第二話 どうするよ俺ッ!
「それっ!」
俺は今、「クレーネ」内部で最も生息している「グレイウォルフ」と言われている大型の狼を相手にしている。あ、勿論何体も相手にしているわけでもなく一匹ずつですよ?
実は俺は神から与えてもらった最強のチートを持っているなんて設定は全くなかったので……。どこにでもいる剣士です。一般の冒険者ぐらいだろうか。いや、技術的にはしたかな? 腕力は日頃鍛えてるから負ける気はしないけど……あくまで一般の冒険者相手には! 先日風の噂で聞いた【粉殺の大剣】の異名を持つ冒険者とか、【戦乙女】の二つ名を持つ皇国騎士団団長相手では二秒もあれば殺されるだろう。
「っと」
「グレイウォルフ」が飛びかかってきたのを、横に回避する。そして、反転してくる前に一気に距離を詰め……
「人が解説してんのに襲いかかんじゃねぇ!」
斬る。アイツは、結構速いのだが直線的な動きがほとんどなので攻撃の後すぐに攻撃すれば容易に倒すことができる。
今みたいに魔獣を相手にすることは無駄じゃない。その素材は普通に使える。俺の村の教え――もとい、親方の教えでは、その素材も武器に加工することができるものもある。こいつの毛皮は防具として加工することができる。もっとも、俺は武器専門なので使えない素材は売ることが多々だ。
「~♪ 」
なぜかな。剥ぎ取ってるときって鼻歌を歌ってしまう。……お、【餓狼の碧眼】だと? 珍しいものが出たな。【餓狼の碧眼】は、眼って名前だけど眼ではなく、澄んだ眼球のように美しいからだそうだ。……実際、何故眼球をたとえに出したんだ? と思いたくなる。でも、すごく綺麗なのは確かだな。
「いいものGET! こいつは使えるな」
売る用と使う用に分け、採掘できそうなポイントを新たに探しに出た。
クレーネが魔界や天界につながっていると言われる理由の一つがクレーネ内部にある「階段」だ。ポイントは違うが、各地に上に行く階段と下に行く階段がある。「階段」が発見されて以来、それまでに言われていた「狭間の説」の信ぴょう性がましたのだ。クレーネ内部とは、我々の世界で唯一他界に通じる場所なのではないかと。
詳しいことは知らない。俺は勉強嫌いだし。それより、なぜこの話をしたか。理由は簡単。俺の目の前に下の階層に行く階段があるからだ。
「下か……どうしよう」
実は俺、下にも上にも行ったことがない。俺の村では見つかってはいるが、俺は行ってはいけないと言われたからだ。下に行けば、もっとレアな鉱物も見つかるのだろうか?
好奇心でいこうとした時、ふと時間が気になった。クレーネにいると、時間経過がわからないからである。
「ここは、一度戻ったほうがいいかな。地図も出来てるし」
俺は、ひとまず引き返すことにした。
俺が、家に戻ってきた時には、もうすでに日が沈んでしまった。あの時引き返したのは正解だったらしい。
「さて、荷物も整理し終えたからな。……寝るか」
親方のメモどうり動くんじゃなかった。旅+αでかなり疲れた。俺は、備え付けのベットに横たわると意識を失うようにして眠りについた。
翌日、昨日得たもので使わないものを売りに街へとくりだした。
「さすが王都だな。朝から賑わいがハンパないな」
それにしても、素材をどこで売ろうか。結構まとまっているし、それなりの値段で売りたい。……でも商人の知り合いなんていない。どうしたものか……「いいからよこせや!」…ん?
考えていると、朝の清々しい空気に似合わない怒鳴り声が聞こえた。声の主をさがすと、どうやらチンピラに絡まれている人がいるみたいだ。通りすがりにチラチラと通行人が見ている。
絡まれているのは青年のようで、少しばかりよさげな服をきている。けど、俺には関係ないな。野郎を助けるなんてもってのほかだ。可愛い子なら助けるんだがな。許せ青年。
心の中で少年に謝罪し、俺も通り過ぎようとする。けど、俺はどうしても気になって通り過ぎる際に一瞬、青年の顔を見てしまった。それがダメだったんだ。
その小動物のような目で、俺に助けを求める。藁にもすがるような思いで俺を見ているのがひしひしと伝わってくる。
どうする、どうすればいいんだ!
俺は戦闘力ではモブも同然だぞ。人を二人相手にするのってすごく大変なんだぞ!
仮に助けるとしても奇襲は位置的にできないし。あの助けを求める瞳を無視するなんて俺には到底できない。
どうする。どうするよ俺!
選択肢
助ける
俺には無理
助けを呼ぶ
タイトルに似合わず戦闘描写が少ないですね。序盤なんで勘弁してください! あと、最後は誰でもわかりますよねw