
「いえ、えっと、その別に…」
ハーウェイがどもりながら、ルークのいるであろう方を向く。
「ちくしょう、姫まで俺の敗北を疑ってなかったのか…」
ルークは言っててなんだか惨めな気持ちになって来た。
ハーウェイが咳払いをする。
「で、レスト、あなた模擬戦で引き分けたのね」
「はい」
「ダメよ、あなたは私の騎士なんですから、どんな勝負でも勝たなきゃ」
ハーウェイの機嫌が悪くなっていた。
ルリがうんうんとうなずく。
「はい、努力します」
レストは無表情に答えた。
不機嫌なハーウェイを見て、ルークがニヤニヤ笑いながらフォローを入れる。
「実戦ではまだまだ勝負にならないがな。今日は使用武器が丸い棒切れ一本だけを使うというルールだったんだ」
「そうですか」
ハーウェイはそれでいくらか溜飲を下げた。
「剣がレストの得意武器ではないのか?」
サウが口を挟む。
「ルークが通常使っている武器が大剣。レストが長剣の二刀流と盾装備です」
ルリがスラスラ答える。
「…どうやって持つんだ?」
「レストの戦い方を見たらすぐにそんなのどうでもよくなりますよ」
ルリはそれ以上何も言わなかった。
「さて、ルーク」
ハーウェイがルークに水を向けた。
「おう」
「あなたは力を示しました。それはこの国にとって喜ばしいことです。戦力はいくらあっても足りませんから。これからも私の、この国のために力を尽くして下さい」
ハーウェイが嬉しそうに言う。
ルークが少しの間口をパクパクさせていた。
「くそっ、何でだ?負けたわけじゃないのに…」
ルークの胸は敗北感でいっぱいだった。
『長年一緒にいると似てくるものなのね』
クロトが呆れ顔だ。
「おい、クロト、それじゃあハーウェイに伝わらないぞ」
とレスト。
『ちょっと、伝えなさいよ』
いつもならルークが代わりに伝えるのだが、精神的なダメージから立ち直れていないのでそこまで気が回っていなかった。
「よし、じゃあ僕が言うよ」
『ばか、あんたじゃダメでしょ』
「なんで?」
『なんでって…』
クロトはハーウェイに「レストと長年一緒にいて似てきた」ということを伝えたかった。
しかし、レストがハーウェイに伝えると、ハーウェイは間違えなくレスト以外の誰かに似てきたと誤解する姿が、クロトには簡単に予想できた。
『ルリ、お願い』
仕方なくルリに頼んだ。
そこでクロトは自分の失策に気づく。
ルリは笑っていた。精一杯、精一杯笑っていた。
別に困ってるわけでも、怒ってるわけでも、悲しんでいるわけでもなく、ただただ笑っていた。
(違う)
そんな顔をさせるつもりじゃなかった。
意図的にルリをいじめることはよくあった。やりすぎて傷つけてしまったことも。
ルリは今、傷ついた様子も見せていなかったが、クロトは確実に何かの一線を越えてしまったと思った。
深く息を吸い込む。
すぐに言うのをやめさせようと思ったが遅かった。
「ハーウェイ、クロトがね、レストに似てきたって言ってるよ」
「私がですか?」
「うん」
声音が変わらないのでハーウェイは普通に受け答えをしている。
「あなたも似てきたと思いますか?」
(ああああああああああああああああ)
クロトは心の中で絶叫した。
一瞬で、ルリの笑顔が剥がれ、呆けた顔をし、また笑顔が戻った。
「ええ、とっても似ていると思いますよ」
もうクロトには見ていられなかった。
とりあえずうつむいて、地面を見て、嵐が通り過ぎるのを待とうとした。
「ありがとう。ルリ、嬉しいわ」
悪意のないハーウェイの言葉がルリとクロトの胸に刺さる。
クロトが助けを求めて男性陣を見た。
サウは我関せずといった様子で特に興味がないようだった。
レストはただぼうっと突っ立っていた。
ルークはまだ落ち込んでいる。
そこで彼女はここに来た理由を思い出した。
「ところで、そろそろ祝福をあげたいのだけれど」
部屋にいた全員がクロトを見た。
「おい、いいのか?」
ついさっきまで落ち込んでいたはずのルークが心配そうに声をかけてくる。
『もちろん』
今度は文字を書く。
「喋れたのだな」
サウが驚いていた。
ルリがハーウェイを見る。
ハーウェイはそれに気づかない。
「サウには教えても大丈夫だ」
ハーウェイの変わりにレストが答える。
「どういうことだ?」
「サウ様、クロトが言葉を喋れないと言ったのは嘘です。申し訳ありません。彼女はハーフエルフです。エルフは言葉を使わなければその本領を発揮できません。
しかし、彼女は呪われていて言葉を喋るたびに命が削られます。
今日は彼のために力を使うようですよ」
彼のためにという部分に力が入っていた。
『そろそろ始めてもいいかしら』
クロトがレストに許可を求める。
「もちろんだ。むしろ早くしてくれ」
『あーら、あなたも私の歌声に惚れちゃった?』
「この国に君の歌を嫌いな人なんていないよ」
クロトは冗談を言ったのだが、レストには通じなかった。
『もしかして口説かれてるのかしら?』
「いや、事実を言ったまでだ」
クロトがため息をついて、鼻の付け根辺りを押さえる。
「負けたわけじゃないんだ…、今日の主役は俺なんだ…」
ルークが焦点の合ってない瞳で何かをつぶやき始める。
「クロちゃん、その気になっちゃダメだよ」
ルリが掴みかかる勢いでクロトに迫る。
「もう、面倒ね。始めるわ」
ルークを部屋の中心に立たせて、クロトが歌を歌い始めた。
ハーウェイの部屋の床から小さな光の粒が溢れ始める。
小さな光は集まって徐々に大きな光となる。
出来上がった無数の大きな光が部屋を満たす。
クロトの歌にあわせて光は踊り、登ってゆく。
天井に付くと分散して小さな光の粒となり降り注ぎ、部屋の光の濃度を上げる。
歌がラストに向けて盛り上がる。
今まで無軌道に動いて上昇していた光が、ルークを中心に渦を巻き、身体の中に入っていく。
どんどん光が発光し、部屋の中にいた者たちは目をつむる。
クロトの歌が終ると、全員目を開ける。
溢れていた全ての光は消え失せていた。
「成功した」
ルークが呆然とつぶやいた。
「やった、成功したあああああああ」
ルークは奇声を上げながらクロトに飛びついた。
『ちょ、やめなさい、離れろ』
と抱きついたルークに見えるように自分の背中の後ろに文字を浮かび上がらせる。
しかし、ルークの目には入らなかった。
「今のはなんだ?」
「祝福ですよ?フォメノではしないんですか?」
ルリが意外そうに聞く。
「ないな。どういうものなのだ?」
「ある一定の能力に達したと周りに認められた人間が精霊や神官などに祝福されると爆発的に能力が伸びるんですよ。アーグラフでは一般的に成人したときに祝福を受けます。ほとんどの人は成功するんですが時々失敗する人もいるんですよ。認められた能力に実際に達していないと失敗するようです。祝福を受けられて初めて一人前と認められるんですよ」
「どういうことだ?演習場に彼よりも能力のあるものはレスト以外いなかったはずだ。
そのものたちも祝福を受けられたのか?」
ルリが慌てて否定する。
「ルークはこれで三度目です。ある一定の能力に達したと認められるとそのたびに祝福を受けられるようになるようです。また、祝福を受けるたびに能力の上がる幅が大きくなります。でも複数回祝福を受けられる人はほとんどいないんですよ。この国に三回祝福を受けられたのはルークとレスト。二回受けられたのは先ほど審判をしていたゴアリス。たった三人だけです」
「君もダメだったのか?」
「私も祝福する側なので」
「君も人間じゃないのか?」
ルリはその質問にいつものごまかし笑いを浮かべた。
サウとハーウェイが食事をするというので、それ以外の四人は気を利かせて町で食事をすることにし、部屋から出て行った。
町のレンガ畳の道を歩く。
「歌、よかったよ」
レストがふと思い出しようにクロトに話しかける。
『ありがとう』
「へへへ、よかったろ」
ルークがなぜか鼻の下を伸ばしながら、自分のことように自慢する。
ルリが、というかルークを除いた全員が引いた。
「それにしても、サウは好奇心が強くて、ルリも面倒だな」
とルークがいつもの表情に戻して言った。
「そんなことないよ。この国のいろいろなこと教えるの楽しいよ」
「おそらく骨を埋めることになるであろう異国の文化を早く理解しようとしているのだろう。喜ばしいことだ。
しかし、フォメノのことを知りたいな。
もう少し時間が経てば話してくれるかな?」
レストが答えを気にしていない疑問形で話す。
『私、あの人嫌いよ』
「どうしてだい?」
レストがやんわり理由を問う。
『だって、時々値踏みしているような目で見てくるんだもの。
居心地悪くてしょうがないわ。
城内の変態貴族どもや町中のエロガキのほうがまだましよ』
「まだアーグラフに来てそんなに経っていないから、信用できる者かどうが疑っているのだよ。僕たちも彼をまだ信用しているわけではないしね」
レストが諭すように言う。
『そうね』
クロトが一応納得してうなずく。
一同が話しているうちに外にイスの置かれているおしゃれなバールの前まできていた。
「さあ、着いた。
ルーク、今日はいくらでも奢ってやる」
「おおー、ラッキー」
急にレストの袖が優しく引っ張られる。
振り向くと、
『私は歌を歌ったわ』
とクロトがこれ見よがしにアピールする。
「ちょっと」
逆側から声をかけられる。
「あなたの勝ちに賭けたのに儲けられなかったのだよ」
こちらは謎の主張をするルリがいた。
レストはため息をついて天を仰いだ。
どうせ二人にたてついたところでゴネられてさらに出費がかさむのが目に見えている。
レストは諦めて、流れに逆らわず、身を任せることを選択した。
「はいはい、全員分払うよ」
ルーク、クロト、ルリの笑顔を見て、レストの顔も綻んだ。
すみません遅くなりました
読んでいただけると嬉しいです
あああああああああああああああああああああああ
イシュヴァルトを早くグリグリ動かしたい




