代用品たちの舞踏会 13
「これが私のしたことか?」
「そうだあなたが怪奇を呼び寄せ転生した人間が十数人、転生した人間を見て転生した人間が数十人、これが怪奇だ」
「そうか…
それはすまないことをした」
二つの水溜りを見てつぶやく。
ルリが魔方陣から大きな水瓶を取り出す。
魔法を使い、元人間だったものを水瓶に入れる。
「何をしている?」
サウが聞く。
「このまま放っておくと迷ってしまうかもしれないじゃないですか?
だからきちんと葬らないと」
「葬ることに意味はあるのか?」
「このまま、ここにあの親子を水溜りのまま放置してみます?」
ルリが笑って聞く。
「……
よしておこう。
そのまま作業を続けてくれ」
「はい。
死者を放っておいて益になることなんて一つもありませんからね。
きちんと寂しくならないようにみんなのところに連れて行ってあげないと」
「毎度毎度疑問に思ってたんだが、どこに処理しに行くんだ?」
とレスト。
「秘密だよお」
ルリは言いながら、水瓶を魔方陣の中に戻した。
「ということで、魔法の使用を止めてもらわないと困ります」
「わかった」
サウが落ち込みながら了承する。
「代わりと言っては何ですが」
レストが口ごもる。
「アーグラフは剣と魔法の国です。
剣術なら私が教えられますが」
「君が私に教えてくれるのか?」
「希望があるのなら」
「なぜ?」
「理由は簡単ですよ。
私は姫の騎士です。
全力で姫と、それからあなたをお守ります。
ですが、これから私や、私の仲間が死力を尽くしても姫を守り切れないことがあるかもしれません。
いざとなったらあなたにも姫をお守りしていただきたい」
「殿下となる私にそれを望むのか?」
「はい」
レストが真っすぐにサウを見つめて言う。
「なぜなら彼女はこの国の王となるのだから」
サウとレストが見つめ合う。
サウが視線を逸らした。
「私が魔法を覚えるのに積極的だったのはそのためか…」
「はい」
「はあ」
ため息をつき、
「わかった」
と言った。
「剣術の修練を積みますか?」
「頼もう」
レストがほっと笑う。
『珍しくやる気になってるわね』
「上手くいけばいいなあ」
クロトがレストを見て無表情に中空に文字を書く。
ルークが遠い目をしてつぶやいた。
「明日から始めますよ。
朝、教会の鐘が七つ鳴るときまでに演習場に来てください」
「わかった」
とサウは返事をし、
「はあ、婿入りに来ただけなのに、面倒くさいことになったなぁ…」
と小さくつぶやいた。
これで代用品たちの舞踏会がお終いです。
次回から『記憶と毒々しき花園にて』です。
今日中に更新できたら更新します。




