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プロローグ

 星影で見渡す限りの草原に薄く伸びる二つの影。

 二つの影は空を見ていた。

 小さな影が「星綺麗だね」と言った。

 大きな影が「うん」とうなずく。

 大きな影は少年のもの。小さな影は少女のもの。

 秋から冬への変わり目の冷たい風の吹く季節。

 草原には少し強めの風が吹き、少女のワンピが風にはためいていた。

 少年は季節相応に着込んでいて、少し寒そうにしていた季節外れの白に「やっぱり、寒くない?」と聞いた。

 少女は頭を振って「うんうん、似合ってるから平気」と少しボケた答えを返し、また空を見上げた。

 少年もつられて空を見上げる。

 空には月と雲が出ておらず、手を伸ばせばあの星に触れられる。

 そんな星空が広がっていた。

 流れ星が一つ流れる。

 無意識に少年は手を伸ばす。

 それから、せきを切ったように星が落ちる。

 少年は「すごい」とつぶやいて隣にいる少女を見る。

 息をのむ。

 少女は泣いていた。怖いくらい青い瞳を空に向け、

「私は王になる。国を守れる強い王に」

 静かに、静かに決意を宣言した。

「この輝く星空を私は一生忘れない。私も誰かの心の中であの星のように光っていたい」

 そう言って少女は笑った。

 泣きながら笑った。

 だから少年は抱きしめた。

 後ろから少女を抱きしめた。

「僕も手伝いますよ」

 少年はそれしか言えなかった。

 しかし、それだけで少女は十分だった。

 少女は首に回された少年の腕に手を添える。

 そして、今度は泣き笑いではなく、満面の笑みを浮かべる。

「ありがとう。よろしく頼むよ」

 それだけで少年は十分だった。


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